M&Aで必要な費用はどのくらい?

2020.08.04 M&A知識

M&Aをおこなうにあたっては、仲介手数料や税金、買収費用、株券発行費などの費用がかかります。

あらかじめどのくらいの費用が必要かを知っておけば、予算計画や資金繰りを立てやすくなります。

そこで今回は、M&Aで発生するそれぞれの費用について、具体的な概要や金額を詳しく解説します。

費用①:仲介手数料

M&Aでかかる費用のうち、最も大きなウエイトを占めるのが「仲介手数料」です。

仲介手数料とは、M&Aのアドバイザー(税理士や公認会計士など)や仲介会社に業務を依頼した場合に発生する費用です。

具体的には、おもに下記の費用が発生します。

着手金

着手金とは、M&Aの仲介会社にアドバイザー業務やマッチングのサポートを依頼した時点で発生する費用です。

事業規模によって異なりますが、大体50万円〜400万円前後が相場です。

ただし近年は、着手金を無料としている仲介会社も多いです。

かりにM&Aが失敗しても着手金は返ってこないため、予算に余裕がない場合は着手金無料の仲介会社を選ぶのがベストです。

中間報酬

中間報酬とは、M&Aの交渉相手と基本合意書を締結したタイミングで、仲介会社やアドバイザーに支払う費用です。

こちらも着手金と同じく、M&Aが白紙になった場合には返還されません。

相場は30万円〜200万円ほどですが、中間報酬を取らない業者も多いです。

デューデリジェンス費用

デューデリジェンス費用とは、買い手が売り手企業のリスクや将来性などを詳しく調査するときに発生する費用です。

調査する分野は「財務」や「税務」、「IT」、「法律」など多岐にわたり、調査する範囲が多いほど費用も増える傾向があります。

相場としては10万円〜200万円程度であり、最低限かつ小さな規模ならば100万円未満で済むでしょう。

企業価値算定の費用

企業価値算定とは、将来性や安全性などを基準に、売り手企業の金銭的価値を見積もることです。

こちらもデューデリジェンス費用と同様に、買い手企業が支払う費用です。

30万円〜200万円前後の費用を払えば、専門家による企業価値算定を受けられます。

成功報酬

成功報酬とは、M&Aの正式な契約が完了した時点で、アドバイザーや仲介会社に支払う費用です。

一般的には、M&Aの取引金額(≒売買金額)によって、成功報酬として支払う費用の額は変動します。

相場としては、大体取引金額の1%〜5%程度となります。

M&Aで支払う手数料に関しては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。

参考:M&Aの手数料はなぜ高い?相場についても解説!

費用②:税金

M&Aにより会社や事業を売却した場合、売り手側には税金が発生します。

具体的にかかる税金の種類や金額は、用いるM&Aの手法によって異なります。

この章では、とくに中小企業のM&Aでメジャーな「株式譲渡」と「事業譲渡」でかかる税金をご紹介します。

株式譲渡でかかる税金

株式譲渡とは、売り手が自社株式を買い手に売却することで、経営権を移転するM&Aの手法です。

おもに会社丸ごと売却する目的で用いられる株式譲渡では、譲渡所得に15.315%の所得税と5%の住民税が課税されます。

譲渡所得は、売却代金から株式の取得費(株式の取得でかかった費用)と譲渡費用(仲介会社やアドバイザーへの手数料)を引いた金額です。

したがって、株式譲渡でかかる税金は以下のとおり計算できます。

  • 譲渡所得 = 売却代金 − 取得費 − 譲渡費用
  • 税金 = 譲渡所得 × 20.315%

事業譲渡でかかる税金

一方で事業譲渡とは、会社にある一部またはすべての事業を売買するM&Aの手法です。

会社の経営権を残しつつ、一部の事業のみを売却したい場合に用いられています。

そんな事業譲渡では、売り手側は法人税等、買い手側は消費税が課税されます。

売り手企業が支払う法人税等は、譲渡益(譲渡代金−譲渡する資産の簿価)に課税されます。

具体的な税率はケースバイケースですが、およそ30%〜40%ほどとなります。

  • 法人税等 = 譲渡益 × 実効税率(30〜40%)

一方で買い手が支払う消費税は、「課税資産」に消費税率10%をかけることで計算します。

課税資産とは、事業譲渡で買い手が取得する資産のうち、土地等の非課税資産を除いたものです。

  • 消費税 = 課税資産 × 10%

費用③:買収費用

買い手企業は、会社や事業を買収する対価として、売り手企業に買収費用を支払う必要があります。

買収費用(売買金額)は、基本的には専門家が行った企業価値の算定やデューデリジェンスの結果を基準に決まります。

一般的な中小企業の場合は、「営業利益の3年分〜5年分の金額に時価換算した純資産を足し合わせた金額」くらいが買収費用の相場となります。

  • 買収費用の相場 = 時価純資産 + 営業利益の3〜5年分

ただし、上記の相場が適さない企業も少なくありません。

たとえばベンチャー企業は、将来的には多額の利益を得られる可能性があるものの、時価純資産が少なかったり、営業利益が赤字になっているケースが多いです。

こうした企業のM&Aでは将来性も考慮する必要があるため、上記の相場は適していないと言えます。

より正確に買収費用を見積もりしたい場合は、専門家に企業価値を算定してもらうのがベストです。

参考:M&Aの相場とは?売買価格の決め方を徹底解説

費用④:株券発行費

意外と知られていませんが、売り手企業には「株券発行費」と呼ばれる費用がかかるケースもあります。

株券発行費とは、文字通り自社の株式を発行する際に生じる費用であり、印刷所への依頼で必要です。

定款にて株券の発行が必要である旨が定められている場合、M&Aを行うに際して株券を発行しなくてはいけません。

具体的にかかる費用は、依頼する印刷所や紙の品質などによって異なります。

相場としては、大体1万円〜10万円前後です。

M&Aの費用に関するまとめ

今回ご紹介したように、M&Aではあらゆる種類の費用がかかります。

また、同じ種類の費用でも、事業規模やM&Aの進め方などによって、具体的に必要となる金額は変わってきます。

よって、M&Aでかかる合計費用を想定する場合には、一つ一つの費用ごとに自社が負担する金額を計算する必要があります。

弊社では、必要となる費用も含めてM&Aの相談を無料で承っております。

M&Aの利用を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください!