M&Aの成功事例【種類別に解説】

2020.07.30 M&A知識

M&Aの大半は、期待していたシナジー効果を得られなかったり、多額の減損損失を計上するなどの理由で失敗に終わります。

しかし一方で、当初の目標を達成し、多大なメリットを得られた事例も少なくありません。

そこで今回は、「日本の大企業」、「クロスボーダー」、「中小企業」という3つの視点から、M&Aの成功事例を2つずつご紹介します。

この記事を読めば、M&Aを成功させるヒントを得られるかもしれないので、ぜひM&Aの実施を検討中の方は参考にしてください。

数々のM&Aを成功させてきた日本の大企業

はじめに、数々のM&Aを成功させてきた日本の大企業を2社ご紹介します。

楽天

数ある大企業の中でも、もっともM&Aを事業の成長に役立てた企業と言えるのが楽天です。

楽天といえば、金融取引や買い物、旅行などを自社内のサービスのみで完結させる「楽天経済圏」が有名です。

そんな楽天経済圏ですが、その大半はM&Aによって実現したと言っても過言ではありません。

たとえば上場から間もない2003年には、証券会社である「DLJディレクトSFG証券」を買収して楽天証券としたり、宿泊予約サイトの「マイトリップ・ネット」を買収して自社で運営していた楽天トラベルの販売基盤を強化しています。

その後もカード会社や銀行など、現在の楽天経済圏の基盤となるサービスを運営する会社を続々とM&Aにより買収しました。

楽天の徹底的なM&Aによる事業の拡大戦略は現在も続いており、2016年にはフリマアプリのサービスを手がける「Fablic」の買収を行いました。

M&Aの一般的なメリットの一つに、「スピーディーに多角化を実現できる」というものがあります。

楽天はM&Aの持つこのメリットを存分に発揮することで、国内市場で確固たる地位を築くに至ったのです。

KDDI

通信大手のKDDIは、楽天に次いでM&Aを積極的に行っている企業です。

KDDIは2010年以降、同業の大手企業からスタートアップに至るまで、多数のM&Aを実施してきました。

有名な成功事例を挙げると、通信事業者である「中部テレコミュニケーション」の買収やハウツーサイト「nanapi」の買収などが挙げられます。

同業者のみならず他業種のスタートアップに至るまで、自社にとってメリットのあるM&Aを戦略的に進めた甲斐もあり、2000年以降同社は着実に売上や営業利益を伸ばし続けています。

2017年にはIoTデバイスを対象とした通信事業を行うソラコムとM&Aを行ったことで大きな話題となりました。

KDDIの持つ販売基盤やノウハウと、ソラコムの持つ最先端のIoT技術のシナジーに大きな期待が寄せられています。

時代ごとのトレンドに適した事業を買収しているからこそ、同社は数々のM&Aを成功させているといえます。

クロスボーダーM&Aの成功事例

クロスボーダーとは、異なる国に属する企業同士が行うM&Aです。

この章では、日本の企業が海外企業と行なったクロスボーダーM&Aの成功事例を2つご紹介します。

JT(日本たばこ産業)

まず最初に紹介するのは、JTとアメリカのRJRナビスコホールディングスによるM&Aです。

1999年JTは、海外市場でのシェア強化を目的に、タバコやスナック菓子などの製造・販売を行うナビスコ社から、海外タバコ事業を買収しました。

自社の持つブランディングのノウハウとナビスコ社の持つ販路や知名度がシナジー効果を発揮し、海外市場での販売本数をおよそ10倍まで増やすことに成功しました。

難しいと言われるクロスボーダーM&Aを、自社の持つ強み(ブランディング力など)を活かしつつ、相手企業の持つ販路を最大限発揮した点で、お手本とも言える成功事例です。

日本電産

次に紹介するのは、日本電産とエマソン・エレクトリック社とのM&Aです。

2017年日本電産は、アメリカで電子部品の開発や製造を行うエマソン社から、「モーター事業」、「ドライブ事業」、「発電機事業」を買収しました。

このM&Aは、同社が従来から強化してきたモーターやドライブ、発電機分野をさらに強化する目的で行われました。

その甲斐もあり、2018年度、2019年度と2年連続で売上高の増加を記録しています。

そもそも日本電産は、これまで60件を超えるM&Aを実施し、そのすべてを成功させてきた企業として有名です。

自社に必要なM&Aを最適なタイミングで行う、という基本を着実に実施しているからこそ、同社は次々とM&Aの成功事例を積み重ねることができると考えられます。

中小企業のM&Aに多く見られる成功事例

最後に、中小企業のM&A成功事例について解説します。

中小企業の成功事例はたくさんあるため、今回は代表的な成功パターンを2つに要約して解説します。

老舗中小企業による事業承継の実現

中小企業のM&Aにおいて、多く見られる成功事例が「事業承継の実現」です。

昨今は経営者の高齢化にともない、多くの中小企業で経営者の交代タイミング(事業承継)を迎えています。

しかし後継者を確保できずにいる中小企業も少なからず存在し、それが理由で廃業するケースもあります。

そこで近年は、M&Aによる事業承継が注目されています。

M&Aにより第三者に会社を売却すれば、事業や従業員の雇用契約などを存続させることができ、実質的に事業承継を果たしたこととなるわけです。

実際M&Aにより、後継者不足の中小企業が事業承継を果たした成功事例は年々増加しています。

参考:M&Aの件数はどのくらい?推移や今後の動向を解説【2020年最新】

ベンチャー企業によるイグジットの実現

もう一つの成功事例は、ベンチャー企業によるイグジットの実現です。

従来は、IPO(上場)によるイグジットを目指して起業するケースが一般的でした。

しかしこの10年〜20年で、より実現可能性が高いM&Aによるイグジットを目指すベンチャー企業が増えています。

IPOと比べて創業者が得られる利益が少ないとはいえ、事業や会社の売却に成功すれば数千万円〜数十億円もの利益を獲得できます。

実際にM&Aによりイグジットを果たし、莫大な利益を獲得した成功事例はたくさんあります。

今後もますます、ベンチャー企業によるM&Aの成功事例は増加していくと考えられるでしょう。

まとめ

今回ご紹介したように、M&Aが成功すると多大なメリットを得られます。

確かに成功率は低いものの、挑戦する価値は十分あると言えるでしょう。

中小企業がM&Aを成功させるには、専門家であるアドバイザーや仲介会社の助力が不可欠です。

弊社でもM&Aの仲介やアドバイザー業務を行なっているので、ぜひお気軽にご相談ください。

参考:中小企業のM&Aが失敗する理由とは?対策も解説