M&Aのメリットや買収する理由とは?海外企業の買収もアリ?

2019.01.20 会社・事業を買う
海外ビル

M&Aというと、大企業が事業拡大を図るために行うものというイメージを持つ人は少なくないかもしれません。しかし、昨今では中小企業でもM&Aは活発化しています。M&Aを行う企業には、売り手側と買い手側のそれぞれにどのようなメリットがあるのでしょうか。海外の企業とのM&Aのメリットについても触れていきます。

友好的買収のメリット

一致団結する様子

M&Aというと、「乗っ取り」というイメージが強いかもしれません。しかし、これには経営陣の意に反した大企業の敵対的買収が起こると、テレビや新聞を賑わせることが影響しています。

実際には欧米とは事情が異なり、日本の大手企業は株式の持ち合いを行っていること多いこともあり、日本のM&Aは売り手企業の経営陣の同意を得て行う、友好的買収が中心となっています。また、M&Aを経営戦略の手段の一つと捉える経営者が増えたことからも、敵対的な買収は減って来ました。では、友好的買収を行うメリットはどこにあるのでしょうか。

人材の流出を防げる

敵対的買収は、従業員は強引に会社を乗っ取られたイメージを持ちやすく、心証が悪くなりがちです。経営陣が変わることによる体制の変化への不満や反発から、人材の流出が起こりやすくなります。友好的買収の場合は、特に経営が悪化している局面では、今後の経営状況の改善に向けた明るい兆しが見えたとして、従業員のモチベーションを高めるきっかけになることさえあります。M&Aによる人材の流出を防ぐためには、友好的買収によって従業員の理解を得ることが望ましいのです。

シナジー効果を得られやすい

売り手企業の従業員の流出が限定的な状況で、従業員が協力的な姿勢で臨むことによって、これまで蓄積された技術やノウハウを活かした経営がスムーズに行えるため、シナジー効果が得られやすいこともメリットです。また、従業員の個々の能力を発揮しやすい環境を構築しやすくなります。

買い手企業のメリットや買収する理由

手を差し出す男性

買い手企業にとって企業買収は成長戦略のための一つの手段です。事業の拡大には自社展開という選択肢もありますが、買収という手段を選ぶメリットや理由についてまとめました。

新規事業を獲得する

IT化が進んだことによって、これまでのビジネスのやり方が短期間で根底から覆されてしまうこともあるなど、環境変化のスピードが加速しています。意思決定や行動に時間をかけていては取り残されてしまう時代となって来ました。時間とコストをかけてノウハウを蓄積し始めた頃には、ビジネススタイルの潮流が変わっていたといったことも起こり得るのです。また、必ずしも成功するとは限らず、新規事業の立ち上げにはリスクも伴います。

新規事業を始めるためには、調査や企画立案などに多くの時間を費やす必要があり、イチから構築した後、軌道に乗るためにはさらに時間を要することもあります。たとえば、工場を立ち上げる場合には、土地を探して工場を建設し、設備を導入し、技術者を雇い入れ、商品を企画して製造して、出荷できる品質レベルになるまでチェックを繰り返すといった段階がかかります。一方、工場を持つ企業を買収すれば、短期間での新規事業への参入が可能です。

そこで、「M&Aは時間を買うこと」といわれるように、既に実績を挙げている企業を買収すると、新規事業への参入にかかる時間を短縮することができます。売り手企業の設備や人材、技術、ブランド力、顧客が活用できるため、スムーズに新規事業に参入することができます。

また、大手企業の場合は、将来性ある事業を展開する中小企業を買収し、将来のライバルになるのを防ぐために、M&Aが行われることもあります。

シェアを確保する

少子化によって今後に日本のマーケットは縮小していくとされ、売上の拡大はおろか、維持することも難しくなっていきます。成熟した市場ではシェア拡大を図るのは一朝一夕には難しく、新商品や新サービスを展開しても、大きくシェアを拡大するのは困難です。そこで、M&Aによって競合他社を買うことで取引網や店舗網を拡大することで、シェアの増大を図ることができます。

特に、シェアの確保のためのM&Aが目立つのは調剤薬局業界で、業界再編の様相を見せています。

シナジー効果を狙う

M&Aによる買収では、それぞれの企業の価値を足し合わせた以上の経済的な価値を得られることをシナジー効果(相乗効果)といいます。「1+1」が2になるのではなく、2を超えるような効果が生まれるケースです。

たとえば、製造に強みがあり、営業力が弱い企業が、販売網を持つ企業を買収した場合、売売上の拡大が図れるだけではありません。売上の増加によるスケールメリットによって、原材料の仕入れ価格が下がり、収益の向上が見込めます。

あるいは、「a」という商品を売るA社が「b」という商品を売るB社を買収した場合、A社の販路で「b」 も売り、B社の販路で「a」も売ることが可能となります。これをクロスセルといい、これまでの売上を合計したよりも売上の増加が見込めます。

ただし、シナジー効果がどこまで実現できるかは未知数な部分があります。しかし、売り手企業側はシナジー効果を過大評価しやすい傾向がありますので、譲渡価格を適正な価格で算定できるように、M&A仲介会社などのプロに相談するようにしましょう。

有能な人材を獲得する

少子化や景気回復によって、有能な人材は奪い合いとなり、容易に確保することは難しい状況とです。新規事業の立ち上げや事業の拡大においても、人材の確保が課題となり、特に優秀なIT人材は確保が難しいとされています。そこで、人材確保の手段としても、企業買収や事業買収などのM&Aは有効です。

たとえば、情報システム部門を置かずにすべて外注していた場合、事業が拡大していく段階で、自社内に部署を設けた方が機動力があり、コスト削減も図れることが考えられます。しかし、情報システム部門への配属となる優秀なITエンジニアを確保するのは困難です。そこで、情報システム会社を買収し、自社の一部門とする方法が考えられます。

あるいは、優秀な経営者を獲得する、後継者を確保するといった手段としてM&Aが行われるケースもあります。

許認可を活用できる

M&Aの中でも、株式譲渡や株式交換による場合は、法人格は維持され、株主構成が変化するだけですので、許認可はそのまま承継できることが多いです。新規事業を立ち上げる際には、業態によっては許認可が必要となりますが、必ずしも取得できるとは限りません。株式譲渡を受けることで、許認可の取得に時間をかけることなく、スムーズに参入できます。

買収される中小企業のM&Aのメリットは?

買収される売り手企業側にはどのようなメリットがあって、M&Aという手段を選ぶのでしょうか。中小企業のM&Aにおける売り手企業のメリットをみていきます。

事業承継問題を解決できる

少子化によって子供の数が減り、オーナー経営者に子供がいないケースや子供がいても家業を継がないケースが増えています。日本国内のマーケットが縮小に進む中、無理に子供に引き継がせたくないと考える経営者も少なくありません。また、景気の低迷期に採用を控えた影響から、社内に後継者となり得る従業員や役員が育っていないケースもあります。

しかし、事業承継をせずに廃業をすると、従業員が働く場を失うとともに、取引先にも影響を及ぼすことが懸念材料です。特に、40代や50代の従業員がこれまでと同等以上の雇用条件で、新たな職場をみつけるのは難しいものがあります。地方では若手であっても、求人そのものが限られていることも考えられます。

また、廃業にあたっては解散登記に関わる費用をはじめ、税務処理などの事務手続きを委託する費用、在庫の処分費用とった廃業コストがかかります。そこで、M&Aによって第三者が事業承継を行うことで後継者問題を解決できれば、廃業コストがかからず、従業員の雇用を守って事業を存続できることがメリットです。長年培ったノウハウや取引先との関係も継承されていきます。

創業者利益を享受できる

会社譲渡を行うと、現金や不動産などの有形資産だけではなく、特許権や商標権、人材、ノウハウといった無形資産も評価されるため、廃業するよりも創業者利益が得られることが多いです。オーナー経営者は老後の資金に充てたり、新たな事業を始めるための資金として活用したりすることができます。

事業の安定性につながる

自社よりも強固な経営基盤のある優良企業に売却することで、事業の成長や安定性が見込めることもM&Aのメリットです。優良企業の傘下に入ることで、資金調達がしやすくなれば、技術力の強化や大がかりなプロモーションを行ったり、社員教育を充実させたりすることが可能となります。

また、事業譲渡によって不採算部門を売却する場合には、経営資源を集中できることがメリットです。売却資金をコア事業に注入することもできます。

海外企業を買収するメリット

海外のビル

M&Aで買収対象となるのは、日本国内にある企業だけではありません。グローバル化が進む昨今では、少子化によって日本のマーケットが縮小に向かう中、事業拡大を図るためには海外進出を図ることは、中小企業にとっても身近なものとなって来ました。

海外進出を目的としたM&Aでは、100%買収するのではなく、一部出資による資本提携も選択肢となります。海外では一部出資を受け入れることに抵抗がないケースが多く、反対に100%外資による企業を設立できない国もあります。商習慣の違いによるリスクを抑えるためにも、まずは資本提携とするのが得策です。資本提携によって事業に参画した後、良好なやり取りができるようであれば、出資比率の引き上げができるようなオプションをつけた契約形態としておくとよいでしょう。

海外企業を買収するメリットを具体的にみていきます。

立ち上げにかかる時間を買うことができる

海外企業のM&Aの場合も、国内企業のM&Aと同様に事業を立ち上げて軌道に載せるまでの時間を買えることがメリットです。海外で事業を立ち上げるためには、現地の商習慣を理解したうえで、不動産を借りてオフィスを設けて、現地の社員を募集し、業態によっては仕入れを行っていかなければなりません。M&Aで海外の企業の買収や資本提携を行えば、ゼロから手探りの状況で進めていくよりも、大幅に時間を短縮することができます。国内企業のM&Aよりも、新規参入のハードルを下げる効果が高いといえるでしょう。

固定費化した状態からスタートできる

日本国内で新規事業を立ち上げる場合には、想定されるコストを盛り込んだ事業計画をある程度の精度を持って策定することが可能です。しかし、海外での新規事業の立ち上げでは、想定外の事態が起こるリスクが高く、時間やコストの見通しが立ちにくい面があります。多くの時間を費やすだけでも、人件費がかさんでしまいます。

M&Aであれば買収に費用は必要ですが、固定費化した状態からスタートできることがメリットです。

許認可を取り直す必要がないことが多い

海外で新規事業を展開する場合も、日本と同様に事業内容によっては許認可が必要です。改めて許認可を取得する必要するケースもあるため確認が必要ですが、許認可を承継できるケースが多いこともM&Aのメリットとして挙げられます。許認可によって取得の難易度には違いがありますが、政府関係者とのコネクションが必要であったり、現地の行政の担当者との折衝に多大な時間を費やなければならなかったりすることが想定されます。当該事業に必要な許認可を取得している企業を買収することで、スムーズに事業に参入できるのです。

まとめ

中小企業のM&Aは、通常、売り手企業の経営者の合意のもと、友好的買収として進めていきます。M&Aは、事業承継問題の解決や事業の安定を図りたい売り手企業と、さらなる成長を目指す売り手企業がお互いにメリットを感じながら、win-winの関係で成立させることも可能なものです。ただし、M&Aを成功させるためには、シナジー効果が得られる企業とのマッチングを行い、適正価格での取引となるように調整を進めるなど、M&A仲介会社によるサポートが不可欠です。

「会社を売りたい」あるいは、「会社を買いたい」と検討しているときには、まずはM&A仲介会社に相談しましょう。