会社売却の方法【M&Aのプロが徹底解説】

2020.08.10 会社・事業を売る

いざ「会社売却しよう!」と思い立っても、ほとんどの方はどのような方法で進めれば良いか分からないと思います。

そこで今回は、はじめて会社売却を行う経営者の方に向けて、「会社を売却する際に用いるM&Aの方法」と「会社の売却を思い立ってから手続きを終えるまでの方法」について、それぞれ分かりやすく解説します。

後継者不足で止むを得ず会社売却する方や、まとまった売却利益を得たいベンチャー経営者の方は必見です。

会社売却で用いられるM&Aの方法

会社売却では、主に「株式譲渡」または「事業譲渡」と呼ばれる方法が用いられます。

それぞれメリットとデメリットは異なるため、用いるべき企業や場面は異なります。

この章では、株式譲渡と事業譲渡のメリットとデメリットをそれぞれご紹介しますので、どちらの方法が自社に適しているか参考にしていただければと思います。

株式譲渡

株式譲渡とは、自社が発行している全株式を買い手に渡すことで、会社売却を実現する方法です。

株式会社では、議決権(株式)の保有割合が大きい人(またはグループ)ほど、会社の意思決定に与える権限や影響が大きくなります。

株式譲渡では、この仕組みを応用し、全株式を第三者に移転させ、実質的に会社の経営権を譲渡するわけです。

メリット

株式譲渡の持つ最大のメリットは、簡単な手続きのみで会社売却を実現できる点です。

株式譲渡では会社の経営陣(株主)が変わるだけで、権利や義務関係には一切の変動がありません。

そのため、株式譲渡の請求・承認と契約締結、株主名簿の書き換えのみで会社売却を実行できます。

取引先や従業員との再契約や特別決議、債権者保護といった面倒な手続きは必要ありません。

数あるM&A方法の中でも圧倒的に手続きが簡便であるため、中小企業の会社売却ではもっとも活用されています。

デメリット

売り手視点から見た場合、この方法にはほとんどデメリットはありません。

強いて言うならば、経営者としての権利(経営権)を一切失ってしまう点がデメリットとなります。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社内にある事業の一部または全てを買い手に譲渡する方法です。

株式譲渡とは異なり、あくまで事業の資産や権利・義務を譲渡する方法であるため、経営権は手元に残ります。

したがって、厳密には会社売却の方法とは呼べません。

ただし、買い手が事業譲渡を望む場合や経営権を手元に残したい場合などには、すべての事業を売却する形で実質的に会社売却を果たすことが可能です。

また、個人事業主は株式を発行していないため、経営をリタイアしたい場合には事業譲渡を活用することとなります。

メリット

手元に経営権を残せるため、今後いずれ会社経営を再開できる点が売り手にとってメリットとなります。

一度すべての事業を売却し、売却で得られた資金を使って新しいビジネスを始めたりもできるでしょう。

また事業譲渡は、買い手側が引き継ぎたい資産や権利のみを指定することで、簿外債務などのリスクを引き継がずに済む方法です。

そのため、簿外債務などを巡り会社売却後にトラブルに発展しにくく、安心して経営からリタイアできます。

デメリット

株式譲渡と比べて、M&Aを完了させるまでの手続きが複雑かつ面倒となる点が、この方法の持つ最大のデメリットです。

一部のケースを除いて特別決議が必要となったり、契約を一つ一つ引き継ぐ必要が出てくるため非常に面倒です。

また、この方法で会社売却を行うと、売り手には原則20年の競業避止義務が課されます。

買い手との間で特約を結ばない限り、同一市町村および隣接する市町村にて、20年間は売却した事業と同じ分野でビジネスを行えなくなります。

今後も会社を経営したい方は、競業避止義務には十分注意しなくてはいけません。

参考:M&Aの種類とは?分け方や各種類の特徴を徹底解説!

会社売却の手続きを進める方法

会社売却を行うにあたっては、用いるM&Aの方法だけでなく、手続きを進める具体的な方法も知っておく必要があります。

具体的には、下記5つのステップで会社売却の手続きは進めていきます。

ステップ1:M&Aの仲介会社との契約

本業を行いながら自社の買い手を探すのは困難なので、M&A仲介会社に売却先を探してもらうのが一般的です。

よって、まずは相手探しやその後の会社売却をサポートしてくれる仲介会社探しから始めます。

複数の業者間で手数料体系を比較し、なるべくサポートが豊富かつ安い仲介会社を選ぶのがオススメです。

ステップ2:提案資料の作成と買い手探し

仲介会社と無事契約したら、次は買い手に提案する自社資料の作成を行います。

自社の強みや財務状況、ビジネスモデルなどを基に、売り手企業の魅力を最大限に伝える資料を仲介会社が作成してくれます。

提案資料を作成したら、売り手企業の希望を基に仲介会社が買い手を探します。

ステップ3:買い手との条件交渉

買い手がM&Aに興味を持ってくれたら、具体的な条件交渉を行います。

一般的には、経営者同士の面談で経営理念やビジョンを共有した後に、買い手側から買収価格や用いるM&Aの方法などに関する希望をまとめた「意向表明書」が提出されます。

その意向表明書の内容を前提に、具体的な条件面での交渉が行われます。

会社売却を成功させるには、納得できる条件で売却することが重要ですが、買い手の希望もある程度汲み取らないと交渉は平行線となります。

どうしても譲れない条件と妥協できる条件を明確にした上で、条件交渉に臨むようにしましょう。

基本的な条件面で合意できれば、「基本合意書」を買い手との間で締結します。

ステップ4:デューデリジェンスの実施

基本合意書が締結されると、次は買い手がデューデリジェンスを実施するプロセスとなります。

デューデリジェンスとは、買い手が売り手企業の収益性や潜在的なリスクなどを、財務や法律、税務などあらゆる観点から詳細に分析することです。

会社売却を円滑に進めるために、買い手側が行うデューデリジェンスに対して、積極的かつ真摯に対応することが求められます。

ステップ5:最終契約とクロージング

デューデリジェンスの結果も踏まえた上で、最終的な条件交渉を行います。

そこで売り手と買い手の間で合意ができれば、M&Aの最終契約書を締結します。

最終契約書の正式名称は、用いるM&Aの方法によって異なります。たとえば株式譲渡ならば、「株式譲渡契約書」が用いられます。

最終契約書を締結したら、クロージング(資産の受け渡しや売買代金の支払いなど)を行います。

クロージングが完了すれば、正式に会社売却の手続きは終了です。

参考:M&Aの流れ【検討段階からの手続きを徹底解説】

会社売却の方法まとめ

会社売却では、契約書の作成やデューデリジェンスなど専門知識が求められる業務をたくさんこなす必要があります。

また、用いるM&Aの方法次第でも、行うべき手続きは若干変わってきます。

したがって、スムーズに会社売却を行うには、M&Aの専門知識を持つ仲介会社にサポートしてもらうのがベストです。

専門家である仲介会社にサポートして貰えば、会社売却の方法を詳しく知らなくても、スムーズに手続きを進められます。

弊社でも会社売却を行いたい方からの相談を無料で承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

参考:会社売却とは?方法や手続きの流れ、価格の相場を徹底解説!