会社を売る金額はいくら?事業売却との違いや価格を決める方法を解説
2021.02.24 会社・事業を売る新規で会社や事業を売却する際には、企業価値を評価し、その金額をベースに売買の価格を決定するのが一般的です。
つまり企業価値を算出すれば、ある程度の相場は理解できるわけです。
しかし企業価値の算出に使用する方法は多く、状況や自分・買い手の希望なども考慮した上で最適なものを選択する必要があります。
そこで今回の記事では、会社を売る際の金額を求める基礎について、M&Aの専門家(アドバイザリー)として携わってきた複数の事例をもとにわかりやすく、かつ詳細にまとめて紹介します。
目次
事業の承継を迎えたタイミングで、事業の引き継ぎを目的に会社を売る事例が増えている
2020年の現在、日本にある多くの企業では後継者への事業の引き継ぎ、またはその準備を迎えています。
しかし一方で、経営における環境の先行き不安や過去から蓄積してきた負債の多さなどを理由に、最近は子供や社員・役員などの者に後継者の打診を断られるケースが多いです。
そのような現状において注目されているのが、事業承継を目的とした会社・事業の売却です。
会社や事業の売却では、雇用契約やノウハウなどの経営資源も含め、会社を丸ごと承継します。
今後も国内では経営者の高齢化は続くため、M&A(合併と買収)による事業承継のケースが少なくなる可能性は小さいでしょう。
むしろ今後は、製造や建設などの業種を中心に、事業承継の優良な選択肢として主流となる可能性が高いです。
廃業する事態を避けるためにも、会社を売る際の金額や手続き確認しておいて損はないでしょう。
会社を売る方法とは?事業譲渡との違いを解説
株式会社を売却する案件では、会社のオーナー(株主)が持つ株式を第三者である法人または個人に売却する手法が活用される傾向にあります。
この手法は株式譲渡と呼ばれ、税金の安さや手続きの簡単さが売り手の社長にとってメリットとなります。
一方で企業の中にある一部の事業のみを譲渡したい時は、事業譲渡と呼ばれる手法が用いられます。
事業譲渡は、大企業による選択と集中や個人事業主による事業承継で用いられるスキームです。
必要な部分のみを売買できるため、買い主は最低限の資金で買収を行えます。
ただし、手続きが大変である点がデメリットとなります。
また買い手側が不要な資産や簿外債務などを引き継ぐリスクがある点も注意を要します。
事業譲渡と株式譲渡では、手続きや手元に残る利益、期待できる利点などが大きく異なるので十分に気をつけましょう。
会社の売却で価格はどう決まる?流れや注意点、ポイントなどを紹介
会社の売却を行う際には、自社の価格がどのように決定するかを知ることが重要です。
あらかじめ価格の決まり方を把握しておけば、前もって課題に向けた対策を実施し、より高い値段で売れる可能性もあります。
もちろん、評価額はケースバイケースですので、以下では大体の流れをご説明します。
買収する側の企業との交渉で決まる
基本的には、買い手側との交渉で最終的な売買価格が決まります。
その過程では、財務の状況などを重視して企業価値を算出しますが、あくまで参考となる資料にすぎません。
たとえ税理士などのアドバイザーが客観的に算出した評価額が低くても、買い手がそれを参考に用いて検討しなければ、相場とは大きく異なる値段に決まることもあり得ます。
顧客や取引先などに価値があると、多くの買い手から人気が集まったり、高く売ることが成功しやすくなる
買い手が高い価値を見いだす要素を持っていることが、高い金額で会社を売るうえで大きな影響を与えるポイントとなります。
言い換えると、保有する経営資源によって会社を売る価格は変動するのです。
例えば下記に挙げた経営資源を豊富に持つ会社だと、買い手が投資する価値があると判断し、相場よりも高い額で売ることができるでしょう。
- 買い手からのニーズが大きい顧客や取引先との契約
- 特許などの権利
- 魅力のある不動産
- 自社で雇用している優秀な技術・スキルを持つ従業員(人材)の存在
- 将来性や市場のシェアが高い事業
- その他の他社よりも優れた強み
ただし、「たくさん存在する買い手の中から、自社の経営資源に強いニーズを持つ相手(後継者となる人の候補)を見つけること」は難しい戦略です。
高い金額での売却を成約させたいならば、なるべくプロによるM&Aのサービスを利用した上で、買い手探しや交渉に対応するのがおすすめです。
中小企業が企業価値を計算する方法の一覧
企業価値を計算する方法は、大きく「インカムアプローチ」、「マーケットアプローチ」、「コストアプローチ」という3つの種類に分類されます。
それぞれメリットやデメリット、特徴に違いがあるため、確実な手法の選び方はありません。
先にこれらの手法における概要を理解しておき、状況に応じてどの形がベストであるかを考えるようにしましょう。
インカムアプローチ(DCF法)のメリット・デメリット、特徴
インカムアプローチとは、売り手のビジネスが持つ収益(売上)を稼ぐ力をベースに企業価値を求める方法です。
さまざまな手法がありますが、特に多くの企業で利用されているのが「DCF法」です。
DCF法とは、事業計画から算定したキャッシュフローの現在価値の金額を基準に用いる方法です。
会社を売った後(将来)の収益力を考慮できる点がメリットであり、上場企業から赤字の会社、小さい規模のビジネスまで幅広い対象によい手法です。
ただし売り手が作成・提供する事業計画をベースに用いるため、売り手の恣意が入るリスクがある点がデメリットとなります。
客観性を高めるうえでも、できれば会計のノウハウ・専門の知識を持つ第三者(公認会計士など)に企業価値の算定を依頼したり、それとは別にデューデリジェンスを徹底することが重要です。
報酬を支払う必要はあるものの、客観的で信頼できる企業価値を求められるでしょう。
マーケットアプローチ(類似会社比較法や類似業種比較法など)のメリット・デメリット、特徴
マーケットアプローチとは、自社が属する業界やその市場を基準に会社の価額を求める方法です。
具体的には、市場における過去の平均株価を参照する市場株価法や、自社と状況が類似するM&Aの取引を参考にする類似取引比較法などがあります。
その中でも、特にメジャーなのが「類似会社比較法(マルチプル法)」です。
マルチプル法とは、自社と業種が近い(または同じ)会社の株価指標を参考に企業価値を求める手法です。
具体的には、EBITDAやPER、営業利益、等の倍率を用いて、会社を売るときに参考となる企業価値を求めます。
自社と事業内容が似ている会社を参考にするため、客観性が高い企業価値を計算結果から得ることが可能です。
言い換えると、誰が算定しても一定の金額に決まってくるのです。
ただし、ニッチな業種に属する企業の場合、比較できる大きな企業が見つかりにくい点がデメリットとなります。
以上より、マルチプル法は一般的にメジャーなビジネスを運営する会社向けの方法と言えます。
コストアプローチ(時価純資産法)のメリット・デメリット、特徴
コストアプローチは、貸借対照表に記載された純資産(資産−負債)の金額をベースに企業価値を求める方法です。
基本的には、時価に換算した純資産を用いる「時価純資産法」が活用されます。
貸借対照表さえ揃えれば良いため、迅速なスピードで企業価値をスムーズに求められます。
ただし、この方法では過去の実績を基準に用います。
そのため、成長が見込める会社を売るときには適していません(安くなってしまうからです)。
コストアプローチは、今後事業を継続する見込みがない企業や、業績が下降気味で倒産する危機の状態にある企業に用いるのが良いでしょう。
なお中小企業の会社売却では、時価純資産に営業権(営業利益の3〜5年分)を足した金額が、実際の売買価格の目安となるケースが多いです。
会社を売るときにかかる税金の算出・進め方
会社を売ると、所得税や住民税、法人税などの税金がかかりますので、最低限この点は覚えておきましょう。
どの手法を利用するかによって実際にかかる税金は変わってきますが、税金の求め方・手順はだいたい同じです(消費税はやや異なる)。
会社を売った際の税金は、売買代金から会社設立と売却にかかった費用を引いた金額(所得)に対して課税されます。
たとえば売却金額が1億円、設立に2,000万円、売却に1,000万円かかった場合、約7,000万円が税金の課税対象となります。
実際にはもう少し複雑な計算をするものの、基本的には「売却で得た売上からコストを引いた金額に税金がかかる」と思っていて問題ないでしょう。
ただし、会計の知識を有しない方が正確に計算したり節税を図ることは困難です。
したがって、できるだけ金融機関やM&Aの専門家にご相談し、支援を受けるようにしましょう。
会社を売る金額を知りたい方は、M&Aの実績がある専門家(仲介会社やアドバイザリー)にご相談を
今回のコラムでご紹介した情報を知っておけば、誰でも容易に自社を売ることでどのくらいの金額となるかを見通せるようになります。
ただしM&Aのプロから支援を受ければ、より正確かつ高い金額で会社を引き継げる可能性が高いです。
また専門家に無料で相談すれば、マッチングや交渉の仲介などをサポートしてもらえるため、納得いく条件で運営会社を売却しやすいです。
弊社のサービス(MAポート)でもM&Aのマッチングから成立まで総合して支援していますので、会社を売りたい方はぜひご利用を検討いただければ幸いです。
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