M&Aにおける企業価値評価とは?評価方法をくわしく解説!
2020.12.22 M&A知識M&Aのプロセスにおいて、特に大切であるのが「企業価値評価」です。
売主と買主双方にとって、企業価値評価はM&Aの成功を左右する大切なプロセスです。
今回の記事では、企業価値評価の概要や重要性、具体的なアプローチ方法をご紹介します。
企業価値評価とは?
はじめに、M&Aにおける企業価値評価がどのようなプロセスであるかをご紹介します。
企業価値とは
企業価値評価を理解するには、「企業価値」がどのようなものかを理解しておく必要があります。
企業価値とは、会社の価値を金銭的に見積もったものを意味します。
一般的に企業価値は、株主価値(≒株式時価総額)に負債価値(≒借入金などの合計額)を足した金額となります。
上場企業の場合は、発行済株式数に株価をかけることで時価総額(株式時価総額)を計算できるため、簡単に企業価値を求めることができます。
しかし中小企業の場合、市場での株価が存在しないため、簡単には企業価値を求めることができません。
よって中小企業の企業価値は、コストアプローチやインカムアプローチ、マーケットアプローチなど、複数ある評価手法の中から最適なものを選んで求めることになります。
企業価値評価の概要
企業価値評価とは、文字通り企業価値を計算することです。
M&Aの実務では「バリュエーション」とも呼ばれています。
M&Aにおいては、条件面の交渉を行う前のタイミングで企業価値評価が行われます。
企業価値評価の結果を基に、買主から売主に提示する希望買収金額が決定されます。
また、売主と買主のあいだで行う条件面の交渉時には、企業価値評価の結果をもとに金額の交渉が行われます。
企業価値評価がM&Aにおいて重要である理由
M&Aの買収価格は、最終的には売主と買主の交渉によって決まります。
そのため、最初からお互いの希望を言い合えば、企業価値評価のプロセスを経る必要はありません。
ではなぜ、多くのM&Aでは企業価値評価が大切なプロセスとして位置付けられているのでしょうか?
結論を言うと、売主と買主の価格交渉をスムーズに進めるためです。
基本的に売主はなるべく高い値段、買主はなるべく安い値段でM&Aを成立させたいと考えます。
そのため、お互いの希望を言い合うだけでは、交渉は進まなくなる恐れがあります。
もしくは、片方がもう片方に言いくるめられてしまい、不利な金額で売買する事態になり得ます。
一方で企業価値評価を行えば、客観的または合理的な企業の価格を算出できます。
そのため、企業価値を基準に価格面の交渉を行えば、お互いが納得した上で交渉をスムーズに進めやすくなります。
また、片方にとって著しく不利な金額でのM&Aとなる事態も防げます。
企業価値評価の具体的な方法
企業価値評価の方法は、大きく「インカムアプローチ」、「コストアプローチ」、「マーケットアプローチ」の3種類に大別されます。
この章では、3つのアプローチそれぞれについて、概要やメリット・デメリット、具体的な手法をご紹介します。
インカムアプローチ
インカムアプローチとは、売主の事業から期待される将来的な収益力をベースに企業価値を求める方法です。
将来性を基準にするため、3種類ある企業価値評価の方法の中では、もっともM&Aに適していると言われています。
メリット
最大のメリットは、売主企業の将来的な収益性や、買い手とのシナジー効果を加味できる点です。
そのため、業績が悪い企業や設立したばかりで十分な資産を持っていないような企業に対しても適用できます。
デメリット
インカムアプローチでは、売主が提供する事業計画書をもとに、企業価値を求めます。
そのため、売主の主観が入りやすく、客観的な企業価値を求めにくい点がデメリットとなります。
したがって、外部のM&Aアドバイザーに企業価値評価を依頼するなどして、客観性を担保することが大切です。
具体的な手法
インカムアプローチの具体的な手法は下記になります。
- DCF法:将来獲得すると予想されるキャッシュフローを現在価値に割り引いた金額を基準に、企業価値を求める方法
- モンテカルロDCF法:モンテカルロシミュレーションを使い、不確実性を影響を織り込んだ上でDCFに基づく企業価値を求める方法
- 配当還元法:配当金を基準に企業価値を求める方法
コストアプローチ
コストアプローチとは、売主の純資産を基準に企業価値を求める方法です。
中小企業が売主のスモールM&Aでは、コストアプローチが好んで利用されています。
メリット
コストアプローチが持つ最大のメリットは、客観性の高い企業価値を算定できる点です。
会計のルールに基づいて作られた貸借対照表の情報を利用するため、算定する人に左右されずに企業価値を求められます。
また、インカムアプローチやマーケットアプローチとは異なり、ファイナンスの専門的な知識や面倒な計画書の作成などを必要としません。
そのため、比較的かんたんに企業価値評価を行えます。
デメリット
コストアプローチで利用する貸借対照表は、過去の業績が蓄積されたものです。
将来の収益性や買い手とのシナジーをほぼ加味しないため、将来性が高い企業やシナジーが見込まれる企業の企業価値評価には適していません。
M&Aでは収益性やシナジーを重視するため、この点は致命的なデメリットとなります。
具体的な手法
コストアプローチの具体的な手法としては下記が挙げられます。
- 時価純資産法:時価に換算した純資産をベースに企業価値を評価する方法
- 簿価純資産法:貸借対照表に記載された純資産をそのまま利用して企業価値を評価する方法
マーケットアプローチ
マーケットアプローチとは、株式市場や競合他社を基準に、企業価値評価を行う方法です。
上場企業から中小企業に至るまで、あらゆる規模のM&Aで利用されています。
メリット
市場の株価や事業内容などが類似する上場企業の株価などを基準に利用するため、3種類あるアプローチの中でもっとも客観性が高いです。
また、上場企業の企業価値評価で利用される「市場株価法」は誰でも簡単に利用できる点が魅力です。
デメリット
上場企業に対して利用される「市場株価法」は、短期的な市場の動きに左右されやすい点がデメリットとなります。
一方で主に非上場企業に利用される「類似会社比較法」は、事業内容が類似する上場企業がいないと利用しにくい点がデメリットです。
具体的な手法
マーケットアプローチの具体的な手法には、主に以下のものがあります。
- 市場株価法:上場企業の一定期間における平均株価を利用し企業価値評価を行う手法
- 類似会社比較法:類似する上場企業の株価指標をベースに企業価値評価を行う手法
- 類似取引比較法:過去の類似したM&Aの事例を基準に企業価値評価を行う手法
企業価値評価のまとめ
企業価値評価には、専門的な知識がある程度必要となります。
質の高い企業価値評価を実施したいならば、外部のM&Aアドバイザーに依頼するのがベストです。
弊社では、企業価値評価も含めてM&Aに関するご相談を無料で承っております。
企業価値が気になる方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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