廃業と破産の違いとは?それぞれの手続を徹底解説!

2021.10.24 会社・事業を買う

2019年と比較して、2020年から2021年にかけて、コロナを理由として、廃業や破産の数は増加傾向にあります。廃業と破産は似たような言葉ではありますが、意味も必要な手続も大きく異なります。今回は、廃業と破産に焦点を当てて、両者の定義、共通点・相違点、メリット・デメリット、必要な手続を解説していきます。

廃業と破産の共通点

廃業と破産は、会社や個人事業主のどちらも事業がストップする点は共通しています。そのため、廃業・破産する場合、従業員は職を失うことになります。

また、どちらの手続も法的にルールが決まっており、完了までに時間がかかります。

廃業と破産の相違点

廃業と破産の相違点は、「何が原因で事業をやめるか」です。廃業の場合、個人や法人が理由を問わず、基本的には経営者が決断したタイミングで事業がストップしますが、破産は第三者から強制的に事業がストップさせられます。廃業は自分の好きなタイミングで事業を止めているが、破産は事業を継続したいのに続けられなかったというイメージになります。

破産する際は、一般的に業績が悪く、債務の弁済ができない状況ですが、廃業の場合には、業績が良くても廃業させる場合があります。例えば、中小企業の代表が高齢であるが、後継者が見つからないなどのケースでは、業績が良いにも関わらず廃業する場合があります。

また、破産と似たような言葉として、「倒産」が挙げられます。どちらも債務が大きい状態であり、再建が難しいという点では共通していますが、倒産は法的な用語ではなく、破産は法的な用語という点で異なっています。

廃業のメリット・デメリット

廃業のメリットは以下のとおりです。

  • オーナー経営者であれば、自由に廃業を決めることができる
  • タイミングを自由に設計できるため、従業員や取引先の手当を事前に行うことができる
  • 債務超過でなければ、株式会社に残っている現金や財産の配分を受けることができる

廃業のデメリットは以下のとおりです。

  • 債務超過の場合、特別清算の方法を利用しなければならず、裁判所を通すことによる影響から、手続が複雑かつ時間がかかってしまう
  • 株主が分散している場合、1人の意思決定だけでは廃業を決定できないケースがある
  • 会社に金融機関などからの借金が残っていれば、連帯保証先であるオーナー経営者が廃業後に借金返済していく必要がある

破産のメリット・デメリット

破産のメリットは以下のとおりです。

  • 廃業するのが難しい場合でも、強制的に事業を止めることができる
  • 自己破産する場合など、今後、借金を返済する必要がなくなる

破産のデメリットは以下のとおりです。

  • 官報に情報が公開されるので、周りから破産したことが分かってしまうことがある
  • 裁判所が関連する必要があるため、手続に時間がかかってしまう
  • タイミングを決められないため、従業員や取引先に迷惑がかかる場合がある

廃業の主な手続

廃業の主な手続は以下のとおりです。

  1. 株主総会の特別決議、清算人の選定
  2. 解散の登記手続
  3. 解散時の確定申告
  4. 官報での公告
  5. 清算手続
  6. 清算結了
  7. 清算結了登記、清算時の確定申告
  8. 税務署など、清算の届出

上記の中で、官報での公告期間は最低でも2ヶ月間の期間が必要です。そのため、廃業の手続は最短でも2ヶ月+手続に係る期間の時間が必要です。司法書士など専門家の支援を得ながら、効率よく手続を進めていくことがおすすめです。どの事務所に依頼して良いか分からない場合には、顧問税理士に紹介してもらう、インターネットで検索して状況を説明しながら相見積もりをとって判断するといったことが必要です。

廃業に係る費用は、登記費用と官報の掲載料は必ず必要になってきます。登記費用は、解散登記費用3万円、清算人選任の登記9千円、清算結了登記2千円の合計4万1千円がかかります。また、官報の掲載料は文字数によって変わってきますが、一般的に数万円程度のコストがかかります。法人、個人事業主問わずに、廃業の際は一定程度のコストがかかることは留意しておきましょう。

廃業の手続後は、残った財産が持株比率に応じて分配されるため、その資金を元手に新たな事業を起こすことも可能になります。

破産の主な手続

破産の主な手続は以下のとおりです。

  1. 破産手続開始の申し立て
  2. 裁判所における破産手続開始の決定
  3. 会社財産の整理
  4. 破産管財人による会社財産の換価処分
  5. 残余財産の債権者への配分

破産の場合、裁判所への破産手続に必要な書類の準備も含めて通常、早くとも半年から一年半程度の時間が必要です。弁護士、裁判所、債権者、など関係者の数が多く、作成・提出しなければならない書類も数多くあります。

破産に係る費用は裁判所費用や法律事務所や税理士の費用を合わせると最低でも数十万円は用意しておく必要があります。破産手続に必要なスケジュールや費用をあらかじめ整理し、淡々と対応していくことが求められます。

破産手続きの終了後は、借金が消滅することで、借金返済に追われることなく、通常の生活を送ることが可能になります。

M&Aであればより短い時間で売却できる可能性がある

上記のとおり、廃業や破産の場合、短くても数か月から、長い場合だと1年半以上かかってしまう場合があります。その間、事業から得られるキャッシュフローはなく、単に法的な手続をこなしていかなければなりません。

その点、M&Aの場合には、廃業や破産の場合よりも短い期間で売却できる可能性があります。また、廃業や破産と異なり、事業をその時点で止める必要はなく、事業売却の手続を進めながら、企業や事業から得られる利益を自分自身が手にすることができます。

企業価値評価の際も、廃業や破産のケースでは清算価値(≠時価純資産)しか付かないのに対して、M&Aであれば、買い手にシナジーがある場合には、清算価値を大きく超える価値が付くかもしれません。M&Aの場合は、DCF法やマルチプル法などを用いてバリュエーションがなされますが、将来の利益を評価してもらえるのは、M&Aの場合に限られます。簿外負債のリスクが高く株式譲渡によるM&Aが困難と思われる場合にも、事業譲渡によるスキーム選択で、売れる事業だけを選択して売却できることもあります。専門家のアドバイスのもと、さまざまなスキームを検討してみることがおすすめです。

なお、今後、将来性が高く見込まれる場合、業務や資金繰り等など経営改善が見込まれる場合などは、買い手から評価されやすくなります。ただし、高望みしすぎて、M&Aの期間が長くなってしまった場合には、その間に経営状況が悪化し、債務超過等の問題により、廃業すらできなくなってしまうリスクもあります。M&Aや積極的な廃業を選択肢とするためにも、M&Aに関する各種サービスを利用し、期限を切って挑戦することで経済的な利益を得る可能性を高めることができます。

まとめ

今回は、廃業と破産について、両者を比べながら解説してきました。どちらも事業や会社の活動を止めるという点では共通していますが、廃業は自ら、破産は第三者から事業廃止の決断がなされれる点で大きく異なっています。廃業と破産は、それぞれ法的な手続が定まっており、専門家に相談しながら慎重に手続を進めていくことが求められます。

廃業と破産は、それぞれ数か月から1年を超える期間が必要となりますが、M&Aであればより早く事業を手放せる可能性があります。事業を手放すだけでなく、良い買い手と巡り合えた場合には、高い企業価値をもって会社や事業を売却できる可能性があります。M&Aの可能性を検討したい場合には、M&A専門家にまずは相談してみることがおすすめです。M&A専門家は、経営者の行っている事業・業態・経営状況、そしてM&Aの市況などから、適切な財務・法律に関するアドバイスや各種サポートを提供してもらえます。信頼のできる経験豊富なM&A専門家のもと、M&Aにより事業や会社が売却できることを祈願しております。