株式譲渡契約書とは?記載内容や印紙の必要性、注意点を解説!
2020.11.12 M&A知識株式譲渡によるM&Aでは、売り手と買い手双方で契約内容に合意した時点で、「株式譲渡契約書」を締結します。
株式譲渡契約書を作成するにあたっては、記載内容や印紙の有無、作成時における注意点を知っておく必要があります。
そこで今回は、株式譲渡契約書の作成にあたって最低限知っておくべき事柄をわかりやすく解説します。
株式譲渡契約書とは
株式譲渡契約書とは、株式譲渡の契約内容について合意した時点で締結する契約書です。
英語に訳すと「Stock Purchase Agreement」となることから、SPAとも呼ばれます。
基本的には、非上場会社の売買で活用されています。
株式譲渡契約書の記載内容
厳密な決まりはないものの、株式譲渡契約書に記載する内容はある程度共通しています。
具体的には、主に下記7つの内容を契約書に盛り込みます。
株式譲渡についての基本事項
株式譲渡契約書の第1項には、株式譲渡に関する基本的な事項を記載します。
具体的には、主に以下の内容を記載します。
- 売り手企業の会社名と住所
- 会社売買の金額
- 譲渡対象の株式数
- 株式の種類
- 株式譲渡の実行日
つまり、「いつ・誰が・どのような株式を・どのくらいの金額で譲渡するか」を記載するわけです。
売買代金を支払う方法
基本事項に続いて、売買代金を支払う方法を記載します。
支払いの方法を記載するにあたっては、トラブルがないように支払い期日や振り込み口座も忘れずに記載しましょう。
株主名簿の書き換えに関する事項
株主名簿とは、誰がその会社の株式を持っているかを記載したリストです。
株式譲渡では、売り手から買い手に株式の持ち主が変わるため、株主名簿に記載された株主の情報も書き換える必要があります。
会社法第130条では、株主名簿の書き換えを株式譲渡の対抗要件としています。
株主名簿の書き換えを行わないと、買い手は新たに株主になった旨を第三者に主張できないので注意しましょう。
表明保証
株式譲渡契約書において、もっとも重要な契約内容の1つが表明保証です。
表明保証とは、ある事柄が正しいことを保証する行為であり、主に売り手が買い手に対して行います。
株式譲渡契約書では、主に下記の内容について嘘偽りがない旨を表明保証として盛り込みます。
- 譲渡する株式に第三者の権利が設定されていない
- 簿外債務などが存在しない
- 正しい形で税務申告を行っている
- 従業員との雇用関係において法令や契約に違反していない
- 財務状況が決算書類のとおりである
簡単に言うと、買い手にとって不都合な都合を隠していない旨を証明するための記載事項です。
契約の解除に関する事項
契約内容に虚偽があったなどの理由で、株式譲渡の契約を解除すべき場面が出てくる可能性があります。
したがって、株式譲渡契約書には、契約を解除できる条件を盛り込んでおくのが一般的です。
具体的な解除の条件としては、下記が挙げられます。
- 株式譲渡の代金が支払われない
- 売り手が株式を引き渡さない
- 表明保証した内容に虚偽がある
- いずれか企業が破産する
損害賠償に関する事項
株式譲渡の契約書には、かならず損害賠償に関する事項を盛り込んでおくのが好ましいです。
基本的には、表明保証の内容に虚偽があった場合に損害賠償を請求できるようにします。
損害賠償を設定しておくことで、相手に虚偽を伝えられるリスクを減らせるだけでなく、万が一の場合に被る損失を軽減することができます。
競業避止義務
競業避止義務とは、「一定のあいだにわたって、売却した会社(事業)と同種の事業を行えないように定める契約事項」です。
株式譲渡後に売り手が売却した事業と同じビジネスを始めると、買い手の収益確保に支障をきたす恐れがあります。
したがって、買い手の希望次第では株式譲渡契約書に競業避止義務を盛り込む場合もあります。
売り手企業にとっては、不利益となる恐れがあるので注意しましょう。
株式譲渡契約書に印紙は必要?
1989年3月31日までは、株式譲渡契約書にも印紙税を貼る必要がありました。
ところが同年4月以降は印紙税の課税が廃止されており、株式譲渡契約書に収入印紙は不要となっています。
原則的には不要ですが、例外的に収入印紙の添付が必要となるケースもあります。
具体的には、売買代金を受領した旨が記載された株式譲渡契約書の場合には、収入印紙の添付を要します。
理由としては、印紙税法における課税文書の第17号に該当するからです。
代金を受領した事実が記載されている場合には、収入印紙の添付を忘れないようにしましょう。
参考:No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで 国税庁
株式譲渡契約書を作成する際の注意点
株式譲渡の契約書を作成するにあたっては、下記2つの点に注意を要します。
譲渡制限が設けられている可能性が高い
株式譲渡は原則誰でも自由に行えます。
ただし、売り手企業が株式に譲渡制限を設定している場合には、売り手の株主が会社に対して譲渡の承認を得る必要があります。
大半の中小企業は、譲渡制限を設けていますので、あらかじめ注意しておきましょう。
株券の発行と交付が必要となる場合がある
登記簿謄本に株券を発行している旨が記載された会社の場合、株式譲渡契約書の締結だけでなく、株券の発行と売り手株主への交付が必要です。
通常の株式譲渡とは違い、手続きが1つ増える形となるので、あらかじめ株券発行会社かどうか確認しておきましょう。
株式譲渡契約書のまとめ
株式譲渡契約書に記載する内容は、どれも基本的なものばかりです。
最低限記載する内容さえ知っておけば、あとは誰でも容易に作成できます。
とはいえ、初めてM&Aを実施する方にとっては、悩む部分も出てくるかもしれません。
株式譲渡契約書の作成にあたって疑問が生じたら、M&Aの専門家である仲介会社や弁護士などに相談するのがオススメです。
弊社でも、株式譲渡によるM&Aについて無料で相談を承っておりますので、ぜひお気軽にご連絡いただけますと幸いです。