人材採用の手段としてM&Aは有効!?ITエンジニアも確保可能?

2019.03.25 会社・事業を買う
若手サラリーマン

M&Aは新規事業の獲得やシェアの拡大を目的に行われることが多いですが、人手不足が深刻化する昨今では、人材採用に代わってM&Aが実行されるケースもあります。M&Aが人材確保のために用いられる背景などについて解説していきます。

深刻化する人手不足

若年層の人材を中心に人手不足が深刻化している要因として、生産年齢人口の減少と有効求人倍率の上昇が挙げられます。

生産年齢人口が減少

総務省が公表する2017年の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によると、日本の人口は2009年をピークに減少し、1億2,770万7,259人です。15歳から64歳までの生産年齢人口は7,484万3,915人で、1995年の8,664万9,448人と比較すると、約1200万人も減少しています。総人口に占める生産年齢人口の割合は、1995年は69.51%であったのに対して、2017年には59.77%で、約10%も減少していることからも、生産年齢人口の減少が顕著といえるのです。

有効求人倍率の上昇

厚生労働省が発表する有効求人倍率とは、有効求人倍率(=ハローワークへの企業からの求人数)を、有効求職数(=ハローワークに登録のある求職者)で割ったものです。求職者1人当たり、何社からの求職があるか示すものであり、有効求人倍率が1を超えると人手不足の状態となります。有効求人倍率はハローワークを通じた求人や求職に限られ、転職情報サイトや転職エージェントの利用は含まれませんが、求人動向の指標となるものです。

有効求人倍率は、2018年の平均は1.61倍で、2016年の平均は1.36 倍、2017年の平均は1.5倍であったことから、上昇傾向にあります。

企業の求人が活発化している一方で、生産年齢人口は減少しているため、特に若年層の人手不足が深刻化しているのです。

M&Aは人材確保の手段としても有効

企業が人材確保を図る手段は、転職エージェントや転職情報サイトを活用した直接雇用、あるいは、派遣スタッフの活用が一般的です。あるいは、請負事業者やクラウドソーシングを活用してアウトソーシングを行い、自社の従業員の業務の効率化を図る方法も注目されています。さらにこのほかに人材確保の手段として、M&Aという手法が挙げられます。

M&Aとは

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略。直訳すると合併と買収という意味ですが、ビジネスを買収して、複数のビジネスを統合することをいいます。中小企業のM&Aでは株式譲渡による企業買収が多くを占めますが、事業譲渡や合併といった手法がとられることもあります。

人材確保はM&Aの目的の一つ

M&Aで企業買収を行う買い手側企業の目的をみていくと、まず、新規事業の獲得やシェアの確保が挙げられます。新規事業に一から参入するために、リサーチや準備から始めて事業を軌道に載せるには多くの時間を費やしその間に時流が変わってしまうかもしれません。また、まだ出店していないエリアに進出する場合にも、市場調査が必要です。M&Aを行うことで、M&A時間を買うことができるビジネス手法といわれるように、短期間で新たな領域に進出することが可能となります。

さらに、M&Aの目的の一つとなるのが人材確保です。少子化や景気の回復基調によって、企業の採用が積極化したことで、有能な人材は奪い合いとなる様相を見せています。そこで、新規事業の立ち上げや事業の拡大において、優秀な人材を確保するために、企業買収や事業買収などのM&Aが行われることもあるのです。

M&Aでは原則として従業員は継続雇用

M&Aの中でも、株式譲渡による企業買収の場合、法人格はそのまま残り、経営陣のみが変わる形です。従業員のほか、取引先や仕入れ先との契約、許認可、商品や原材料の在庫などは会社の資産として引き継がれます。従業員との雇用契約は原則として承継され、従業員を継続して雇用することになります。事業譲渡の場合は、雇用関係は一旦リセットされるものの、雇用契約を結び直して、従業員を継続して雇用するケースが多いです。

ただし、いずれの場合も、売り手側企業がM&Aのディスクローズの時期を誤ると、大量離職を招くケースもあるため、慎重に情報開示を行う必要があります。また、キーパーソンとなる人材がいる場合には、当該人材の継続雇用を買収条件に付加する方法も考えられます。

従業員の大量離職を防ぐためのポイントについては、『PMIとは?M&Aでの円滑な事業の引継ぎを実現するポイント』で詳しく解説しています。

ITエンジニアを確保するには?

IT系企業は勿論、今や情報処理システムを導入している企業はほとんどないため、特にITエンジニアは採用難となっています。

他業種のITエンジニアの採用は難しい

ベンチャー企業など中小企業は、事業の成長とともに情報システムの重要性が高まっていきます。コストを抑えるため、パッケージシステムを導入する場合も、大なり小なりカスタマイズするケースが多く、外注するとコストが高いことや小回りの利いた対応が難しいことが課題となります。また、独自のサービスやノウハウがある場合には、オリジナルのシステムでなければ対応が難しい状況になりやすいです。

そこで、自社にシステム部門を持つことを検討し始めても、ITエンジニアからIT系企業以外は興味を持たれにくく、一からシステム部門を立ち上げる場合には、さらに優秀なITエンジニアの確保が難しいのが実情です。

一からシステム部門を立ち上げて社内SEになるのは敬遠されやすく、相応のキャリアと実力のある人材の採用は困難です。また、事業会社に向いた有能な社内SEは限られているという理由も挙げられます。

ITベンチャーの買収も選択肢

そこで、資金力のある企業であれば、ITベンチャーを企業ごと買収し、自社のシステムの開発を行うとともに、外部から受託することも選択肢となります。人材獲得の手法として、M&Aを行うことを検討してみましょう。

M&Aを考えたら、自社に合った買収先を見つけるには、M&A仲介会社を活用するのが近道です。キーパーソンの継続雇用を条件とするなど、譲渡契約の条件交渉のサポートを受けることもできます。