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事業譲渡の手続き【流れを分かりやすく解説】

2020.12.02 M&A知識

会社が営む事業の一部のみを売買するケースでは、事業譲渡の手法を使ってM&Aが行われます。

比較的カンタンな株式譲渡と比べて、事業譲渡の手続きは複雑です。

そこで今回は、一般的な中小企業が事業譲渡を実施する場合の手続きを流れに沿って解説します。

※公正取引委員会への届出や臨時報告書の提出といった手続きは、中小企業によるスモールM&Aでは不必要である場合が多いため割愛します。

M&Aの検討および準備

まず初めに、事業譲渡の実施に向けて検討や準備を実施します。

具体的には、事業譲渡を実施する目的やスケジュール、希望する交渉相手や金額などを考えます。

あらかじめ上記の項目を明確化しておけば、スムーズに事業譲渡の手続きを進めやすくなります。

また、M&Aのマッチングや交渉・契約のサポートを行ってくれる仲介会社を選ぶのも重要です。

仲介会社にはM&Aのプロである専門家(税理士や公認会計士など)が在籍しているため、質の高いサポートを受けることができます。

また、豊富なネットワークを有しているので、スムーズにM&Aの相手候補を見つけられます。

仲介会社によって、手数料体系や得意とする分野などは異なるので、複数の会社を比較・検討した上で依頼しましょう。

関連記事:M&A仲介会社とは?役割や手数料、比較するポイントを徹底解説!

売り手・買い手同士による面談・交渉

仲介会社と契約したら、仲介会社の協力を得ながら売り手または買い手の候補を探します。

無事候補が見つかったら、まずは経営者同士で面談を実施します。

経営者同士の面談(トップ面談)では、主に経営理念や価値観などの部分を確認し合います。

価値観や考え方の面で理解し合えたら、いよいよ条件面の交渉を実施します。

条件面の交渉では、事業譲渡の価格や従業員の処遇、今後のスケジュールなどを取り決めます。

譲渡価格に関しては、双方にとって納得できる金額となるように、M&Aアドバイザーが算定した企業価値をベースに決定するのが一般的です。

売り手と買い手の間で条件面に関して大体合意したら、基本合意書を作成し、決定した内容を文書にします。

デューデリジェンスの実施

基本合意書を締結したら、売り手企業に対する「デューデリジェンス」が実施されます。

デューデリジェンスとは、会計や税務、法律などの観点から売り手企業を分析するプロセスです。

デューデリジェンスを実施することで、売り手企業が持つリスクなどを見極めることが可能となります。

デューデリジェンスの結果次第では、基本合意した条件(譲渡価格など)に変更が生じる場合もあります。

事業譲渡契約の締結

デューデリジェンスの実施後、売り手と買い手の間で事業譲渡に関する条件に関して最終的な交渉が行われます。

この交渉で双方が合意したら、事業譲渡契約を正式に締結します。

事業譲渡契約書には、主に以下の内容を盛り込みます。

  • 譲渡する事業(権利義務)の内容
  • 事業譲渡の実行日
  • 譲渡金額と支払い方法
  • 譲渡財産の引き渡し時期
  • 社員の処遇
  • 競業避止義務
  • 善管注意義務
  • 表明保証
  • 事情が変更した場合の契約解除

契約書に記載する内容は法律で決まっているわけではないため、必要に応じて項目を追加・削除できます。

株主への通知・公告

次に、株主への通知・公告を行います。

会社法第469条では、事業譲渡を行う会社は、効力が発生する日付の20日前までに、事業譲渡を実施する旨を株主に通知する必要があると規定しています。

ただし、公開会社による事業譲渡や、すでに特別決議によって事業譲渡契約に関する承認を受けているケースでは、通知の代わりに公告で済ませることが認められています。

株主総会の特別決議

会社法第467条の規定により、主に以下のケースに該当する事業譲渡では、効力発生日の前日までに株主総会の特別決議により、事業譲渡を実施する旨を承認してもらう必要があります。

  • 事業の全部譲渡
  • 重要な一部の譲渡
  • 事業の全部譲受け

なお「重要な一部の譲渡」とは、譲渡する資産の帳簿価額が、売り手企業の総資産額の5分の1を超える場合の事業譲渡を意味します。

つまり、売り手は事業全部を譲渡したり、一定以上の事業を譲渡した場合にのみ特別決議が必要となるわけです。

ただし上記の規定に関係なく、簡易事業譲渡や略式事業譲渡に該当する場合は特別決議が不要となります。

※簡易事業譲渡と略式事業譲渡

  • 簡易事業譲渡:譲渡する資産の帳簿価額が、売り手企業の総資産の20%を超えない事業譲渡
  • 略式事業譲渡:契約相手が特別支配会社である事業譲渡

反対株主の買取請求

会社法第469条により、事業譲渡に反対する株主には、保有している株式を買い取るように会社側に請求する権利が認められています。

反対する株主から買取請求を受けた場合、会社側では公正な価格によりその株式を買い取る必要があります。

基本的には、効力発生日から60日以内に買い取り対価を反対株主に支払わなくてはいけません。

財産や契約の名義変更手続き

株式譲渡によるM&Aでは、株主が変わるだけなので、各種の権利義務は自動的に買い手側に引き継がれます。

一方で事業譲渡では、買い手側にて引き継ぎたい財産や契約について、個別に引き継ぎを行う必要があります。

引き継ぐ財産や契約は主に次のとおりです。

  • 従業員との雇用契約
  • 取引先との契約
  • 各種資産(機械設備や不動産、車両などの名義)
  • 知的財産権(特許や商標など)

たとえば雇用契約ならば、一人ひとりと新たに買い手側で契約を結び直します。また不動産の名義に関しては、法務局で所有権の移転登記を実施しなくてはいけません。

なお許認可に関しては、事業譲渡で引き継ぐことはできません。

したがって、許認可が必要な事業を引き継ぐ場合には、あらかじめ許認可を取得しておく必要があります。

参考:会社法 e-Gov

事業譲渡の手続きまとめ

事業譲渡では、株主総会の特別決議や財産・契約の名義変更手続きなど、株式譲渡と比べて面倒な手続きが多いです。

時間も労力も相対的に多いため、事業譲渡を行う際は余裕を持ったスケジュールを設定しておきましょう。

事業譲渡によるM&Aを行いたい方は、ぜひお気軽に弊社にお問い合わせください。