融資と投資、出資の違いは?メリットやデメリットとは?
2019.02.20 資金調達企業の資金調達方法として、「融資」と「投資」、「出資」は混同されることがありますが、どのような違いがあるのでしょうか。ここでは、資金調達を行う企業側の視点から、それぞれの意味やメリット、デメリットについてみていきます。
融資と投資、出資とは
融資と投資、出資の違いをみていくと、融資は借金であり、投資や出資は資本金の提供を受けるもので、資金調達方法としての性質が異なります。
融資は借金
融資とはお金を貸して資金を融通することをいいます。融資をする側はお金を貸すことで、利息を得るのが目的です。融資を受けた側から見ると借金であり、元本と利息の返済の義務があります。
融資の主だったものとして、まず、銀行による融資が挙げられます。企業が銀行から資金調達を行うと、毎月、元本と利息を返済します。また、企業が発行する社債も融資に該当し、社債には様々な種類がありますが、基本的には購入者に定期的に利息を支払い、償還日に元本を返済していくものです。
融資を受ける場合、信用力が高い企業ほど安い利息でお金が借りられます。社債は償還日まで元本の返済が不要であり、長期的な融資を受けることができますが、発行できるのは信用力のある企業に限られます。
投資≒出資は資本金の提供
出資は資本金を提供する行為をいい、投資は企業や事業の成長を期待して、資本金を提供することをいいます。出資と投資では、ほとんど違いはありません。出資した人は、出資した金額に応じて株式を取得し、株主総会で議決権を行使する権利や利益から配当を受けることができます。あるいは、企業価値が上がったタイミングで株式を売却すると、キャピタルゲインを得られることもあります。
一方、出資を受けた側は利益から配当を支払う義務はあるものの、提供を受けた資本金の返済義務はありません。
融資による資金調達のメリット
必要な資金を調達しやすい
銀行などの金融機関は潤沢な資金があるため、融資は必要な額に合わせて、少額の借り入れから多額の借り入れまで、ニーズに応じた額の資金を調達しやすいことがメリットです。たとえば、銀行から融資を受ける場合は、借り入れをしたい額をもとに審査が行われるため、必要以上の資金を借りてしまうことも起こりにくいです。
経営の自由度を維持しやすい
銀行から借り入れをする場合も、社債を発行する場合も、基本的には銀行や投資家が直接経営に介入してくることがありません。経営の自由度を維持しつつ、資金調達ができることも融資のメリットです。ただし、返済が滞った場合には、金融機関などが経営に口出しをするケースがあります。
融資による資金調達のデメリット
元本や利子の返済の義務がある
融資は元本に利息をのせて返済する義務があるため、予定した通りの収益を上げられていない場合でも返済しなければならず、資金繰りが悪化するリスクがあります。多額の借り入れをしている場合や、高い利率でしか借り入れができなかった場合には、多額の利息の支払いが発生します。融資は、元本よりも多くの金額の返済が必要になることがデメリットです。
担保や保証人が必要となるケースがある
銀行などの金融機関が融資の審査を行う際には、相手企業の信用力をもとに、融資の可否や融資額を判断しています。そのため、経営状況によっては担保や保証人が必要です。
経営状態がよい企業では、無担保融資を受けることが可能であったり、担保が必要になる場合も、会社が所有する不動産などがあれば担保にできたりします。しかし、中小企業では経営状態が安定していなかったり、会社所有の不動産がなかったりするケースが少なくありません。こうしたケースでは融資の条件として、オーナー経営者が自宅などの個人資産を担保に入れることや、連帯保証を行うことが求められることが多いです。
株式会社は有限責任ですので、本来はオーナー経営者であっても、倒産したときに負う責任は出資した金額の範囲内です。しかし、オーナー経営者が金融機関から融資を受けるために、個人資産を担保にしていたり、連帯保証を行っていたりすると、経営が立ち行かなくなったときに個人の財産にまで影響を及ぼす可能性があることがデメリットです。
オーナー経営者の高齢化などにより事業承継を検討する際にも、融資の個人保証を行っていることがネックになることがあります。
投資による資金調達のメリット
出資を受けた資金の返済義務がない
投資による資金調達は、出資を受けた資本金の返済義務がないことがメリットです。経営状態が芳しくないときに、元本や利息の返済によって、資金繰りが悪化する事態が避けられます。
会社の成長を促進するための支援が受けられる
投資家は出資した企業が成長し、多くの配当金を得たり、株式を売却してキャピタルゲインを獲得したりすることを目的としています。そのため、企業が成長するための事業提携先を紹介する、情報提供を行うなどといった支援が受けられることがあります。
投資による資金調達のデメリット
持ち株比率に応じて経営の自由度が制限される
投資家は出資した資本金の額に応じて、株式を取得することになるため、議決権に制限を持たせた種類株式を発行するケースを除くと、議決権を行使できる権利を持つことになります。議決権のある株式の持ち分比率に応じて、株主の権利が発生し、多くを保有する株主ほど権限が強くなります。そのため、出資による資金調達は経営の自由度に影響することがデメリットです。
たとえば、議決権のある株式の過半数を持つ株主や株主のグループがあると、取締役の選任が可能となるため、経営権を握られる可能性があります。あるいは、議決権のある株式の2/3を保有されると、会社の重要事項の決定に関わる特別決議の成立が可能です。また、配当金の額は株主総会で決めるため、配当金を出すことを優先した経営を迫られることもあります。あるいは、議決権のある株式の3%を保有している株主は、会計帳簿などを閲覧する権利があるため、会社の財務状況を知られることになります。
持ち株比率による株主の権利については、『株式の保有割合による株主の権利は?会社支配に必要な持ち株比率は?』で詳しく解説しています。投資による資金調達を行う場合、持ち株比率に留意して出資を受け入れることが大切です。
希望する額の資金調達がしにくい
金融機関から融資を受ける場合には、高い利率の利息を支払うことや担保を入れたり、連帯保証人を立てたりするなど、取引条件を変えることで希望する額の資金調達がしやすくなります。一方、投資の場合は投資家の判断によるため、希望通りの額の資金調達ができないこともあります。
まとめ
融資と投資のいずれによる資金調達が向いているかはケースバイケースです。融資では堅実な事業計画に裏付けられた経営の安定性が重視される一方で、投資では事業の将来性が判断基準になります。
融資と比較して投資は、資金繰りが悪化することや個人の資産に影響を及ぼすリスクが小さいことがメリットです。出資は経営権を握られることが懸念されることもありますが、持ち株比率に留意すれば、経営の自由度をある程度確保しながら、出資を受けることもできます。
M&A仲介会社によっては買収案件に限らず、資金調達を目的とした投資案件も扱っています。投資による資金調達を考えたら、まずは、M&A仲介会社に相談してみましょう。