会社を廃業するときの解散手続き等の方法は?資産や借金はどうなる?
2019.02.26 会社・事業を売る中小企業では後継者問題や家族の問題、あるいは先行きの不安などから、廃業という道が選択されることがあります。会社を廃業するためには、法律で決められた解散や清算の手続きが必要となり、費用もかかります。また、会社は資産を所有し、借金があるケースもありますが、それは廃業によってどうなるのでしょうか。
会社を廃業するときの手続きや費用などについて解説していくとともに、廃業以外の選択肢についても触れていきます。
株式会社をやめるには
株式会社をやめて廃業するには解散と清算の手続きが必要です。「廃業=倒産」ではなく、廃業と倒産は意味が異なります。
廃業には解散と精算の手続きが必要
株式会社を廃業するには、法律で定められた一定の解散と清算の手続きが必要です。会社の営業活動を停止するだけではなく、解散には解散事由が必要なため、株主総会での決議をもって解散事由とすることが多いです。清算は会社の資産と負債を処理することで、資産の売却と債権の回収、債務の弁済を行い、残余財産がある場合には株主に分配します。
廃業と倒産の違い
廃業と倒産は同義にとらわれることもありますが、意味は異なります。倒産は法律用語ではありませんが、債務の支払いが不能で企業活動の継続が難しい状態になったことをいいます。倒産は処理の仕方によって、裁判所を介す法的整理と、裁判所を介さずに債務者と話し合いを行う私的整理に分類されます。法的整理には清算型の破産と特別清算、再建型の会社更生法や民事再生法によるものがあります。私的整理に該当するのは、銀行内取引停止と内整理です。
一方、廃業は会社をたたむこと全般を意味し、債務の支払い能力は関係ありません。ただし、一般的に廃業というと、自主的に廃業するケースを指す場合も多いです。
清算とは
清算には通常清算と特別清算があり、すべての債務が弁済できるかによって、会社の解散時に利用できる方法が異なります。
通常清算
通常清算は資産の売却や債権回収を行うと、債務をすべて弁済できる際にとれる清算方法で、裁判所の監督を受けません。会社の清算人が売掛金など債務の回収や資産の売却を行い、債務を返済します。
特別清算
特別清算は債務超過に陥っているため、すべての債務は弁済できない場合に用いられる清算方法です。特別清算の申し立てを裁判所に行い、裁判所の監督下で特別清算人が清算手続きを行っていきます。しかし、実際には特別清算よりも破産手続きがとられることが多いです。
特別清算の場合、特別清算人は会社の関係者がなることも可能で、債権者に協定案への合意を得て、債務の弁済を進めていきます。一方、破産の場合、破産管財人は弁護士が選ばれることが一般的で、破産管財人の配当案を裁判所が認可して債務の弁済が行われます。破産の方が裁判所の関与度合いが強いのが特長です。また、破産は様々な法人格の団体や個人がお行えるのに対して、特別清算は株式会社のみが申し立てを行うことが可能です。
会社の廃業で資産や借金はどうなる?
会社を廃業する際に、資産と借金は清算されます。清算人によって資産は換価処分され、売掛金や貸付金などの債権を回収したお金とともに、借金などの債務の返済に充てられます。債務を返済してもお金が残る場合は、株主に分配されます。通常清算では、資産や借金などの負債がともにゼロになると、株主総会での決算報告の承認の後、清算結了登記などの手続きを経て、会社を消滅させることができるのです。
また、清算を進める過程で、資産の売却や債権の回収によって得られる資金が、債務の弁済に必要な額を下回り、借金をゼロにできない場合には通常清算はできなくなります。特別清算や破産に切り替えて手続きを進めていくことになります。
会社を廃業するときの税金
会社を廃業するとき、税金関係の手続きはどうなるでしょうか。確定申告や消費税の取り扱いについてみていきます。
会社をたたむ際の確定申告
会社を廃業する際には、解散日から2ヶ月以内に事業年度開始日から解散日までの解散確定申告を行います。確定申告の方法は通常の確定申告と同じです。また、残余財産が確定するまで毎年、解散日の翌日から1年ごとに清算事業年度の確定申告が必要です。そして、残余財産が確定したら1ヶ月以内に、残余財産確定事業年度の清算確定申告を行います。
計画的に廃業を進めて行く場合、清算がスムーズに短期間で終了すれば、解散確定申告と清算確定申告をすれば済みます。
解散事業年度や清算事業年度の消費税
消費税の課税事業者に該当する場合、解散事業年度も清算事業年度も消費税が課税されます。計画的に廃業を進める場合には、消費税課税事業者ではない状態にしてから解散、清算へと進めて、資産を処分することを検討しましょう。
会社を廃業するまでの手続きの流れ
会社を廃業するには、法律で決められた手続きを踏んでいく必要があります。
株主総会での決議
会社を解散するには解散事由が必要です。通常清算では、株主総会での解散決議を解散事由として、会社を解散するケースが多くを占めています。株主総会での解散決議を成立させるには特別決議の要件を満たすことが必要です。議決権の過半数を保有する株主が出席し、2/3以上の賛成を得ると解散決議が成立となります。
株主総会では清算人の選任も合わせて行うケースが多いです。清算人には資産の売却や債権回収、債務の弁済を担う役割があり、社長が選任されるのが一般的です。
解散・清算人選任登記
株主総会での解散決議から2週間以内に、法務局で解散登記と清算人と選任登記を行います。
官報公告
官報に解散公告を出し、解散する旨を周知するとともに、債権者に申し出るように通知をしています。官報に解散公告を掲載する期間は、2ヶ月以上という規定があります。
資産の換価処分と債権回収
会社の所有する不動産や有価証券、在庫などの資産の売却と、売掛金や貸付金などの債権の回収を行います。
債務の弁済
資産の換価処分と債権回収で得た資金をもとに、債務を弁済します。官報に解散公告を掲載している債権の申し出期間が終了するまでは、債権者の公平を期すため、原則として弁済を行うことはできません。少額でほかの債権者に影響を及ぼさないケースに限り、裁判所の許可を得て弁済を行うことが可能です。
残余財産の分配
債務を弁済した後、残余財産が残る場合には株主に分配します。
株主総会による決算報告の承認
清算人は決算報告書を作成し、株主総会で承認を得ます。これにより清算が終了となり、会社の法人格が消滅します。
清算結了登記
法務局で清算結了の登記を行うと、会社の登記簿が閉鎖されます。
税金関係や社会保険関係などを含めた、会社を廃業するまでの詳しい手続きの流れは、 『会社を廃業・解散するための費用は?休眠もお金がかかる?』 で紹介しています。
会社を廃業する以外の選択肢は?
経営者の高齢化や後継者問題、あるいは事業の先行きへの不安といった理由から、会社を廃業の廃業を考えているとき、廃業以外の選択肢もあります。会社を休眠状態にすることや、M&Aで第三者に事業承継することも選択肢となります。
会社を休眠状態にする
会社の営業活動を停止しても、廃業の手続きを取らずに、会社を休眠させる方法もあります。
休眠とは
休眠とは会社の法人格を継続したまま、営業活動を停止することをいいます。休眠の手続きは簡単で、法人税を管轄する税務署、法人事業税と法人住民税を管轄する都道府県税事務所や市区町村役場に異動届出書という書面を提出するだけです。
会社を休眠にするメリット
会社を休眠にするには、廃業と異なり税務関係の手続きをするだけで済み、煩雑な手続きが必要なく、費用もほとんどかからないことがメリットです。また、法人格を残せることもメリットに挙げられます。再度会社を設立するには、設立費用も手間もかかります。事業を再開する可能性がある場合には、廃業よりも休眠が向いています。
会社を休眠にする際の注意点
会社を休眠にしたときの法人住民税の均等割の扱いは、自治体によります。減免や免除を受けられる自治体がある一方で、営業活動を停止していても法人住民税の均等割が発生する自治体もあります。納税義務は残るため、休眠中であっても確定申告は必要です。
また、休眠中も役員の任期満了の際には役員変更登記を行う必要があります。役員変更登記を行っていない場合には罰則規定があり、代表者は100万円以下の過料に処せられることもありますので注意が必要です。さらに、役員の変更登記を怠るとみなし解散とされるリスクもあります。最後に登記を行った日から12年を経過すると、会社法で休眠会社と位置付けられます。すると、法務大臣が官報で公告してから2ヶ月以内に、法務局で役員変更登記の申請や事業を廃止していない旨の届出を行わない場合には、解散したものとみなされ、職権で解散登記がされることもあるのです。
M&Aで事業承継する
会社を休眠させていても一定の手続きは必要になり、一時的な対処法といえます。特に後継者問題により廃業を考えている場合には、M&Aによって第三者に事業承継を行い、会社を存続させることも選択肢となります。
第三者に会社売却するのも選択肢
M&Aというと大企業が行うものというイメージがあるかもしれませんが、昨今では中小企業のM&Aも事業承継などを目的に一般化してきました。会社売却は通常、株式を100%譲渡し、子会社化する形で行われます。会社が所有する資産や負債のほか、基本的に従業員や取引先、知的財産権、許認可、在庫などもそのまま引き継がれます。すべての企業に買い手企業が現れるとはいえませんが、たとえば、同業他社にないノウハウや技術、優秀な人材を持っている企業は買収の対象になる可能性があります。
会社売却の流れなどについては、『会社売却の方法や手続きの流れは?相場や税金まで徹底解説!』で詳しく解説しています。
会社売却で事業承継するメリット
会社売却によって事業承継をすると、株式売却によってオーナー経営者は創業者利益を得られることがメリットです。廃業をして残余財産を分配するよりも、会社売却の方が高く売れるケースが多いです。また、従業員の雇用も守られることが多いこともメリットに挙げられます。さらに、買い手企業によっては、ブランド力やノウハウを活かして事業拡大が行われ、会社が成長していくことも考えられます。
まとめ
会社を廃業するには時間も費用もかかります。しかし、会社売却という選択をすれば、オーナー経営者は、株式譲渡による創業者利益を得られ、老後の資金などに充てられる可能性があるのです。また、先行きが不安なことから廃業を考えている場合も、他社にとっては魅力的な経営資源を有しているケースもあります。
廃業を検討しているときには、一度M&A仲介会社に相談をして、会社売却という可能性について考えてみてはいかがでしょうか。