株式譲渡の手続き【流れや必要書類、注意点を解説】
2020.11.11 M&A知識数あるM&A手法の中で、もっとも手続きが簡単と言われているのが株式譲渡です。
とはいえ、事前に知識を知っておかないと手続きに苦労する可能性があります。
そこで今回は、株式譲渡における手続きの流れや必要書類、注意点を解説します。
株式譲渡における手続きの流れ
株式譲渡の手続きは、下記5つの流れで進めていきます。
それぞれの手順を詳しくご説明するので、M&Aの遂行を検討している方はぜひ参考にしてください。
手順1:譲渡制限の有無を確認
株式会社の中には、株式を譲渡(売買)する際に会社による承認を必要とする定め(株式譲渡の制限)を設定しているところがあります。
株式譲渡の制限がない場合は、原則自由に株式の売買を行えるため、特段の手続きは基本的に不要です。
一方で譲渡制限がある場合は、自由に株式譲渡を行えず、所定の手続きを経なくてはいけません。
なおほとんどの中小企業は譲渡制限が設定されているので、これ以降は譲渡制限がある場合のケースを解説します。
手順2:株式譲渡の承認請求を遂行
譲渡制限が設けられている場合には、売り手の株主が株式譲渡の承認請求を会社に対しておこなう必要があります。
簡単に言うと、売り手企業の経営者が、自身が経営する会社の意思決定機関に対して承認請求をおこなうわけです。
株式譲渡の承認請求は、基本的に「株式譲渡承認請求書」を作成し、それを会社に対して提出する形で行います。
手順3:取締役会または株主総会による譲渡承認
株式譲渡承認請求書を受け取った会社は、意思決定機関にて譲渡を認めるかどうかを決定します。
取締役会を設置している会社の場合は、取締役会にて譲渡承認の手続きを遂行します。
一方で取締役会を設置していない企業では、株主総会により手続きを行います。
手順4:株式譲渡契約の締結
株式譲渡に対する承認を得られたら、晴れて株式譲渡を正式におこなえます。
株式譲渡を遂行するにあたっては、売買価格や従業員の取り扱いなど、あらゆる条件を売り手・買い手の間で協議する必要があります。
そして、すべての条件面で互いに合意できた段階で、正式に株式譲渡契約書を締結します。
なお株式譲渡の契約締結は、譲渡承認に先立って行われるケースもあります。
会社側が株式譲渡の遂行について反対の意を示さなければ、順序に関係なく手続きを進められます。
ただし会社側が異議を唱えた場合には、効力をめぐってトラブルに発展する恐れがあるので用心しましょう。
手順5:株主名簿の書き換え遂行
株式譲渡の契約を締結したら、代金の支払いや資産の移転などと同時に、株主名簿の書き換えを忘れずに行わなくてはいけません。
株主名簿とは、会社の株式を保有している株主のリストです。
売り手から買い手に株主が変わるため、正式に名義を変更しておく必要があります。
株式譲渡の手続きで必要な書類
株式譲渡の手続きでは、主に以下にあげた5つの書類が必要です。
株式譲渡契約書
株式譲渡契約書とは、売り手と買い手の間で株式譲渡の遂行について、正式に契約するための書類です。
株式譲渡契約書には、主に下記の事項を書きます。
- 譲渡対象となる株式数
- 売買金額
- 売買代金の支払い方法
- 表明保証
- 解除条項
- 損害賠償に関する事項
基本的には、M&Aの交渉過程で売り手と買い手の間で取り決めた内容を盛り込みます。
株式譲渡承認請求書
株式譲渡承認請求書は、株式譲渡の承認を得るために会社に対して提出する書類です。
こちらの書類には、具体的に下記の内容を書きます。
- 売却する株式の数
- 売却する株式の種類
- 株式譲渡の相手(買い手)に関する内容
株主総会の議事録
株主総会で譲渡承認に関する決定をおこなう場合には、議事録と呼ばれる資料が必要です。
議事録には、参加者の概要や開催日時などの基本的な項目に加えて、決定した内容について具体的に書きます。
株主名義書換請求書
株主名義書換請求書とは、株主名簿の書き換えをおこなうために、売り手と買い手の株主が会社に対して提出する書類です。
厳密な決まりはありませんが、株主名義書換請求書には「売り手・買い手の氏名・住所」や「譲渡する株式数・種類」を書くのが一般的です。
株主名簿
前述したとおり、売り手から買い手に株主を変えた事実を明確化する目的で、株主名簿の書き換えが必要です。
株主名簿には、それぞれの株主について下記の項目が書かれています。
- 氏名(法人名)
- 住所
- 保有する株式数
- 保有する株券の番号
株式譲渡では、上記の項目を書き換える手続きをおこなうわけです。
株式譲渡の手続きにおける注意点
株式譲渡の手続きは比較的簡単ですが、いくつか用心すべき点もあります。
ここで紹介する内容を知らないと、手続き上でトラブルが生じ得るので用心しましょう。
株券発行会社であれば株券を発行・交付する必要がある
まず用心すべきは、株券を発行している会社(株券発行会社)が株式譲渡をおこなうケースです。
株券発行会社が株式譲渡をおこなう場合には、株券を発行・売り手株主に交付する手続きが発生します。
株券を発行しないと、株式譲渡の効力自体が成立しなくなるので用心しましょう。
なお株券発行会社かどうかは、登記簿謄本を確認すれば判明します(「株券を発行する」と書かれていれば発行会社)。
会社側が譲渡を承認しない場合は、別の手続きを行わなくてはならない
2つ目の注意点は、会社側で株式譲渡を承認しないケースです。
株式譲渡を承認しない場合、会社側では下記の手続きを遂行する必要があります。
- 2週間以内に不承認となった旨を株主に通知
- 会社または指定の買取人による株式の買い取り
特に用心すべきは1つ目です。
2週間以内に通知を行わないと、自動的に株式譲渡を承認したものとみなされてしまいます。
以上のように、株式譲渡を承認しないケースでは、通常とは異なる手続きを要するので用心しましょう。
株式譲渡の手続きに関するまとめ
株式譲渡の手続きは、企業内でのみ完結するため手間を要しません。
ただし書類作成にあたっては専門的な知識を要するため、仲介会社や弁護士などの専門家にアドバイスを仰いだ上で遂行しましょう。
弊社でも無料で株式譲渡の手続きに関する相談を承っておりますので、お気軽にご連絡ください。