事業売却とは?目的やメリット、相場、税金について徹底解説!
2020.09.15 会社・事業を売るM&Aと聞くと会社の経営権ごと売却するのをイメージする方が多いですが、実は事業のみを売却することも可能です。
今回の記事では、そんな事業売却のメリットやデメリット、手続きの流れ、相場、発生する税金を分かりやすく解説します。
事業売却の概要
事業売却とは、会社の中に経営権は残しつつ、事業の一部またはすべてを売却することです。
具体的には、売買対象となる事業に関連する資産や負債、取引先、販路、人材などを売却する形で実施します。
会社分割と呼ばれるマイナーな手法が用いられるケースも若干あるものの、ほとんどは事業譲渡により実施されます。
事業売却の目的
事業売却は、主に下記3つの目的で実施します。
- 不採算事業を手放して、主力事業に集中する
- 事業売却で得た資金を新規事業に投入する
- 個人事業主によるM&A(株式を発行できないため必然的に事業売却となる)
簡単に言うと、現時点での経営状態を改善する目的で事業売却は行われます。
会社売却との違い
会社売却との違いは、「経営権を手元に残すかどうか」です。
前述したとおり事業売却では、あくまで会社の経営権は手元に残ります。
一方で会社売却では、会社の経営権自体が買い手企業に移ります。
経営権自体を移動させるために、会社売却では売り手経営陣(≒株主)が持つ株式を買い手に譲渡します。
名称こそ似ているものの、実際の流れや方法、効果は全く異なります。
目的や希望に応じて、会社売却と事業売却のどちらを選択するか決めましょう。
関連記事:会社売却とは?方法や手続きの流れ、価格の相場を徹底解説!
事業売却のメリット・デメリット
次に、事業売却を行うメリットとデメリットをご紹介します。
メリット
最大のメリットは、手元に経営権を残すことができる点です。
引き続き経営者としての地位を保てるため、会社に残った資産やブランド力などを駆使して、新たな事業にチャレンジできます。
また、事業の売却で多額の利益を得られる点もメリットの一つです。
売却で得た利益を新規事業や主力事業に使えるのはもちろん、経営からリタイアして悠々自適に暮らすこともできます。
デメリット
もっとも大きなデメリットは、会社売却と比べて手続きが面倒となる点です。
一部の例外ケースを除いて、事業売却では株主総会による特別決議が必要となります。
株主への通知はもちろん、株主から賛同を得るための活動も必要となるため、とても手間がかかります。
また、従業員や取引先との契約が一度リセットされた上で引き継がれる点にも注意が必要です。
買い手が引き継いでくれる場合は良いですが、そうでない限りは売り手側で移籍する従業員の退職金を支払う必要が出てきます。
事業売却の手続き(流れ)
ほとんどの事業売却は、事業譲渡と呼ばれるM&A手法により実施されます。
この章では、事業譲渡の手法で事業を売却する場合の手続き(流れ)について、順番にご説明します。
仲介会社との契約・買い手探し
事業売却先を自力で見つけるのは困難なので、仲介会社に買い手探しをサポートしてもらうのが一般的です。
仲介会社を選ぶ際には、手数料体系やサービス内容を複数の会社で比較・検討しましょう。
仲介会社と正式に契約すれば、買い手探しはもちろん、その後の交渉や契約もサポートしてもらえます。
買い手との交渉・契約
自社事業の買収に興味を持った買い手が現れたら、具体的な交渉を行います。
交渉では、希望金額や従業員の処遇、M&Aのスキーム、スケジュールなどを決定します。
なお実際の売買価格は、買い手が売り手に対して詳細な調査(デューデリジェンス)を実施した上で決定されます。
簿外債務や偶発債務(訴訟リスクなど)があると、売買価格が下がったり、事業売却自体が白紙となるリスクもあるので注意しましょう。
買い手と売り手が条件面で合意できたら、事業譲渡契約を締結します。
株主への通知・株主総会の決議
事業譲渡の効力発生日の20日前までに、株主に対して事業売却を実施する旨を通知する必要があります。
また、下記のケースに該当する事業売却では、株主総会の特別決議が原則必要となります。
- すべての事業の譲渡
- 事業の重要な一部の譲渡(譲渡資産が売り手企業の総資産額の5分の1を超える場合の事業譲渡)
クロージング
無事株主総会にて事業売却を行う旨が決議されたら、クロージングを行って事業売却を完了させます。
クロージングとは、対価の支払いや資産・契約の移転といった手続きの総称です。
契約を締結したからといって、即座に事業売却が完了というわけではないので注意しましょう。
事業売却の相場
事業売却の相場は、事業が持つ金銭的な価値とほぼイコールです。
この章では、事業売却の相場を計算する代表的な2つの方法をご紹介します。
時価純資産+営業権
一般的な中小企業の事業売却では、時価純資産に営業権(営業利益の3年〜5年分)を足し合わせた金額が相場となります。
誰でも簡単に計算できるので、まずはこちらの方法で「大体いくらで事業売却できるか」を算出してみると良いでしょう。
DCF法
事業が持つ将来性を加味した相場は、DCF法という手法で計算できます。
DCF法とは、事業を運営することで将来にわたり得られるキャッシュフローの現在価値を基に、事業の金銭的な価値を計算する方法です。
将来性を加味できる点では利点があるものの、計算自体が簡単ではない点や、売り手の恣意や主観が結果に反映されやすい点などがデメリットになります。
関連記事:事業売却の相場【計算方法や相場よりも高く売る方法を解説】
事業売却でかかる税金
事業売却(事業譲渡)では、主に法人税等と消費税が課税されます。
事業売却に備えて、それぞれの計算方法を確認しておきましょう。
法人税等
法人税等とは、法人税や地方法人税、法人住民税、事業税など、法人に課税される税金の総称です。
事業売却においては、譲渡益に対して法人税等が課税されます。
譲渡益(事業売却で獲得した利益)は、売却金額から譲渡事業の純資産(資産−負債)を引いて算出します。
- 譲渡益 = 売却価格 − 純資産
この譲渡益を本業で得られた事業所得などと合算した上で、実際に納税する金額を計算します。
納税する金額を計算する際には、実効税率(およそ30〜40%)が適用されます。
実際の税率は企業の規模などにより異なるため、必ず専門家に判断を仰ぎましょう。
消費税
事業売却では、売却した課税資産に対して消費税が課税されます。
主に下記に挙げた資産が、消費税が課税される資産(課税資産)に該当します。
- 営業権(のれん)
- 有形固定資産(土地以外)
- 棚卸資産無形固定資産(ソフトウェアなど)
土地や有価証券には、消費税が課税されないので注意が必要です。
まとめ
事業売却は、現状の経営状況を改善する上で有効な手法です。
不採算事業を抱えていたり、事業にまとまった資金が必要となった方は、ぜひ事業売却の実施を検討してみてください。
弊社でも、事業売却に関するご相談や案件紹介を随時行っています。
事業売却に興味を持った方は、ぜひお気軽にご相談ください。