• TOP
  • M&A知識
  • 株式譲渡にかかる税金【種類や計算方法を解説】

株式譲渡にかかる税金【種類や計算方法を解説】

2020.11.09 M&A知識

会社の売却・買収を目的としたM&Aでは、株式譲渡と呼ばれる手法が用いられるのが一般的です。

今回の記事では、そんな株式譲渡でかかる税金の種類や計算方法をくわしく解説します。

株式譲渡でかかる税金の種類

基本的に株式譲渡では、売り手の株主に対してのみ税金が課税されます。

ただし、売り手の株主が個人か法人かによって、課税される税金の種類は異なります。

具体的には、個人と法人で課税される税金の種類は下記のとおり異なります。

  • 個人株主の場合:所得税、住民税
  • 法人株主の場合:法人税等

株式譲渡でかかる税金を計算する際には、前もってどのような税金が課税されるかを把握しておきましょう。

株式譲渡でかかる税金の計算方法

この章では、株式譲渡でかかる税金の計算方法について、個人株主と法人株主のケースに分けて解説します。

売り手が個人のケース

売り手が個人株主の場合、「譲渡所得」に対して所得税と住民税が課税されます。

したがって、まずは下記の計算式により譲渡所得を求める必要があります。

  • 譲渡所得 = 売却価格 − 取得費 − 譲渡費用

売却価格とは、実際に会社を売却したときに獲得した収益です。

取得費とは、会社の株式を取得する際にかかった費用であり、具体的には資本金が該当します。取得費が分からない場合には、売却価格の5%を取得費とすることが認められています。

そして譲渡費用は、株式譲渡の実施に要した費用であり、具体的にはM&A仲介会社への手数料などが該当します。

譲渡所得を計算したら、譲渡所得に所得税と住民税の税率をそれぞれかけることで、納税する金額を算出します。

所得税の税率は15.315%(復興特別所得税含む)、住民税の税率は5%となっています。

なお金額に関係なく税率が固定なのは、事業で得られた通常の所得とは切り離して申告する「申告分離課税」の仕組みが適用されるためです。

実際に納税する額を求める際には、所得税と住民税の税率を合計した数値を譲渡所得にかけるのが一般的です。

  • 納税額(所得税+住民税) = 譲渡所得 × 20.315%

たとえば譲渡所得が4,000万円の場合、実際に納税する税金の額は次のように求めます。

  • 納税額= 4,000万円 × 20.315% = 812万6,000円

参考:No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税) 国税庁

売り手が法人のケース

売り手株主が法人の場合、「譲渡益」に対して法人税等(法人税、法人住民税、法人事業税)が課税されます。

譲渡益は個人における譲渡所得のことであり、下記の計算式により求めます。

  • 譲渡益 = 売却価格 − 取得費 − 譲渡費用

個人のケースと計算式は同じですが、取得費を売却価格の5%とすることはできません。

法人税等は、譲渡益に実効税率を掛け合わせることで求めます。

※実効税率とは、簡単に言うと法人税や法人住民税、法人事業税の合計税率を意味します。

  • 法人税等の納税額 = 譲渡益 × 実効税率(およそ30%前後)

たとえば譲渡益が4,000万円で実効税率を30%と仮定すると、納税する税金の額は次のように計算できます。

  • 納税額 = 4,000万円 × 30% = 1,200万円

なお実務では、株式譲渡に課税される法人税等は、申告分離課税ではなく「総合課税」の方式で課税されます。

実際には、本業で獲得した利益と合計した上で税金を求めるため注意しましょう。

株式譲渡で課税される税金を納付するタイミング

株式譲渡で課税される税金の納付タイミングは、税金の種類によって異なります。

この章では、「所得税」、「住民税」、「法人税等」の3種類に分けて解説します。

所得税

所得税は、株式譲渡により所得を得た翌年の3月15日までに納付する必要があります。

ただし15日が土日の場合は、その直後の月曜日が期限となります。

住民税

住民税に関しては、自治体から納税通知書が送付された後に、通知書の指示にしたがって納付します。

納税通知書が送付されるのは4月〜5月頃であり、所得税とは納付するタイミングが異なるので注意しましょう。

法人税等

法人税等は、事業年度が終了した日の翌日から2ヶ月以内に納付するのが原則です。

ただし所得税と同様に、申告期限日が土日の場合はその直後の月曜日が期限となります。

参考:申告と納税 国税庁

株式譲渡の税金に関する注意点

基本的な株式譲渡の税金に関する説明は以上となりますが、いくつか注意点もあります。

株式譲渡の税金をめぐって注意すべき2つのポイントを解説するので、ぜひ参考にしてください。

親族への株式譲渡は「相続税」や「贈与税」の対象となるのが一般的

広義の意味で言うと、事業承継で先代経営者から後継者に株式を引き継ぐ行為も株式譲渡に含まれます。

親族に株式譲渡を行う場合、会社の売却が目的ではないので、無償で後継者に株式を移転するのが一般的です。

したがって、所得税や住民税、法人税は課税されません。

その代わり、株式を引き継いだ後継者に対して相続税や贈与税が課税されます。

具体的には、先代経営者が健在のうちに株式の移転を図ると贈与税、亡くなった時点で引き継ぎが行われると相続税が課税されるのが原則です。

詳しい説明は割愛しますが、M&Aを目的とした株式譲渡とは、税率や計算方法は大きく異なるので注意しましょう。

低額・無償での株式譲渡では買い手側にも税金がかかる恐れがある

2つ目の注意点は、低額・無償での株式譲渡では、買い手側にも税金がかかる恐れがある点です。

時価よりも低い金額または無償での株式譲渡では、買い手側は本来よりも安い金額で買収するため、実質的に利益を得たことになります。

したがって、買い手側にも贈与税や法人税などの税金が課税される恐れがあります。

具体的に課税される税金の種類や計算方法はケースバイケースですので、かならず税務の専門家である税理士に判断を仰ぎましょう。

参考:No.4423 著しく低い価額で財産を譲り受けたとき 国税庁

株式譲渡の税金まとめ

株式譲渡によるM&Aでは、個人の株主には所得税と住民税、法人の株主には法人税等が課税されます。

基本的に買い手には課税されないものの、低額・無償での株式譲渡では買い手側に税金がかかる恐れがあるので注意です。

弊社では税金に関する内容も含めて、株式譲渡によるM&Aについて無料でご相談を承っております。

ぜひお気軽に相談をいただければ幸いです。