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M&Aのスキームとは?一覧や選び方を解説!

2020.12.01 M&A知識

M&Aをおこなうとき、かならず決めるべき事柄の1つが「スキーム」です。

どのスキームを選ぶかによって、得られるメリットや注意すべきデメリットは異なるため、適当にスキームを選ぶと後悔する恐れがあります。

今回の記事では、そんなM&Aスキームの概要や一覧、選び方をくわしく解説します。

M&Aスキームの概要

そもそもスキーム(scheme)とは、計画や仕組みと行った意味を持つ英単語です。

そこから転じて、M&Aスキームは「会社や事業の売買・合併で用いられる手法、またはその流れ」を意味します。

M&Aスキームの決定が重要である理由は、円滑かつトラブルなくM&Aを実施するためです。

M&Aのスキームには、株式の売買を行うものや、片方の会社がもう片方の会社を吸収するものなど、その種類は多岐に渡ります。

スキームによってM&Aのスキームが異なるため、必然的に得られるメリットや注意すべきデメリットにも違いが生じます。

言い換えると、場面や会社によって最適なスキームは変わるわけです。

不適切なスキームをつかってM&Aを行ってしまうと、当初の目的を達成できなかったり、M&Aを含めた経営戦略に狂いが生じかねません。

そのような事態を避けるためにも、M&Aスキーム選びは慎重に実施する必要があるのです。

M&Aスキームの一覧

M&Aスキームには、主に下記5つの手法があります。

この章では、それぞれの概要やメリット、デメリットを分かりやすく解説します。

特に、中小企業のM&Aで主流となっている「株式譲渡」と「事業譲渡」には注目です。

株式譲渡

株式譲渡とは、売り手会社が発行している株式を買い手に譲渡することで、経営権を移転するスキームです。

最大の特徴は、株主構成のみが変動し、権利義務の関係には何も変化が生じない点です。

「経営権を移転する」仕組みから、主に会社丸ごと売買するケースで用いられるスキームとなっています。

メリット

株式譲渡のスキームでM&Aを行う最大のメリットは、手続きの簡便さです。

他のスキームと異なり権利義務に変化が生じないため、債権者保護や特別決議といった面倒な手続きが不要です。

「譲渡制限株式の承認請求」や「株主名簿の書き換え」など、比較的かんたんな手続きのみで実施できるため、中小企業のM&Aでは好んで用いられています。

手続きの簡便さ以外では、主に以下のメリットを享受できます。

⑴売り手のメリット

  • 会社の全株式を売却することで、多額の利益を得られる
  • 後継者が親族や社内にいない企業でも、第三者に株式を譲渡する形で事業承継を果たせる
  • M&A後も会社の独立性を保つことが可能

⑵買い手のメリット

  • 面倒な手続きを経ずに、簡単に会社丸ごと買収できる(権利義務の面倒な移転手続きが不要)
  • 一定数以上の株式取得により、M&Aに反対する少数株主を強制的に排除可能

デメリット

一方でこのスキームを使う際には、以下に挙げたデメリットに注意を要します。

⑴売り手のデメリット

  • 基本的に経営権を失ってしまう(経営者としての地位を失う)

⑵買い手のデメリット

  • 不要な事業や資産、簿外債務を引き継ぐリスクがある
  • 売り手企業の法人格が残る関係上、自社とのシナジー効果を発揮しにくい

関連記事:M&Aにおける株式譲渡とは?手続きや税金についても解説

事業譲渡

事業譲渡とは、組織として一体となった事業の一部または全部を売買するM&Aスキームです。

単純な資産の売買とは異なり、ノウハウや技術力、販売網といった無形資産も引き継がれる点が、事業譲渡が持つ最大の特徴です。

その名の通り、主に会社丸ごとではなく一部の事業のみを売買するケースで用いられています。

メリット

事業譲渡では、売買対象となる資産や権利、義務などを個別で指定することが可能です。その仕組みにより、売り手と買い手は下記のメリットを享受できます。

⑴売り手のメリット

  • 不採算事業を売却することで、本業に集中できるようになる
  • 事業の売却により、新規事業や主力事業に必要な資金を調達できる

⑵買い手のメリット

  • 不要な事業や資産、簿外債務を取り込まずに済む
  • 必要な事業のみ買収するので、買収資金に無駄が生じない

デメリット

事業譲渡で注意すべきデメリットは次の通りです。

⑴売り手のデメリット

  • 原則20年間の競業避止義務を負う(同一市町村および隣接市町村で同じ事業を行えない)
  • 手続きが煩雑であるため、M&Aを終えるまでに時間がかかる
  • 会社が対価を受け取るため、株主は利益を得られない

⑵買い手のデメリット

  • 取引先や従業員との契約を一つひとつ結び直す必要がある
  • 登録免許税や不動産取得税の負担が重い

その他のM&Aスキーム

中小企業が行うM&Aの大半は、上記でお伝えした株式譲渡または事業譲渡のスキームで行われます。

ただしM&Aスキームは他にもたくさんあります。

ここでは、その他のM&Aスキームについて簡単にご説明します。

会社分割

会社分割とは、一部の事業のみを切り離し、他の会社に引き継がせるスキームです。

主に、グループ内再編や事業承継を目的に活用されます。

合併

合併とは、片方の会社の法人格を消滅させ、消滅した会社が有していたすべての権利義務を他の会社に承継するスキームです。

主に、グループ内再編や持株会社の設立を目的に活用されます。

株式交換・株式移転

株式交換とは、既存する2つの会社が株式を交換するスキームです。一方で株式移転は、既存の会社と新しく設立する会社が株式を交換するスキームです。

株式交換は特定の相手を完全子会社化する目的で、株式移転は持株会社の設立を目的に活用されるケースが多いです。

M&Aスキームの選び方

どのM&Aスキームを選ぶかによって得られるメリット・デメリットは異なるため、どのスキームを選ぶべきか悩む方は少なくありません。

M&Aスキームは、下記3つのポイントを踏まえて選ぶのがオススメです。

  • M&Aの目的
  • 手続きの簡便さを重視するかどうか
  • 売買金額の大きさを重視するかどうか

もっとも重要なのは、M&Aの目的です。なぜなら、目的によって最適なM&Aスキームは異なるからです。

たとえば会社ごと売買したいならば株式譲渡、一部のみを売買したいならば事業譲渡、完全子会社を作りたいならば株式交換がそれぞれ適しているでしょう。

また、手続きの簡便さを重視する度合いによっても、用いるべきM&Aスキームは変わってきます。

簡単かつスピーディーにM&Aを行いたいならば、株式譲渡のスキームが最適です。

そして、売買金額の大きさを重視する場合は、会社丸ごと売買する株式譲渡や株式交換、合併などのスキームが適しています。

M&Aスキームのまとめ

M&Aスキームは多岐に渡りますが、M&Aの目的や重視したいポイントを明確にすれば、自ずと最適なスキームは決まってきます。

したがって、スキームに関する知識を身に付けると同時に、M&Aの目的と重視したい部分もはっきり決めておきましょう。

どのスキームを用いるべきか悩んだ際には、ぜひお気軽にご相談ください。

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