株式譲渡所得とは?課税方式や税率についても解説!
2020.11.18 M&A知識M&Aや株式投資では、株式の売却による利益(株式譲渡所得)を得られます。
株式譲渡所得には、所得税と住民税が課税されます。しかし、通常の給与所得や事業所得とは計算方法や課税方式、税率が大きく異なります。
そこで今回は、株式譲渡所得の課税方式や税率についてくわしく解説します。
M&Aや株式投資を行っている方、もしくは今後行う予定の方はぜひ参考にしてください。
株式譲渡所得の概要
株式譲渡所得とは、株式の売却によって得られた税法上の利益を意味します。
簡単に言うと、購入(取得)時にかかった金額と譲渡の実施にかかった費用の合計よりも、売却で得られた金額が大きい場合に株式譲渡所得が発生します。
- 株式譲渡所得が発生する条件:購入金額+譲渡にかかった費用<売却で得られた金額
株式譲渡所得の種類
株式譲渡所得が発生するケースは、大きく次の2種類に大別されます。
まず1つ目は、株式投資で利益を獲得するケースです。上場企業の株式を投資目的で保有し、値上がりしたタイミングで売却すれば株式譲渡所得が発生します。
2つ目は、M&Aにより非上場株式を売却するケースです。株式を買い手に売却する方法でM&Aを行った場合に、利益に相当する金額が「株式譲渡所得」となります。
要するに、どんな理由であれ株式の売却により利益を得ることで、株式譲渡所得が発生するわけです。
上場株式と非上場株式の損益通算は認められない
上場株式の売却による株式譲渡所得と、非上場株式の売却による株式譲渡所得は、税法上別のものとして認識します。
したがって、上場株式と非上場株式の損益通算は認められません。
わかりやすく言うと、下記のような方法で損失を相殺できないので注意しましょう。
- 上場株式の売却による損失を、非上場株式の売却利益で控除する
- 非上場株式の売却による損失を、上場株式の売却利益で控除する
株式譲渡所得の計算方法
次に、株式譲渡所得を計算する方法をご紹介します。
株式譲渡所得は、下記の計算式で求めることが可能です。
- 株式譲渡所得 = 譲渡による総収入 − 必要経費(取得費 + 譲渡費用)
上記の式で計算した金額がマイナスであれば、所得税や住民税は課税されません。
譲渡による総収入とは
譲渡による総収入とは、株式の売却で得られた金額そのものです。
株式投資であれば売却した時点の「株式数×株価」、M&Aならば「売買金額」が該当します。
取得費とは
取得費とは、株式の取得に要した費用の総称です。
主に下記に挙げた費用が取得費に該当します。
- 会社設立時の払い込み代金
- 株式の購入費用
- 株式の購入にかかった手数料(消費税含む)
- 株式の購入にかかる名義書き換え料
- 被相続人や遺贈者、贈与者の取得費(相続や遺贈、贈与により受け取るケース)
なお購入時期が古いなどの理由で取得費が判明しない場合には、売却金額の5%を概算取得費とすることが認められています。
譲渡費用
譲渡費用とは、株式譲渡の手続きに要した費用の総称です。
主に、仲介会社などに支払った手数料などが該当します。
株式譲渡所得の課税方式
課税方式には、「総合課税」と「申告分離課税」の2種類があります。
総合課税とは、各種の所得金額をすべて合計した上で、所得税などの税額を計算する方式です。
一方で申告分離課税とは、他の所得金額とは分離して税額を計算した上で確定申告する方式です。
株式譲渡所得は、上記2つのうち申告分離課税の方式が適用されます。
したがって、本業の利益とは別に税金の計算や確定申告を行わなくてはいけません。
株式譲渡所得の税率
株式譲渡所得には、所得税と住民税が課税されます。
ただし事業所得や給与所得とは、所得税や住民税の税率は異なるので注意が必要です。
株式譲渡所得における所得税と住民税の税率は、それぞれ以下のとおりです。
- 所得税の税率:20.315%(復興特別所得税を含む)
- 住民税の税率:5%
なお上記の税率は、上場株式と非上場株式で共通しています。また、所得の金額に関係なく一定です。
株式譲渡所得や所得税・住民税の計算プロセス
ここまでご紹介した内容が分かれば、一から株式譲渡所得や所得税、住民税を計算できます。
この章では、M&Aや株式投資を行う場合に、株式譲渡所得と所得税・住民税を計算するプロセスを解説します。
手順1:株式譲渡所得を計算する
まずは、株式譲渡による売却金額、取得費、譲渡費用を基に、株式譲渡所得を計算します。
売却金額が1億円、取得費が1,000万円、譲渡費用が1,000万円の場合、株式譲渡所得は以下のように求めます。
- 株式譲渡所得 = 1億円 − (1,000万円 + 1,000万円) = 8,000万円
手順2:所得税・住民税を計算する
株式譲渡所得を求めたら、所得税と住民税の税率をかけることで、それぞれの納税金額を求めます。
- 所得税の金額 = 8,000万円 × 20.315% = 1,625万2,000円
- 住民税の金額 = 8,000万円 × 5% = 400万円
したがって、株式譲渡のあとに納税する金額は2,025万2,000円となるわけです。
まとめ
今回の記事では、株式譲渡所得について最低限知っておくべき知識をお伝えしました。
見てきて分かるように、株式譲渡所得の課税方式や計算方法、税率などは非常に単純です。
特にM&Aにおいては、株式譲渡所得の仕組みが簡単なこともあり、株式譲渡の手法が広く用いられています。
株式譲渡所得の仕組みを最低限知っておけば、株式投資やM&Aなどをスムーズに行えるようになります。
一度理解すれば使いこなせる知識なので、ぜひ活用してみてください。
なお弊社では、中小企業のM&Aを専門的にサポートしています。
株式譲渡によるM&Aをご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
※参考文献