会社売却の価格はどう決まる?価格算定の方法も解説!

2020.08.17 会社・事業を売る

会社を売る経営者にとって、少しでも高い価格で会社売却するのは重要な課題の一つです。

とはいえ、会社売却の価格が決まるプロセスや基準を知らなければ、どうやったら高い価格で売却できるかを判断できません。

そこで今回は、会社売却の価格が決まる基準(プロセス)や高値で売却する方法を解説します。

会社売却の価格はどのように決まるのか?

はじめに、会社売却の価格がどのように決まるのかに関して、実務的な視点からお伝えします。

最終的には買い手の交渉次第

そもそも会社売却(M&A)は、買い手の同意があってはじめて実施できます。

そのため、自社の希望や相手の希望をすり合わせし、最終的にお互いが同意できた金額が会社売却の価格となります。

買い手の希望価格がどうしても受け入れられなければ、交渉は白紙となり会社売却は実現できません。

反対に買い手の希望次第では、相場や後述する企業価値と比べて、圧倒的に高い価格で会社売却できる可能性もあります。

会社売却の価格には、明確な正解がないという点を理解しておきましょう。

企業価値やデューデリジェンスの結果が主な算定基準となる

前項でお伝えした通り、会社売却の価格は交渉で決まります。

とはいえ、売り手は「なるべく高く売却したい」と考える一方で、買い手は「なるべく安く買いたい」と考えます。

お互いの利害が真正面からぶつかるため、交渉は平行線となる可能性が高いです。

そこでM&Aの実務では、企業価値やデューデリジェンスの結果を基準に交渉を進めるケースが大半です。

企業価値とは売り手企業の価値を金銭的に表したものであり、将来性や財務状況などあらゆる視点から算出します。

一方でデューデリジェンスとは、売り手企業の潜在的なリスクや成長性などを詳細に分析する実務です。

企業価値やデューデリジェンスの結果には客観性や合理性があるため、基準にすることでお互いが納得できる価格で会社売却を行えます。

会社売却の基礎となる「企業価値」の算定方法

会社売却の際に参考とする企業価値は、主に下記3つの方法で算定できます。

それぞれメリットやデメリット、適した場面は異なるため、ご自身のケースに合う方法で企業価値を算定するのが重要です。

時価純資産価額法

時価純資産価額法とは、時価換算した資産から負債を差し引くことで算出する時価純資産を基準に、企業価値を算定する方法です。

資産の時価換算とは、売掛金から回収不能額を差し引くなどして、現実に照らした場合に妥当な金額に換算することです。

会社売却の実務では、時価純資産に3〜5年分の営業利益を足した金額を企業価値としています。

財務諸表の数値を基準に用いているため、比較的簡単かつ客観的に企業価値を求められます。

ただし、企業の将来性や市場の動向を考慮できないというデメリットもあります。

DCF法

DCF法とは、今後事業で得られるフリーキャッシュフロー(FCF)を現在価値に割り引いた上で、企業価値を計算する方法です。

将来的な収益性を考慮できるため、大企業から設立したばかりのベンチャー企業まで、あらゆる企業の会社売却で活用できます。

一方で、事業計画書の内容に基づいて計算するため、売り手の恣意に影響されやすく、客観的な企業価値を求めるのが困難というデメリットもあります。

また、計算には会計やファイナンスの高度な知識を要するため、手軽に活用できない点もデメリットです。

具体的に、DCF法では企業価値を下記の手順で算出します。

1.今後3〜5年分のFCFを算定

2.割引率(WACC)を設定

3.継続価値を算出

4.FCFと継続価値を現在価値に割り引く

5.FCFと継続価値を合計し、事業価値を計算

6.非事業資産の時価を算定

7.事業価値に非事業資産を足して企業価値を計算

マルチプル法

マルチプル法(類似会社比較法)とは、事業内容が自社と類似する上場企業を選定し、その企業の株価指標を基準にして企業価値を求める方法です。

自社と事業内容が類似する企業を基準にするため、客観性の高い企業価値を算定可能です。

ただし裏を返すと、類似する企業がいなければマルチプル法を活用できないため、他の方法を使わなくてはいけません。

マルチプル法では、主にEV/EBITDA倍率という指標を活用するのが一般的です。

EV/EBITDA倍率とは、事業価値(EV)がEBITDA(税引き前当期純利益に特別損益や支払利息、減価償却費を加算した利益)の何倍かを表す指標です。

EV/EBITDA倍率を用いる場合、下記の手順で求めます。

1.類似する上場企業のEV/EBITDA倍率を求める

2.類似企業のEV/EBITDA倍率と自社のEBITDAを掛ける

3.自社のEVに非事業資産を足し合わせて企業価値を求める

より詳しく知りたい方は、下記サイトの記事をご参照ください。

参照:類似会社比較法 レコフ

会社売却の価格を高めるには

会社売却を成功させるには、少しでも高い価格での売却を成立させるのが重要です。

会社売却の価格を高める上では、下記2つの方法が有効です。

競争優位性の高い経営資源や事業を持つ

会社売却の価格を高める上で、最も有効なのは競争優位性の高い経営資源や事業を持つことです。

「競争優位性が高い経営資源・事業」とは、希少性が高かったり、収益性が高い経営資源や事業を意味します。

たとえば特許技術や他の企業が持っていないノウハウ、収益性や将来性の高い事業モデルなどが該当します。

会社売却では、財務諸表のデータのみならず、目に見えないノウハウや技術などの無形資産も、価格を算定する上で考慮されます。

そのため、競争優位性の高い経営資源や事業を持っていれば、より高い価格で会社売却できる可能性が高まるのです。

豊富なネットワークを持つ仲介会社に相談する

どれほど優れた経営資源や事業を持っていても、それを正当に評価できる(事業で活かせる)買い手を見つけないと、高い価格での会社売却は果たせません。

したがって、少しでも高い価格で会社売却するには、買い手との豊富なネットワークを持つ仲介会社に相談する必要があります。

たとえば特定業種に特化している仲介会社や、公認会計士や税理士などの専門家が在籍している仲介会社、実績が豊富な仲介会社であれば、自社に適した買い手を見つけてもらえる可能性が高いでしょう。

まとめ

会社売却の価格は、企業価値やデューデリジェンスの結果を基に、売り手と買い手が交渉を行うことで決定します。

あらかじめ企業価値を算定しておけば、大体どのくらいの価格で会社売却できるか把握できるでしょう。

現状の会社売却価格に納得できない場合は、経営資源を強化したり、仲介会社選びを重視すると良いでしょう。

そうすれば、より高値での会社売却を果たせる可能性が高まります。

参考:会社売却とは?方法や手続きの流れ、価格の相場を徹底解説!