会社を廃業・解散するための費用は?休眠もお金がかかる?

2019.02.23 会社・事業を売る

資金繰りの悪化や後継者問題により、会社を廃業して解散手続きなどを進めることを考えざるを得ないケースもあります。しかし、会社を廃業するにも費用がかかります。会社を廃業・解散するために費用にかかる費用を解説したうえで、休眠した場合の費用にも触れていきます。

会社を廃業・解散するのにかかる費用

会社を廃業するには解散して清算を行う必要があり、手続きなどに費用がかかります。

登記や法手続きにかかる費用

会社を廃業するためには、法務局で2回登記手続きを行う必要があります。まず、解散と清算の手続きを進めるため、解散登記と清算人選任登記を行いますが、同時に手続きを進めることが一般的です。解散登記の登録免許税は3万円、清算人選任登記の登録免許税は9,000円です。清算が完了した後には清算結了登記を行う必要があり、登録免許税は2,000円です。

また、会社を解散する前には、官報への解散公告の掲載し、債権者に申し出てもらうために通知を行うことが義務付けられています。官報への掲載費用は1行あたり税込みで3,524円で、行数によって費用が変わります。一般的に解散公告は10行か11行になるため、35,240円か38,764円のいずれかです。

設備や在庫の処分、原状回復費用等

廃業をする際には売却できない設備の処分費用がかかります。また、在庫を処分するには原価を割った金額でしか売却できず、マイナスになることが少なくありません。

また、事務所や店舗を借りていた場合は、住宅とは異なり、すべて借主負担で原状回復工事を行うのが一般的なため、原状回復費用が発生します。特別な工事を行っていない場合でも、坪単価2.5万円~3万円が相場です。たとえば、50坪のオフィスの場合、原状回復費用は150万円が目安になります。小規模なビルの場合は坪単価2万円程度で済むこともありますが、反対に大規模なビルの場合、坪単価は4~5万円程度が相場です。

専門家への委託費用

廃業に関わる手続きを経営者自らが行えば費用は抑えられますが、現実的には専門家に相談しながら進めて行くのが一般的です。

司法書士

司法書士には登記手続きを代行できるため、解散登記や清算人専任登記、清算決了登記の申請業務などを委託できます。必要な書類の準備も依頼することが可能です。

弁護士

廃業にあたって取引先とトラブルが起きた場合には、弁護士に対処を依頼できます。また、資金繰りが悪化して廃業したい場合は、特別解散手続きや破産手続きを選択するかどうかを含めて弁護士に相談し、サポートを依頼できます。弁護士は法律事務の代行ができるため、登記申請を委任することも可能です。

税理士

会社を廃業するときは、解散確定申告や清算事業年度ごとの確定申告、清算確定申告など税務関係の手続きが必要です。また、解散事業年度や清算事業年度であっても、消費税課税事業者に該当するケースでは、消費税の納付に関わる税務処理も発生します。そのため、通常の税務処理とは異なりますが、顧問税理士などに税務処理を委託するケースが一般的です。

社会保険労務士

会社を廃業するときには、労働保険や雇用保険、厚生年金保険、健康保険の手続きが必要です。社会保険関係の手続きは社会保険労務士に委託できます。

廃業にかかる費用の総額の目安

実際に中小企業が廃業するには、どの程度の費用がかかるのでしょうか。少し古い資料になりますが、中小企業庁の「2004年中小企業白書」のデータをもとにみていきます。

規模の大きな会社ほど廃業費用がかかる

従業員の人数別廃業費用のグラフ
出典:中小企業庁「2004年中小企業白書」

中小企業の廃業費用は、従業員が0人のいわゆる一人経営の場合、「0円超~50万円未満」が53.0%と過半数を超えています。「費用はかからなかった」と「50万円以上100万円未満」を合わせると78.3%で、8割弱のケースで100万円未満に収まっています。

従業員が1人~5人の場合も、「0円超~50万円未満」が44.4%とボリュームゾーンです。「費用はかからなかった」と「50万円以上100万円未満」を合わせると68.3%で、7割弱のケースで100万円未満に収まっています。廃業費用が100万円を超えるケースが増えてはくるものの、大きく傾向は変わりません。

従業員が6人以上の場合は、「0円超~50万円未満」が24.4%、「50万円以上100万円未満」が22.4%で、「費用はかからなかった」も合わせて50%。廃業費用が100万円未満で収まるケースは半数となり、1,000万円以上のケースが14.1%にも上ります。

従業員数から会社規模をみると、規模が大きいほど廃業に関するコストがかかるといえます。

業種による差はあまりない

業種別廃業費用のグラフ
出典:中小企業庁「2004年中小企業白書」

廃業費用を業種別にまとめたデータでは、建設業では「0円超~50万円未満」が60.8%を占めて多くの割合となっていますが、ほかの業種はいずれも30%後半~40%半ばで大きな違いはありません。廃業費用が「50万円以上100万円未満」も、いずれの業種も10%台後半から20%台です。

中小企業においては業種ごとの廃業コストの差は小さいといえるでしょう。

会社を休眠にする場合は?

スケッチブックとペン

廃業には費用がかかり、手続きも煩雑であるため、事業を再開する可能性がある場合は、廃業の手続きをせずに法人格を残し、会社を休眠にするという選択肢もあります。休眠するにはどのような費用がかかるのでしょうか。

休眠の手続き方法

会社が事業実態がなく、営業活動を一切行っていない場合には、税務関係の手続き行います。自治体によっては、法人住民税の均等割の免除や減免を受けられます。

国税の法人税は税務署、地方税の法人事業税や法人住民税は都道府県税事務所と市区町村役場が管轄になるため、それぞれ届出が必要です。届出の書類は、休業届や休眠届と呼ばれることもありますが、正しくは「異動届出書」です。

ただし、会社法では役員の任期は最長で10年とされており、法務局で任期満了に伴う役員の変更登記は必要です。最後に登記があった日から12年を経過すると、会社法で休眠会社とされます。その後、法務大臣による官報での公告から2ヵ月以内に役員の変更登記を行うか、事業を廃止していない旨の届出を行わなければ、解散したものとみなされ、職権で解散登記が行われることがあります。

休眠にかかる費用

会社を廃業せず、休眠にする場合、費用はどの程度かかるのでしょうか。

届出に費用は不要

税務署や都道府県税事務所、市区町村役場の届出には費用はかからず、簡単な手続きで済みます。

専門家に依頼すると委託費用が必要

休眠している間も毎年の税務申告や任期満了による役員変更登記の手続きが必要なため、税理士や司法書士に委託する場合には費用がかかります。

税金が発生するケースもある

法人税と法人事業税、法人住民税のうち、法人住民税は均等割があるため、利益がなくても税金が発生することがあります。休眠している会社は、法人住民税の減免や免除を受けられるかどうかは自治体によって異なるため、確認しておきましょう。

また、休眠中に役員変更登記を行う場合にも登録免許税がかかります。

会社売却も選択肢に

廃業をすることで従業員は職を失い、廃業には費用必要です。しかし、後継者問題を理由に廃業をするのであれば、M&Aによる第三者への事業承継も選択肢となります。あるいは、資金繰りの悪化を理由に廃業を考えている場合も、事業の将来性が見込める場合には、会社売却や増資による資金調達が可能なケースもあります。また、節税目的で赤字会社を買うケースもあるのです。

廃業を検討しているのであれば、一度、M&A仲介会社に会社売却や資金調達の相談をしてみましょう。