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M&Aを実施する目的とは?売り手・買い手双方の視点から解説

2020.06.15 M&A知識

今や大企業のみならず、中小企業や個人事業主がM&Aを実施するケースも増えています。

では一体、M&Aはどのような目的で行われるのでしょうか?

今回の記事では、M&Aを実施する目的を売り手・買い手双方の視点から解説します。

M&Aが行われる目的を知っておくと、相手のニーズを踏まえた交渉を展開できるため、M&Aが成立する可能性を高めることが可能です。

M&Aの実施を検討している方は必見です。

売り手がM&Aを行う目的

売り手は主に下記5つの目的でM&Aを実施します。

主力事業への集中

複数の事業を行う企業が、収益性の高い主力事業に集中する目的で、収益性の低い事業を売却することがあります。

この目的でM&Aを実施すると、収益性の低い事業に投入していた経営資源を、主力事業に集中投入できるようになります。

その結果、少ない経営資源で最大限の収益を得られるようになります。

とくに経営資源の量が少ない中小企業にとっては、この目的でM&Aを行うメリットは大きいです。

事業承継

近年多くの中小企業では、経営者の高齢化を迎えています。

しかし一方で、職業選択の自由や経営環境の悪化などの理由から、後継者を親族や会社内で確保できないケースが増えています。

そのような現状から増えているのが、M&Aによる事業承継です。

M&Aによる事業承継とは、外部の会社・経営者に会社の経営権を引き継いでもらう手法です。

後継者がいない中小企業でも、M&Aにより事業承継を果たし、会社の技術や従業員の雇用を守り抜くことができます。

今後ますます後継者不足の中小企業が増えると予想されるため、事業承継目的のM&Aは増加する可能性が高いです。

新規事業やリタイア後の資金調達

新規事業や経営からリタイアした後の資金を調達する目的で、M&Aにより会社や事業を売却するケースもあります。

事業規模や財務状況などにより異なるものの、M&Aにより事業や会社を売却した場合、中小企業でも数百万円〜数千万円もの売却利益を得られます。

M&Aにより獲得した多額の売却利益を使って、新規事業を立ち上げたり、アーリーリタイアを果たして悠々自適に暮らす経営者は少なくありません。

こうした前向きな目的でのM&Aは、特に設立から10年未満のベンチャー企業や、若年層の経営者によって行われることが多いです。

事業の存続

事業の存続をかけて、敢えてM&Aにより大企業の傘下に入る中小企業も存在します。

バブル崩壊以降、中小企業を取り巻く経営環境は厳しい状況が続いています。

大手企業や外資系企業の参入や消費者ニーズの変化などの影響で、短期間で大幅に業績が悪化するケースも少なくありません。

そこで一部の中小企業は、M&Aにより大手企業の傘下に入る選択肢をとっています。

豊富な経営資源を有する大手企業の傘下に入れば、安定的に事業を存続させることが可能となります。

廃業コストの削減

経営環境の悪化などにより、止むを得ず廃業する中小企業は数多あります。

しかし廃業する際には、在庫や機械設備の処分などで多額のコストがかかります。

そのような事情から、多額の廃業コストを削減する目的でM&Aを行うケースもあります。

M&Aにより事業を大手企業や競合他社に売却すれば、廃業の手続きを経ずに事業を畳めます。

廃業を検討するような企業の場合、どうしても売却利益は小さくなる傾向があります。

しかし廃業コストをかけずに済むことを考えると、M&Aを選んだ方がマシと言えるのです。

買い手がM&Aを行う目的

一方で、買い手がM&Aを行う目的は下記の5つです。

既存事業の規模拡大

既存事業の規模を拡大するには、より多くの経営資源(人員や機械設備など)を確保する必要があります。

潤沢に資金を持つ大手企業は、M&Aで経営資源を一括で確保し、既存事業の規模を拡大するケースが多いです。

一から経営資源を確保しようとすると、人員の採用活動や教育、設備の建設などに多大な時間がかかります。

一方でM&Aを行えば、すでに完成された経営資源を一括で取得し、スピーディーに既存事業を拡大できます。

弱みの補強

自社が抱える弱みを補強する目的でも、M&Aによる買収は有効な選択肢となります。

たとえば販売先が不足している場合、買収により販売先を豊富に有する企業を買収することで、弱みを補強できます。

強みを伸ばす場合と比べて、弱みを補強するのは時間がかかる上に上手くいくか不明確です。

M&Aを行えばより短時間で確実に弱みを補強できるため、弱みを持つ企業にとっては強力な手段となり得るでしょう。

多角化経営の実施

経営環境が厳しいため、一つの事業のみで長期的に収益を獲得し続けるのは難しいのが現状です。

そんな現状を打破する目的で有効なのが、複数の事業を行う「多角化経営」です。

多角化を図ることで、一つの事業で収益を得られなくなっても、他の事業からの収益でカバーできます。

しかし新規事業を軌道に乗せるには、一から販路開拓や商品開発などを行う必要があります。そのため、多角化経営は時間がかかる上に難易度も高いです。

そんな多角化の手段として、M&Aを活用する企業も存在します。

M&Aを使うと、展開したい分野ですでに事業基盤を確立している企業を買収できます。

すでに事業に必要な販路や商品を持っている状態で事業を始められるため、多角化に要する時間の削減につながります。

競合の買収

競合を自社内に取り込む目的で、M&Aを活用する買い手も多いです。

競合を買収すれば、その競合の市場シェアを自社のシェアに上乗せできます。

加えて競合が一社減るため、他社との競争に費やす労力の削減にもつながります。

海外進出

海外進出を目的に、進出先企業をM&Aで買収する戦略も多くの企業が実践しています。

海外の市場は商慣習やニーズが日本と大きく異なるため、一から開拓すると多大な時間やコストがかかります。

時間やコストがかかるだけでなく、ニーズの違いから商品やサービスが受け入れられず、事業が失敗するリスクも低くありません。

一方でM&Aを活用すれば、現地のニーズや商慣習を熟知している人材や販路を確保できます。

そのため、より短時間かつ低リスクで海外進出を果たせます。

まとめ

今回見てきたように、M&Aはさまざまな目的で実施されます。

M&Aを実施する際には、あらかじめ相手がどのような目的でM&Aに臨んでいるかを把握しておきましょう。

そうすれば、相手のニーズに応じた提案を行えて、円滑にM&Aを成立させることができるでしょう。