廃業の大きなデメリットとは?M&Aも一つの選択肢

2021.09.19 会社・事業を売る

廃業はすぐに事業をやめることができますが、実際に廃業する際には大きなデメリットがあることを忘れてはいけません。一定の場合には、M&Aの方がメリットが大きい選択肢となるケースがあります。今回は、廃業のメリット・デメリット、M&Aのメリットや注意点を解説していきます。

廃業とは

廃業とは理由と問わず、株式会社、合同会社、個人事業主などが自らの意思によって事業を止めることです。同じような言葉に「倒産」がありますが、倒産は第三者から強制的に事業をやめさせられる点で、廃業と異なります。また、廃業はお金が残っていても実施できるため、裁判所が関係してくる「破産」とも異なる意味となります。日本では、2021年から2021年にかけて、全国の高齢化社会やコロナを背景に、中小企業を中心に廃業の件数は増加傾向にあります。

廃業のメリット

廃業のメリットは以下のとおりです。

  • オーナー企業であれば、自分の好きなタイミングで事業を止めることができる
  • 事業を続けることで現金流出している際に止血できる
  • 廃業後に違う事業を行うことができる

自分の好きなタイミングで事業を止めることができる

オーナー企業の経営者や個人事業主などの場合、通常は自分の好きなタイミングで廃業の時期を決定することができます。例えば、後継者がいない状況である、赤字経営である、債務が多い状態を整理したい、新規事業を行いたい、家族との時間を優先したい、事業から解放されしばらく休みたいなど、廃業の理由は様々です。ただし、取引先、仕入先、従業員、債権者などには、廃業により迷惑がかからない様に、それぞれの関係者を事前に調整しておくことが求められる点には留意が必要です。

事業を続けることで現金流出している際に止血できる

赤字事業であれば、事業継続により毎月現金が減少していきます。現金がなくなるまで挑戦することも大切ですが、まだ資金が残っているのであれば、一旦撤退して資金繰りを改善した後に、次の事業に挑戦することも可能です。積極的な後退ができる点が廃業の有利なポイントの一つです。

廃業後に違う事業を行うことができる

廃業には理由は必要ありません。単に事業をするのに飽きてしまったという場合にも廃業を選択することができます。廃業後に借金が残らないのであれば、何ら制約なく次の事業を始めることができ、新たな会社を経営することもできます。

廃業のデメリット

廃業のデメリットは以下のとおりです。

  • 借金が残っていれば、廃業後に返済しなくてはならない
  • 株主が分散していれば自分の意思だけで事業をやめられない場合がある
  • 最終的に手元に残ったお金しか得ることができない
  • 従業員の雇用を維持することができない

借金が残っていれば、廃業後に返済しなくてはならない

個人事業主として借入金がある場合に、事業を廃業した後は、廃業後に仕事をするなどしてその借入金を返済する必要があります。法人で事業運営している場合でも、オーナー経営者自身に連帯保証を銀行が求めることが一般的で、個人事業主と同様に廃業後に借金返済の義務があります。

株主が分散していれば自分の意志だけで事業をやめられない場合がある

会社として事業を行なっており、その会社の株主が分散している場合、自分のいしだけでは廃業できないケースがあります。企業が廃業の意思決定を行うためには、株主総会の特別決議による承認が必要です。例えば、自分が51%、友人が49%株式を所有している場合、自分だけの議決権だけでは特別決議を承認することができず、友人も廃業に賛成していることが必要です。また、株主総会の決議が取れた後でも、廃業の手続に時間がかかり、自由になれるまで時間がかかってしまう場合もあります。

最終的に手元に残ったお金しか得ることができない

廃業の場合、法人であれば貸借対照表の資産・負債を現金化し、最終的に手元に残ったお金などの財産を株主比率に応じて按分していきます。そのため、事業が今後伸びていく可能性が高かったとしても、直純資産でしか評価されません。廃業を検討している場合には、資産・負債を清算価値で再評価し、代表者にいくら分配されるかを整理しておくと、廃業するかどうかの判断がしやすくなります。

また、廃業の注意点として、廃業し分配金を受け取った年度において、税務署に確定申告を提出し税金を納めなければならない点も忘れてはいけません。税引後の手取額を簡易計算のうえ、廃業後の生活イメージを確認してみると良いでしょう。

従業員の雇用を維持することができない

廃業した場合には、従業員の雇用を維持することができません。廃業することで、事務所に勤務している従業員に給与を支払う必要はなくなりますが、従業員の生活に対して大きな影響を与えてしまいます。退職金の割増を検討する、退職後の転職先を探すサポートをするなど、従業員のケアをすることも大切です。

廃業の代わりにM&Aを選択することもできる

以上の様に廃業は事業をやめるための一つの有力な選択肢ですが、デメリットの大きさには注意しなければなりません。廃業の代わりにM&Aを利用する際のメリットは以下のとおりです。

  • 借金がある場合にも会社ごと売却することが可能
  • 廃業よりも多くの現金を得られる可能性がある

借金がある場合にも会社ごと売却することが可能

廃業して借金が残ってしまった場合には、自らが返済しなければなりません。一方、対象会社を売却し連帯保証を外すことができれば、買い手がその借金を返済していくことになります。借金を買い手に引き継いでもらうため、会社を0円で売却するケースもあります。

廃業よりも多くの現金を得られる可能性がある

M&Aであれば自社とのシナジーが大きく、企業価値が高く評価されることで、多額の売却益が発生する可能性があります。M&Aの際の企業価値方法の一つにDCF法があります。DCF法は将来得られるキャッシュフローを現在価値に割引計算する方法により、企業価値を算定することができます。この時、将来得られるキャッシュフローを評価されるため、今、あまり利益が出ていなくとも、将来成長できる可能性が高い場合には、自社が高く評価されるかもしれません。

M&Aを選択するなら時間は必要

M&Aを行う際は、事前にスケジュールを決めておくことは重要です。早ければ1ヶ月程度でクロージングまで完了できる可能性はありますが、一般的に3ヶ月〜6ヶ月程度の期間がかかる傾向にあります。また、時間をかけて買い手を探したものの、なかなか見つからず結局事業売却することができなかったということも十分に考えられます。

M&Aに必要となるであろう資料一覧を整理し、株式譲渡、事業譲渡などの取引を進める準備を開始しておくことが、早期売却を達成するうえで大切です。

最終的に廃業を決断している場合には、廃業前に期限を決めてM&Aに挑戦してみることがおすすめです。例えば、半年間買い手を探して見つからなかった場合には、M&Aを諦めて廃業してしまうのです。期限を決めることで、ダラダラと買い手と交渉することも避けられ、結果としてM&Aが上手くいくケースもあります。

M&Aなら専門家に相談するのがおすすめ

期限内にM&Aを実現したい場合には、自分1人であれこれ考えることは止めて、M&A専門家に相談してみることがおすすめです。M&A業界はマッチングサイトなどインターネットを介したM&Aサービスが数多く登場しており、個人でもM&Aに挑戦しやすい環境と言えます。

一方、M&Aは誰もが成功するものではなく、上場企業でさえ、数多くのM&A失敗事例がニュースでも取り上げられています。一度、M&Aのプロジェクトが失敗する方向に傾いてしまう状況になると、そこからうまく対応しようとしてもなかなか修正が難しいこともあります。

専門家のアドバイスを受けることで、M&Aの複雑な落とし穴にハマらずに、成約まで短期間で実現できる確率を高めることができます。また、M&Aの専門家に相談することで、公認会計士、税理士、弁護士などの資格者の紹介も受けることができる点もメリットの一つです。成功報酬などの手数料はかかりますが、M&A専門家との対話を通して、最新のM&Aの相場や買い主の動向も理解することができ、安値で売却するリスクを低減することもできます。M&Aの世界は、常に生き物のように動いており、本やセミナーなどで自力で調査した内容が古くなってしまうリスクもあります。

M&Aの専門家によって、費用体系、成約させてきた案件数、得意の業種・業態、業務内容などの特徴が異なっているため、それぞれ比較したうえで慎重に検討し、最終的にどこに依頼すべきかを決めるようにしましょう。

まとめ

今回は廃業に関する大きなデメリットを中心に解説してきました。借金が残ってしまうのであれば、積極的に廃業することも気持ち的に難しいという問題があります。M&Aであれば、借入金をそのまま買い手に引き継いでもらうことも可能です。

現在、何らかの理由で廃業を考えている場合には、M&Aの可能性はないかどうかを自分で検討してみてはいかがでしょうか。実績や経験の豊富なM&Aの専門家に相談することで、自社のM&Aの実現可能性を聞くこともできます。相談自体は無料で乗ってくれる場合が多いため、まずは気軽に問い合わせをしてみましょう。