ベンチャー企業がM&Aでエクジットするケースが増えているのはなぜ?

2019.03.22 会社・事業を売る
ビル群

IPOを目指すベンチャー企業は少なくありませんが、エクジットの方法にはM&Aという選択肢もあり、最近は増加傾向にあります。IPOを目指した動きを行っていた企業が、M&Aによってエクジットを果たすケースもあります。なぜ、ベンチャー企業がM&Aでエクジットするケースが増えているのか、理由などを解説していきます。

IPOはハードルが高い

株価

ベンチャー企業がIPOではなく、M&Aでエクジットをするケースが増加している理由として挙げられるのは、IPOのハードルの高さです。IPOを実現できる企業はごく限られており、新興市場のマザーズにも、厳格な上場基準が設けられています。

IPOを実現できる企業はごくわずか

2018年の1年間にIPOを実現した企業の数は、東証一部7社、東証二部5社、マザーズ63社、ジャスダック14社、アンビシャス1社の90社です。ここ数年の新規上場企業数は、2015年は92社、2016年は83社、2017年は90社であったことから、毎年、IPOを果たしているのは90社ほどといえます。

日本には約380万社の企業がありますが、上場企業の数は東証だけで3,600社ほどで、全国の証券取引所を合わせても4,000社には及びません。IPOを実現できる企業はごくわずかなのです。

マザーズの上場基準は?

上場するためには、市場ごとに決められた基準をクリアしたうえで、上場審査に通らなければなりません。東証の場合、東証一部の上場基準が最も厳しく、東証二部が続きますが、新興市場のマザーズにも、やや緩やかとはいえ厳格な基準が設けられています。

マザーズの形式要件といわれる数値的な上場基準を見ていくと、上場時の見込みで、時価総額が10億円以上で、流通株式数が2,000単位以上で流通株式の時価総額が5億円以上、流通株式比率が25%以上になることが条件です。また、株主数は200人以上になることが見込まれ、500単位以上は公募を行うことも求められます。さらに、1年以上前から取締役会を設置したうえで、継続的に事業を営んでいることも条件になります。

また、上場申請における有価証券報告書の監査報告書等が無限定適正であり、上記監査報告書または四半期レビュー報告書の財務諸表等が記載される有価証券報告書等に虚偽記載がないといった条件もあります。こうした形式基準は一つでもクリアできないと上場することはできません。さらに、実質基準ではコーポレートガバナンスや内部管理体制が企業の規模や成熟度に応じて求められています。

こうした上場基準をクリアするためには、上場準備に費用もコストも掛かりますが、必ずしも基準をクリアして上場できるとは限りません。そのため、IPOではなく、現実的な手法として、M&Aでエクジットをするケースが増加しているのです。M&Aによるエクジットでも、オーナー経営者は創業者利益を得ることができます。

M&Aでエグジットするメリット

カレンダーで打ち合わせ

M&Aでエクジットをするケースが増えているのは、時間的なメリットがあることも要因です。

迅速に短期間でエクジットすることが可能

IPOを実現するためには、監査法人による監査を受け、監査法人や主幹事証券会社、あるいはIPOコンサルタント会社から指導を受けたうえで、社内体制を整えていくことが必要です。内部管理体制やコーポレートガバナンスを強化していくことが求められます。IPOのために人員やコストを割かなければならず、上場の準備には時間を要します。また、上場準備のみならず、上場後も一定の費用が掛かります。(株式上場までのスケジュールや流れ、費用などについては、『株式上場までの流れとは?審査基準やスケジュールは?』を参照ください。)

一方、M&Aによるエクジットであれば、決められた条件ありません。自社に興味を示す買い手側企業があり、条件が合意すれば、実行することが可能です。短期間でのエクジットを実現しやすいことから、既にアメリカではM&Aによってエクジットする手法が浸透しています。オーナー経営者は、M&Aによるエクジットで得た資金を元手に新たなビジネスを展開するといったケースが多いのです。

ベンチャー企業を買う企業側の理由とは

ベンチャー企業がM&Aによってエクジットするケースが増えているのには、当然のことながら、ベンチャー企業を買いたいというニーズが高いことも要因です。主に新規事業の獲得手段にすることや人材確保の面から、ベンチャー企業を買収するケースが増えています。

新規事業の獲得手段

新規事業へ参入する際に、一から事業を立ち上げるのには時間が掛かるため、M&Aは「時間を買う」ともいわれています。また、新規事業を立ち上げは時間や費用をかけても、必ずしもうまくいくとは限らず、リスクを伴います。そこで、ある程度、お金を得られる仕組みができあがっている状態で買収すれば、新規事業の参入に掛かる時間を短縮するとともに、リスクを抑えられるのです。

また、ベンチャー企業の買収は買い手企業にとって、これまでになかった革新的な商品やサービスを手に入れられるという側面もあります。

人材確保の側面も

少子高齢化や景気の上向き基調により、積極的な採用を行う企業が多く、若手人材を中心とした人手不足が深刻化しています。中でも、IT系のエンジニアは人材の奪い合いとなっているため、新規事業のために一からIT系の人材を揃えていくことは難しい状況となっています。そのため、M&Aは人材確保のための手段としても活発化しているのです。

まとめ

かつては乗っ取りのイメージが強かったM&Aですが、実際には日本のM&Aは友好的なものがほとんどです。最近では、M&Aは後継者難による事業承継問題の解決策としても注目されていますが、歴史ある企業に限らず、ベンチャー企業のエグジットの手法としても、M&Aを選択するケースが増えてきました。

ただし、自社で買い手企業をみつけるのは難しく、自社と相手先企業で直接、諸条件をとりまとめるのもハードルが高いです。M&Aによるエクジットを考えたら、まずはM&A仲介会社に相談してみましょう。