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非上場株式の譲渡とは?手続きや税金について解説!

2020.11.30 M&A知識

非上場株式の譲渡は、相続・贈与による事業承継はもちろん、M&A手法としても用いられています。

非上場株式の譲渡にあたっては、手続きや税金が上場株式とは異なるため注意が必要です。

そこで今回は、非上場株式の譲渡にあたって最低限知っておくべき事柄をご説明します。

非上場株式の譲渡手続き

まずはじめに、非上場株式の譲渡手続きについて解説します。

非上場株式の譲渡は、一般的に下記4つのプロセスで進めていきます。

株主による譲渡承認請求

上場していない中小企業は、自社の株式に譲渡制限をかけています。

譲渡制限が付された株式を譲渡するには、会社の意思決定機関(取締役会または株主総会)に対して、譲渡する旨を認めてもらう必要があります。

そこで株式譲渡を行いたい株主は、会社に対して「株式譲渡承認請求書」の提出を行います。

なお株式譲渡承認請求書には、会社法第137条の規定に基づき、以下の項目を盛り込む必要があります。

  • 譲渡対象となる非上場株式の数
  • 非上場株式を引き受ける者の氏名または名称
  • 承認しない旨を会社が決定した場合における、買い取りに関する旨

取締役会または株主総会による承認の可決と通知

非上場株式の承認請求を受けた会社は、意思決定機関において承認するかどうかを決定します。

基本的には株主総会で決議しますが、取締役会設置会社の場合は取締役会にて決議します。

決議を行ったら、その決定内容を請求してきた株主に対して通知することも必要です。

株式譲渡契約の締結

無事に非上場株式の譲渡が承認されたら、あとは買い手との間で株式譲渡契約を締結します。

株式譲渡の契約書には、主に以下の項目を盛り込みます。

  • 売り手の企業名と住所
  • 譲渡する非上場株式の数と種類
  • 譲渡価格
  • 対価の支払い方法
  • 表明保証
  • 損害賠償
  • 契約解除に関する事項

より詳しく株式譲渡契約書について知りたい方は、以下の記事を参照ください。

関連記事:株式譲渡契約書とは?記載内容や印紙の必要性、注意点を解説!

クロージングおよび株主名簿の書き換え

最後に、クロージングと株主名簿の書き換えを終えることで、非上場株式の譲渡は完了となります。

クロージングとは、株式の交付や対価の支払いといった手続きの総称です。

株主名簿の書き換えは、売り手から買い手に株主(≒経営陣)が正式に変わった旨を明らかにする目的で不可欠です。

非上場株式の株価算定方法

国税庁では、非上場株式の株価を算定する方法について、会社の規模に応じて4種類に分けています。

この章では、それぞれの株価算定方法を分かりやすくご説明します。

純資産価額方式

純資産価額方式は、「小会社」に分類される会社に適用される株価算定方法です。

この方法では、純資産(資産−負債)を発行済株式総数で割った金額を非上場株式の価格とする方法です。

手軽に計算できる上に、貸借対照表の内容を基準に用いるので客観性が高いです。

そのため、相続や贈与はもちろん、非上場企業のM&Aでも幅広く用いられています。

類似業種比準方式

類似業種比準方式は、「大会社」に分類される会社に適用される株価算定方法です。

この方法では、自社と同じ業種に属する上場企業の株価をベースに、非上場株式の価格を求めます。

類似する企業を基準に用いるため、客観性が高い株価を算定できます。

ただし計算が難しい上に、類似する業種を探すのに手間がかかるのが難点です。

併用方式

併用方式は、「中会社」に分類される会社に適用される株価算定方法です。

この方法では、下記の計算式で非上場株式の価格を算定します。

  • 株価 = 類似業種比準方式による算定額 × a + 純資産価額方式による算定額 × (1 − a)

aには、会社の規模によって0.6、0.75、0.9のいずれかの数値が入ります。

より客観的かつ多面的な視点で株価を算定できるものの、算定までに多大な手間を要します。

配当還元方式

同族以外の株主が非上場株式を取得した場合には、例外的に「配当還元方式」を用います。

この方法では、1年間の配当金額を一定の利率(10%)で割ることで、非上場株式の価格を求めます。

  • 株価 = (配当金の額 × 10%) × (1株あたりの資本金等の額 ÷ 50円)

以上が、国税庁が定めた非上場株式の株価算定方法です。

どの方法を用いるにしても専門知識が必要なので、計算する際には税理士などの専門家にご相談するのがベストです。

非上場株式の譲渡でかかる税金

最後に、非上場株式の譲渡でかかる税金をお伝えします。

親族に対して相続や贈与の手段で株式譲渡した場合は、相続税または贈与税が課税されます。

一方で第三者への株式譲渡では、相続・贈与とは異なる税金が課税されます。

また、売り手の株主が個人か法人かによっても、かかる税金の種類は異なるので注意しましょう。

個人の株主による譲渡

個人の株主が非上場株式を譲渡する場合、譲渡所得(譲渡金額から取得費や譲渡費用を差し引いた金額)に対して、15.315%の所得税と5%の住民税が課税されます。

ただし例外的に、法人に対して無償で株式譲渡を実施すると、贈与税が課税されるので注意しましょう。

法人の株主による譲渡

一方で法人の株主が非上場株式を譲渡すると、譲渡益(譲渡所得と基本同じ)に対して、法人税等(法人税や法人住民税、法人事業税)が課税されます。

法人税等の税率は企業によって異なるものの、大体30%ほどと言われています。

関連記事:株式譲渡にかかる税金【種類や計算方法を解説】

非上場株式の譲渡についてのまとめ

非上場株式の譲渡は、相続や贈与、M&Aなど、あらゆる場面で必要となります。

したがって、中小企業の経営者であれば、非上場株式の譲渡でかかる税金や手続きは最低限知っておく方が良いでしょう。

今回ご紹介した基本的な部分を知っているだけでも、M&Aや事業承継を円滑に進めやすくなるはずです。

なお弊社では、非上場企業のM&Aのサポートを行っています。

相談は無料ですので、M&Aに興味がある方はお気軽にご連絡ください!

※参考記事

会社法 e-Gov

No.4638 取引相場のない株式の評価 国税庁

No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税) 国税庁