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病院はいくらで売却できる?売却金額に大きく影響があるポイント4つを紹介!

2021.07.26 会社・事業を売る

病院、クリニック、医院でも通常のM&Aと同様に売却することができます。今回は、病院売却の基礎、スキームを解説するとともに、病院の売却金額に大きな影響を与えるポイントを4つ紹介していきます。

病院売却の概要

日本国内にいわゆる病院は、厚生労働省の調査によると、令和元年5月時点で179,208箇所あります。内訳は大規模な病院8,324箇所、一般診療所102,396箇所、歯科診療所68,488箇所です。

法人の形態は様々で、公益法人、医療法人、私立学校法人、社会福祉法人、医療生協、会社、個人事業などが挙げられます。

日本の高齢化社会を背景に、病院、クリニック、医院の売却事例も増加傾向にあります。経営が立ち行かなくなった病院を中心に再生ファンドを運営する企業もあります。

病院売却の方法は、親族内承継、M&Aの大きく2種類に分けられます。M&Aを選択する場合、M&A仲介会社やFAへの相談、M&Aプラットフォームへの登録など様々な種類があります。手数料やメリット・デメリットを比較検討のうえ、自分に合った売却手法を選択する必要があります。

買い手としては新規に医療法人を設立するか、買収するかの比較を行なった上で、M&Aマッチングサイトや仲介会社、M&A専門家等からの紹介で複数の案件を検討することになります。病院案件一覧の中から希望のエリア・地域・条件にあった案件を絞り込み、初期的な検討、交渉フェーズへと進めることになります。

買い手と売り手において初期的な条件がすりあえば、基本合意書を締結の上、病院のデューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスでは、病院の売上・利益・資産・負債・純資産などの財務情報の他、料金や診察人数などKPIの実績、人事規則や人材の状況、建物や医療機器の状況、許認可、法務など様々な内容を確認する必要があります。

参考:

厚生労働省 医療施設動態調査(令和元年 5 月末概数)

病院売却時のスキーム特徴

病院売却時のスキームは以下の通り3つあります。

  1. 出資持分の譲渡
  2. 合併
  3. 事業譲渡
  4. 分割

医療法人は、株式を発行することはないため、株式譲渡のスキームを使うことはできません。

2007年3月31日までに設立された医療法人は合同会社のように「社員」と呼ばれる出資者が出資を行い設立されます。病院を売却する場合、社員がその出資持分を譲渡することにより、経営権を委譲することができます。

また、医療法人は合併することは認められているため、合併することも可能です。事業譲渡によって、特定の医療事業のみを売却することもできます。2015年9月に医療法が改正されたことにより、以前が不可能だった医療法人の分割が可能になったことも重要なポイントです。医療法人のM&Aに対する需要が高まっていることから、制度面でもM&Aしやすい法整備がなされつつあります。

2007年4月1日以降に設立された医療法人は、出資持分という概念がありません。そのため、持分なしの医療法人の場合、出資持分を譲渡して病院を売却することはできない点に留意が必要です。出資持分のない医療法人は、合併、事業譲渡、分割のいずれかを利用することになります。

売却金額に大きく影響があるポイント4つ

病院の売却金額に大きく影響があるポイントは以下のとおり4つあります。

  1. 不動産を含むか否か
  2. 立地条件
  3. 医師・看護師の引き継ぎ有無
  4. 診療科目

1.不動産を含むか否か

病院の土地・建物を含めて売却する場合には、病院のビジネス事態の評価に加えて不動産価値も加わります。仮に病院経営が赤字であっても不動産を含む取引であれば、買い手が見つかる可能性は高まります。

土地の価格は、国税庁が毎年7月1日に発表している路線価を用いて、評価額を算出することができます。路線価を用いた評価額は、実際に相続税や贈与税の計算にしようするものです。都心部のように路線価が毎年上がっているような土地であれば、実際の売却金額にもプラス影響となります。

土地・建物が含まれる場合、築年数や内装、設備の状況も取引価格に影響を与える要素となります。築年数が古く、内装や設備の改装が必要な場合には、買い手としては買収資金の他にさらに投資額が増えることになります。

買い手側は買収後の病院経営から得られる利益と、買収金額と改装費用の合計額を鑑み、どの程度で投資回収できるかを計算の上、買収の経営判断を行うことになります。

売り手が不動産を保有せず、賃貸している場合には、買い手が賃貸契約も引き継ぐことになります。事業売却後も同じ賃料で良いか、その他条件の引き継ぎなど、買い手とよく相談して適切に賃貸契約を引き継ぐ必要があります。

医療機関が一つのビルに集中している場合もあり、競合状況も確認しておく必要があります。整形外科、内科、歯科など複数のクリニックがバラバラに入居している場合は、利用者側も便利で評価としては高くなります。

参考:

財産評価基準書 路線価図・評価倍率表

2.立地条件・評判

不動産の所有権の有無に関わらず、病院・クリニック・医院の立地は、経営に深く関わっています。駅に近く交通のアクセスが良い、人通りが多いなどの好条件であれば高く評価されやすく売却金額にもポジティブです。

他方で、初めて病院を行く際には、ネットでクチコミを確認してから予約をするという人も増えてきています。いくら立地条件が良くとも、ネット上のクチコミが悪ければ利用者はなかなか増えません。

買い手の立場は、実際に対象事業の実査を行い、立地や建物の状況を確認するのはもちろんのこと、ネット上の評判も必ず確認しておくようにしましょう。

3.医師・看護師の引き継ぎ有無

病院を引き継ぐ側からすると、医師・看護師をそのまま引き継ぐことができるかは重要な条件の一つです。高齢の医師が開業している個人クリニックを、買い手である医師が引き継いで経営する場合等であれば、医師を引き継げなくとも大きな問題にはならないでしょう。

医師・看護師の技術や患者からの評判は、病院の経営に大きな影響を与えるポイントの一つです。買い手が新たに医師や看護師を採用するのにも、採用コストが多額になってしまいます。売り手にとって、医師・看護師をそのまま買い手に引き継がせることができれば、売却金額にプラス影響になります。

4.診療科目

診療科目は、内科、整形外科、耳鼻科などが挙げられますが、何の診療を行なっているによっても売却金額が変動します。

国内にある病院のうち4割が歯科診療所です。歯科は生活している上で、誰もが通う必要のある診療科です。定期的に歯科衛生士によるケアを受けている場合には、医師の診療以外にも定期的な収入が見込めます。歯科は患者の立場からすると、スイッチングコストが高く、同じ地域に住んでいれば同じ歯科に通い続ける傾向にあります。

そのため、買い手の立場から見れば、固定患者が多く、予約の埋まるスピードが早い歯科を引き継ぐことができれば、将来も安定的な収益が見込めると予想できます。

まとめ

以上、病院市場と売却の概要、病院売却におけるスキームの特徴、売却金額に大きな影響を与えるポイントを解説してきました。病院は基本的には営利を目的として経営していないため、従来はM&Aが起こりづらい業界と呼ばれていました。

しかし、医療報酬の引き下げなどを背景に経営不振に陥った病院の増加、医師や看護師の大量離職などを背景に、M&Aが活発化しています。他業界からも参入することができるため、大手企業が医療関係企業を買収する事例も出てきています。

医療業界は、法規制も厳しく、買い手が経営を引き継ぐのも許認可や届出が必要です。そのため、実際に病院の売却を考えている場合には、M&Aだけでなく医療業界にも詳しい専門家に相談することが重要です。売却相談自体は無料で行なっていることも多いことから、信頼できるプロフェッショナルに相談のうえ、慎重に売却手続を進めるようにしましょう。