サラリーマンがM&Aで起業するべき理由は?個人でも案件を買える?

2019.03.26 会社・事業を買う
スーツの男性

長寿化社会の到来によって、“老後”の期間は延びています。サラリーマンには定年がありますが、企業のオーナー経営者になると定年にとらわれずに活躍して、報酬を得ることが可能となります。そこで、サラリーマンとしての経験を活かしてオーナー経営者になるのであれば、ゼロイチからの起業よりも、個人M&Aでの起業がおすすめです。

60歳以降も働く時代「個人M&Aで起業」も選択肢

かつては60歳で定年を迎えた後は、年金で悠々自適の生活を送るのが一般的でした。しかし、公的な年金の支給開始年齢が65歳となり、年金支給額が下がりました。また、平均寿命は男性81歳、女性87歳で長寿社となっています。さらに、平均寿命は若くして亡くなった人が含まれているため、実際には半数以上の人が90歳代まで生きるとされています。年金の支給開始年齢が遅くなり、“老後”といわれる期間が延びたことで、最低でも65歳、あるいは70歳まで働いて、老後資金を確保することが求められる時代になっているのです。

継続雇用は給与が大幅ダウン

2013年に改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業は定年年齢を65歳以上に引き上げるか、あるいは定年制をなくす、希望者全員を対象とする65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかを実施することが義務付けられました。

実際の運用状況を厚生労働省の「平成29年就労条件総合調査」からみると、定年制を定めている企業が95.5%とほとんどを占め、定年制のない企業は4.5%と少数です。また一律に定年年齢を定めている企業の定年年齢は、60歳の企業が79.3%と多くを占め、65歳以上の企業は17.8%となっています。つまり、多くの企業では定年年齢は60歳に据え置かれ、継続雇用制度が導入されているのです。

継続雇用制度では、希望者全員を65歳まで雇用することが義務付けられているものの、最低賃金に抵触しない範囲であれば、賃金や勤務日、労働時間、雇用形態などの労働条件は結び直すことができます。そのため、継続雇用では非正規雇用に変わることが多く、フルタイムではなくパートタイムでの勤務となるケースもあります。また、給与も定年前の50~60%程度に大幅に減額になるケースが少なくありません。仕事内容は同じ職務を引き続き担当するケースもあれば、担当する仕事が変わるケースもあります。さらに多くの企業では働けるのは65歳までです。

60歳の定年時に仕事を探しても、特別なスキルや経歴がある人など、定年前の条件で働くことができる人は限られています。また、65歳以降の新たな職探しはさらに難しく、時給制のパートの仕事がほとんどです。サラリーマンが70歳まで多くの収入を得られるのは、大企業の役員が子会社の社長や役員になるケースなどに限られています。

M&Aで起業は役員報酬やエクジットによる利益が魅力

そこで、60歳以降も現役時代と同等以上の収入を得て、老後資金を確保するために選択肢となるのが、個人によるM&A、企業買収を行って代表取締役になるという方法です。ただし、ある程度の規模の企業でマネジメント経験のない人には、ハードルが高いです。大手企業、もしくは中堅企業で課長以上の役職の経験がある人に向いています。

企業買収を行い、代表取締役になることで、定年に関係なく、65歳や70歳、健康で元気であれば80歳まででも役員報酬を得ることができます。また、買収した企業の業績が上向きになり、企業価値が上がれば会社売却によるエグジットで譲渡益を得ることも可能です。中小企業の売却価格は、「純資産+2~3年分の経常利益」が一つの目安になりますので、業績が向上すれば、譲渡益が得られることが期待できます。

サラリーマンが中小企業を個人買収するメリット

握手する男性

サラリーマンの中小企業の買収は、ゼロイチよりもリスクを抑えられ、大企業で培ったノウハウを活かせるというメリットがあります。

ゼロイチはリスクが大きい

2006年にいわゆる新会社法が施行され、会社は資本金1円から作ることが可能となりました。会社自体は登記行えば、誰でも簡単に作れる時代となりました。しかし、「会社を作りたい」、「社長になりたい」といった漠然と起業したいという想いから起業しても、安定した収益を得られるようになる人は限られています。既存の商品やサービスを売るよりも、世の中にこれまでにはなかった商品やサービスを展開しようとするのは、さらにハードルが上がります。

会社を設立して事務所を借りるには、前家賃や保証金、仲介手数料、保証会社保証料や火災保険料がかかり、デスクやパソコンなどの家具や設備が必要です。さらに、毎月、家賃や水道光熱費、移動のための交通費や宿泊費などがランニングコストとしてかかります。また、人を雇うのであれば、給与に加えて社会保険料もかかります。さらに事業が軌道に乗るまでの間の生活費も、別に用意することが必要です。早期に売上を上げて収益を得て、事業を回すことができなければ、こうしたお金が湯水のように出ていってしまいます。

事前に確実に売れると判断できる商品やサービスをもとに綿密な事業計画を立案し、売り込み先の顧客リストを準備すれば、成功する確率は高まりますが、上手くいくとは限りません。実績のない状態で売り込みを行って販売ルートを確立していくのは難易度が高いです。また、事業によっては外注先や人材の確保も必要になります。

ほとんどのサラリーマンは仕事を通じてゼロイチを経験したことがなく、会社の信用力や資金、人材、モノをもとにビジネスをしています。既に10になっているものを維持したり、成長させたりすることがミッションとされるケースが多いです。新規事業の立ち上げにおいても、会社の信用力や資金、人材を活用できることは変わらないため、起業のゼロイチとは大きく異なります。

起業した会社が5年後に生き残る確率は1~2割程度といわれています。順調に収益を上げて銀行から融資を取り付けたり、将来性のある事業を展開してベンチャーキャピタルからの投資を受けられたりするのは、ほんの一握りの人なのです。

中小企業の買収は大手企業で培ったノウハウが活かせる

起業するよりも、大手企業などでのサラリーマン経験がある人におすすめなのは、中小企業の買収です。ゼロイチから始めるよりも、10年以上生き延びている企業を買収する方がリスクを抑えられます。設立から10年を経過した企業には、ヒト、カネ、モノなどの一定の経営資源が備わっていることが多いのです。

また、中小企業の経営には、大企業のサラリーマンとして培ったノウハウを活かすことができます。管理職としての経験があれば、マネジメントスキルを組織マネジメントに活かすことが可能です。また、中小企業では適切な業務管理が行われていなかったり、業務効率化が進んでなかったりするため、生産性が低いことが少なくありません。

たとえば、顧客情報の共有が図られていないため、営業担当者が同じ顧客にアプローチを行っている、あるいは、すべての顧客に定期的な訪問を行う体制がとられていないといったケースが挙げられます。人材育成の面では、営業手法が属人的でノウハウが共有されていない、マニュアルがなく、上司が部下に仕事を教えていないといった課題があるケースがあります。こうしたケースでは、大企業であれば当たり前にやっていることを導入するだけで、収益の向上につながることが期待できるのです。

サラリーマンが買える中小企業はある?

紙幣

サラリーマンには起業よりも、中小企業の買収がおすすめとはいえ、実際に買える企業はあるのでしょうか。そもそも、買い手を探している企業はあるのか、サラリーマンが会社を買うことはできるのかという2方向からみていきます。

後継者問題で黒字企業も廃業している

かつては親がオーナー経営者の場合、子供が会社を継ぐことが一般的でした。しかし、昨今では、後継ぎとなる子供がいない、子供に経営者としての適性がない、子供が別の職業に就いているといった理由から後継者問題を抱える中小企業が増えています。事業承継が進まないこともあり、中小企業の経営者の年齢が高齢化してきています。中小企業庁の「2017年版中小企業白書」によると、1995年から2015年の20年間で中小企業の経営者の年齢のボリュームゾーンは、47歳から66歳まで上がりました。多くの中小企業で、世代交代が進まず、後継者問題が起こっているのです。

休廃業解散件数のグラフ
出典:2017年版中小企業白書

中小企業の後継者問題は、黒字なのに廃業するという事態を引き起こしています。「2017年版中小企業白書」によると、2010年から2016年までの間で倒産する企業は減少しています。しかし、休廃業企業は大きく変わらない状況です。

出典:2017年版中小企業白書

そこで、休廃業した企業の経営者で60歳以上の人が占める割合をみると、2007年は70.5%であったのに対して、2016年には82.4%と増加しています。経営者の高齢化が休廃業や解散の要因の一つとなっていることが考えられます。

出典:2017年版中小企業白書

さらに、休廃業した企業の売上高経常利益率を見ると、黒字の企業が50.1%で半数を超えています。また、2013~2015年にデータベースに収録されている生存企業の売上高経常利益率の中央値2.07 %を上回る水準の企業が、32.6%もあります。休廃業した企業の半分は黒字であり、標準的な企業よりも収益を上げている企業が3割近くもあるのです。

後継者問題により廃業という道を選択している企業は相当数あることが想定されます。後継者問題などから、会社を売るのは難しいと考えて、売るという選択をしなかった企業や、買い手が見つかれば売りたいと考えている黒字企業は少なくないと考えられるのです。

スモールM&Aならサラリーマンでも買える

ニュースで目にする企業買収は何億円、何百億円という単位ですが、それは有名な大手企業のM&Aの話です。中小企業といっても幅広いため、買収には億単位のお金を必要とする企業もあります。サラリーマンでも買いやすいのは、スモールM&Aといわれる数百万円から数千円程度で売買される企業です。従業員の数では数名~30名程度、年商では数千万円から3億円程度の企業が目安になります。

お金の問題もありますが、30名程度までの会社であれば、大企業の一つの部署と変わらないため、無理なくマネジメントしやすいことも理由です。自己資金だけではなく、最近では金融機関の融資を受けて個人M&Aを実現した事例も出て来ました。

後継者問題から買い手いれば売りたい黒字の中小企業はあり、サラリーマンでも買える譲渡価格の企業もあるのです。

個人で買えるM&A案件の探し方

では、実際に個人で企業を買収することを考えた場合、買収先となる企業はどうやって探せばよいのでしょうか。主な方法として挙げられるのは、事業引継ぎ支援センターなどの公的機関を活用する方法と、M&A仲介会社を利用をする方法です。

事業引継ぎ支援センターなどの公的機関を活用

中小企業基盤整備機構が運営する事業引継ぎ支援センターは、各都道府県に設置されています。事業承継のためのM&Aを実現するため、商工会議所と連携して、M&Aの相談や買い手側と売り手側のマッチング、サポートを行っています。買い手の対象は企業だけではなく、起業を目指す個人と後継者が不在の企業のマッチングも実施しているのが特徴です。また、スモールM&Aの中でも、従業員が10名以下の小規模な企業のM&Aの支援を行うケースが多いです。

基本的には事業引継ぎ支援センターの利用は無料ですが、事業引継ぎ支援センターを通じてM&A仲介会社を利用した場合や、士業の専門家によるサポートを受けた場合には実費が発生します。

M&A仲介会社を利用

M&A仲介会社は独自のネットワークをもとに、売り手と買い手のマッチングを行い、条件交渉など譲渡契約の成立に至るまでのサポートを行い、仲介手数料などを得ています。M&A仲介会社に相談すると、買収したい条件に合った企業の紹介を受けることが可能です。

ただし、M&A仲介会社によって、取り扱う業種や得意とする企業規模が異なります。大手のM&A仲介会社の中には、スモールM&Aを扱わない会社がある一方で、中小のM&A仲介会社の中には、幅広い規模の企業を取り扱う会社やスモールM&Aを専業とする会社もあります。個人M&Aを考えたら、スモールM&Aを取り扱うM&A仲介会社に相談しましょう。