会社売却の利益とは?計算方法を徹底解説

2020.08.18 会社・事業を売る

会社売却を目指す上で、どのくらいの利益を得られるかは最も気になる部分の一つです。

ご自身の手で育てた会社を手放す以上、納得できるだけの利益を得たいと思うのは普通のことです。

そこで今回は、会社売却で得られる利益の計算方法を分かりやすく解説します。

会社売却における「利益」とは

会計の世界において、利益とは「売上」から「費用」を差し引いた金額を意味します。

つまり会社売却では、売却価格から会社売却にかかった仲介手数料などの費用を差し引くことで、手元に残る利益を計算できます。

  • 会社売却で得られる利益 = 売上(売却価格) − 会社売却に要した費用

なお会社売却で獲得した利益には、所得税や法人税などの税金が課税されます。

利益からこうした税金を差し引いた金額が、最終的な手取り(税引後利益)です。

  • 会社売却で最終的に残る手取り(税引後利益) = 利益 − 各種税金

しばしば、「会社売却の利益 = 売却価格」という間違えた理解をする人がいます。

ですが実際には、「売却価格から費用を差し引いた金額」または「売却価格から費用と税金を差し引いた金額」が利益ですので注意しましょう。

会社売却の売上はどのように決まる?

会社売却の利益を計算するには、まずは売上(売却価格)を知る必要があります。

最終的には売り手・買い手双方の交渉で決まるものの、基本的には売り手企業の金銭的な価値(企業価値)をベースに、価格が検討されます。

売上算定のベースとなる企業価値は、「コストアプローチ」、「マーケットアプローチ」、「インカムアプローチ」のいずれかの方法で算定します。

コストアプローチ

コストアプローチとは、純資産(資産−負債)の金額を基準に企業価値を求める方法です。

主に、「簿価純資産法」と「時価純資産法」の2種類の手法があります。資産や負債の現状を正確に反映している点で、時価純資産法の方が精度は高いです。

会計上のルールに則った財務諸表の数字を用いるため、客観的な企業価値を求められます。また、3つあるアプローチの中で一番簡単に活用できます。

そのため、社歴の長い中小企業を中心に、多くの会社売却で活用されています。

ただし将来性や市場の動向を加味しないため、成長が期待されるベンチャー企業や、市場自体が成長しているケースにはあまり適していません。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、市場(競合他社)を基準に企業価値を求める方法です。

具体的な手法としては、「市場株価法」や「類似会社比較法(マルチプル法)」などがあります。

マーケットアプローチでは、市場における過去の株価や事業内容が類似する上場企業の株価指標など、客観性の高い基準を使って企業価値を求めます。

そのため、コストアプローチと同等かそれ以上の客観性を担保できます。また、市場の成長度合いや将来性などもある程度加味した上で、企業価値を求めることが可能です。

ただし、市場株価法は上場企業のみ、マルチプル法は類似する企業がないと精度が下がるなど、使える場面に限りが出やすいです。

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、将来的な収益性を根拠に企業価値を求める方法です。

基本的には、将来得られるキャッシュフローの現在価値をベースにした「DCF法」が多く活用されています。それ以外には、「収益還元法」や「配当還元法」などの手法もあります。

今後得られるキャッシュフローや収益、配当などを価値算定の根拠にするため、3つあるアプローチの中で最も将来性を加味できます。

そのため、誰もが知っている大企業はもちろん、設立から間もない有力ベンチャー企業の会社売却でも活用可能です。

ただし事業計画書の内容をもとに収益性を判断するため、売り手の主観が入りやすい点がデメリットとなります。

参考:M&Aの相場とは?売買価格の決め方を徹底解説

会社売却の最終的な利益(手取り)はM&A手法でも変わる

会社売却の利益は、企業価値などを基に決定した売却価格から、各種の費用を引いた金額、または費用と税金を引いた金額となります。

ここで一点注意していただきたいのは、使用するM&Aの手法によって、最終的な手取り(税引後利益)が異なる点です。

なぜなら、M&Aの手法ごとに課税される税金の種類や計算方法が異なるためです。

今回は主要なM&A手法である「株式譲渡」と「事業譲渡」について、手取り(税引後利益)の計算方法を解説します。

株式譲渡における会社売却の利益

株式譲渡では、売り手企業の株主(経営者)が得た譲渡所得(会社売却から取得費と譲渡費用を引いた利益)に対して、合計15.315%の所得税と5%の住民税が課税されます。

※売り手が法人の場合は異なりますが、あまりないケースなので割愛します。

取得費とは、会社設立時にかかった費用です。具体的には出資した資本金の金額となりますが、売却価格の5%を「概算取得費」として代用することも認められています。

一方で譲渡費用とは、仲介会社への手数料など、会社売却の手続きにかかった費用です。

以上を踏まえて、株式譲渡で会社売却を行った場合の手取り(税引後利益)は、下記の式で表せます。

  • 税引後利益 = 売却価格 −  譲渡費用 − (売却価格 − 取得費・譲渡費用) × 20.315%

たとえば売却価格が1億円、取得費が1,000万円、譲渡費用が2,000万円の場合、会社売却で最終的に残る利益は下記の通り算出できます。

  • 税引後利益 = 1億円 − 2,000万円 − (1億円 − 3,000万円) × 20.315% = 6,577万8,800円

事業譲渡における会社売却の利益

基本的に会社売却は株式譲渡によって行われますが、たまに事業譲渡を用いるケースもあります。

そこで、事業譲渡で会社売却を行った場合の利益に関して簡単にお伝えします。

事業譲渡における最終的な利益は、売却価格から法人税等と消費税を差し引いた金額となります。

法人税等(法人税、法人事業税、法人住民税)に関しては、譲渡益に30%〜40%の税率をかけることで計算します。

ここで注意すべきは、譲渡益と株式譲渡における譲渡所得では、計算方法が大きく異なる点です。

事業譲渡における譲渡益は、売却価格から譲渡した資産の簿価を引いて求めます。

次に消費税に関しては、課税資産(土地などの非課税資産を除いた部分)に対して現行税率をかけた金額となります。

以上を踏まえると、事業譲渡における会社売却の税引後利益は下記の計算式で表せます。

  • 法人税等 = 売却価格 − 譲渡資産(簿価) × 30〜40%
  • 消費税 = 課税資産 × 10%
  • 税引後利益 = 売却価格 − 法人税等 − 消費税

たとえば売却価格が1億円、法人税等が2,500万円、消費税が500万円の場合、税引後利益は7,000万円となります。

会社売却の利益に関するまとめ

今回ご説明したとおり、会社売却の利益は「売却価格−費用−税金」で計算します。

そんな会社売却の利益は、下記2つの要素によって大きく変動します。

  • 売却価格の算出方法
  • 用いるM&Aの手法

したがって、少しでも多くの利益を手元に残すには、自社にとって有利な売却価格の算出方法とM&Aの手法を見つけ出すことが重要です。

利益を多く残す上でどの方法が最適かはケースバイケースなので、あらゆるケースでシミュレーションしたり、会社売却の専門家である仲介会社やアドバイザーに相談するのがベストです。

弊社でも会社売却に関する相談を無料で承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

参考:会社売却とは?方法や手続きの流れ、価格の相場を徹底解説!