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事業譲渡における消費税【課税資産や計算方法を解説!】

2020.12.03 M&A知識

会社が持つ一部の事業のみを売買したい場合には、事業譲渡のスキームでM&Aが実施されます。

そんな事業譲渡では、法人税等だけでなく消費税もかかる可能性があります。

日々の取引でも消費税の課税は発生しますが、事業譲渡の場合はいくつか特殊な部分があります。

そこで今回は、事業譲渡における消費税の取り扱いや計算方法、注意点をわかりやすくお伝えします。

事業譲渡における消費税とは

事業譲渡における消費税とは、資産の売買で発生する税金です。

事業譲渡でも機械設備や不動産などの資産を売買するため、消費税が生じます。

ただし、譲渡したすべての資産に消費税が生じるわけではありません。

事業譲渡では、消費税法に規定された「課税資産」にのみ消費税が課税されます。

また、納税するのは売り手企業の側ですが、実際に消費税を負担するのは買い手企業となります。

つまり売り手企業は、買い手企業から預かった消費税を支払う立場に過ぎないわけです。

課税資産と非課税資産の種類

課税資産と非課税資産の具体的な種類は、消費税法第4条、6条、および別表第1に記載されています。

この章では、消費税法に記載された課税資産と非課税資産を分かりやすく解説します。

課税資産

消費税が生じる課税資産には、主に以下の資産が該当します。

  • 土地以外の有形固定資産(建物や機械、車両、備品、船舶など)
  • 無形固定資産(特許権や商標権などの知的財産権、ソフトウェア、漁業権など)
  • 棚卸資産(在庫、仕掛品など)
  • 営業権(のれん)

特に重要なのが有形固定資産です。

有形固定資産は基本的に消費税が課税されますが、土地は例外的に非課税となるので注意しましょう。

非課税資産

一方で以下に挙げた非課税資産は、事業譲渡を行っても消費税がかかりません。

  • 土地
  • 有価証券(株式や債券、手形など)
  • 債権(売掛金や貸付金など)

参考:消費税法 e-Gov

事業譲渡における消費税の計算方法

上記までの説明を理解すれば、比較的容易に事業譲渡の消費税を計算することが可能です。

具体的には、以下2つのステップで消費税の金額を求めます。

Step1:譲渡した資産を課税資産と非課税資産に分類する

事業譲渡で売買した資産には、消費税が課税される資産と非課税の資産の両方が混在しています。

そこでまずは、売買対象となった資産を課税資産と非課税資産に分類する必要があります。

たとえば事業譲渡により、下記の資産を売買したとしましょう。

  • 機械:2,000万円
  • 土地:1億円
  • 営業権:3,000万円
  • 売掛金:500万円
  • 棚卸資産:2,000万円

上記のうち、消費税が課税される資産は「機械」、「営業権」、「棚卸資産」の3種類のみです。

したがって、事業譲渡で消費税が生じるのは「2,000万円(機械)+3,000万円(営業権)+2,000万円(棚卸資産) = 7,000万円」となります。

Step2:課税資産に消費税率をかける

課税資産と非課税資産を分類したら、あとは課税資産に消費税率(現行10%)をかけるだけで、納税する消費税の金額を求められます。

たとえば課税資産が7,000万円の場合、消費税の金額は以下のとおり求まります。

  • 消費税 = 7,000万円 × 10% =700万円

上記の消費税(700万円)に法人税等やその他税金(不動産取得税など)を加えることで、事業譲渡で最終的に支払う税額が算出されます。

消費税に関する注意点

事業譲渡を実施するに際しては、消費税に関していくつか注意点があります。

具体的には、下記3つの点に注意が必要です。

消費税率の変動リスクがある

2020年12月現在は10%ですが、将来的に消費税率が上昇する可能性はゼロとは言い切れません。

たとえば1億円の課税資産を譲渡した場合、消費税の金額は1億円×10%=1,000万円です。

しかし消費税率が12%に上昇した場合、消費税は1億円×12%=1,200万円となります。

事業譲渡では多額の資金が動くため、たった数%の増税でも支出は数十万円〜数百万円も増加するので注意しましょう。

のれん代が大きい事業譲渡であるほど、消費税の金額は増える

事業の売買金額には、貸借対照表に記載された資産とは別に、ノウハウやブランド力、人材といった無形資産の価値が「のれん代」として上乗せされます。

前述したとおり、のれん代は消費税が生じる資産です。

したがって、のれん代が大きい事業譲渡であるほど、相対的に消費税の金額は増えてしまいます。

ブランド力やノウハウなどの価値が高くつきそうな場合には、消費税が課税されない株式譲渡によるM&Aも検討するのがオススメです。

在庫の変動に伴い、当初の想定とは消費税額が大幅に変動する可能性がある

在庫(棚卸資産)の売買も含む事業譲渡では、契約締結日と実際の譲渡日で在庫の金額が大幅に変わってくるリスクがある点に注意が必要です。

契約締結の時点と比べて譲渡日の在庫が大幅に増えた場合、予想外に消費税の金額も増えてしまいます。

在庫の変動が激しい事業の譲渡では、在庫変動により消費税額が大きく変動するリスクを十分考慮しておきましょう。

どうしても不確実性が高いと感じたら、株式譲渡の手法を用いたり、譲渡する在庫の量をあらかじめ限定しておく方法が有効です。

事業譲渡における消費税のまとめ

今回お伝えした内容をまとめると、次のとおりです。

  • 事業譲渡では課税資産に対して消費税が生じる
  • 課税資産には、土地以外の有形固定資産や無形固定資産、棚卸資産、営業権(のれん)が含まれる
  • 事業譲渡の実施にあたっては、消費税率や在庫の変動リスクやのれん代の大きさに注意が必要である

ほとんどの事業譲渡では、消費税の課税が発生します。

他の税金と比べて計算自体は難しくないので、あらかじめ求め方や課税資産・非課税資産の分類は理解しておくと良いでしょう。

ただし、のれん代や在庫変動などにより消費税が予想外の金額となるケースもあるため、必要に応じて株式譲渡などのスキームを検討しておくのもオススメです。