ホテルの売却案件が増加?物件の探し方について解説!
2021.05.23 会社・事業を買う新型コロナウィルスの影響で、リアル店舗を持つビジネスは苦境に立たされています。
ホテル事業もその内の一つです。
2020年以降、ホテルの倒産やホテルの売却などのニュースを見る機会が増えてきました。
今回は、ホテル業界の概要、ホテルの売却価格に影響を及ぼす事項、具体的なホテル売却事例、ホテル・旅館・ペンション等への投資方法を解説していきます。
日本のホテル市場
矢野経済研究所のレポートによると、2018年のホテル市場は2兆291億円、2019年は2兆1,468億円が見込まれています。
ホテルの数は現在の正確な数字は公表されていませんが、2005年時点のホテル数(旅館含む)を厚生労働省が公表しており、6万4,557か所(154万8,449室)です。
参考:
ホテル-旅館営業の施設数・客室数及び簡易宿所・下宿営業の施設数・許可・廃止・処分件数 平成17年度
ホテルの売却価格に与える事項
ホテルの売却価格に与える事項は、以下のとおりです。
- ホテルの財務状況(売上、利益、純資産など)
- ホテルのサービスレベル(食事や温泉付き、フロントの対応、設備など)
- ホテルの立地、アクセス
ホテルの財務状況(売上、利益、保有資産など)
ホテルだけに限らず、売却価格に大きく影響するのは財務状況です。
売上や利益規模、保有資産の規模が大きくなれば、高い金額で売却できる可能性が高まります。
特に土地と建物を所有しているホテル事業を営んでいる場合、土地の含み益を考慮に入れることができます。
ホテルのサービスレベル(食事や温泉付き、フロントの対応、設備など)
ホテルのサービスレベルは口コミサイトなどに大きな影響を及ぼします。
その土地のランキング上位に入っているようなホテルであれば、売却金額にプラスです。
食事のメニューが豊富、有名な温泉に入れる、ほぼ新築の物件である等の付加価値があれば、独自性を持ったホテル・旅館と評価され、M&A市場においても有利に売却プロセスを進めることができます。
ホテルの立地、アクセス
ホテルの立地、アクセスの良さも売却価格を考えるうえでは重要な要素の一つです。
駅の近くなど交通の便が良い場所であればその分評価は高くなります。
また、工場、ビル、店舗など職場へ徒歩圏内のホテルも需要は総じて高まります。
反対に、住宅街などであれば、ホテル需要は少なくなるため、周りに何があるのかは、買収前に詳細に調査しておく必要があります。
交通の便が不便、職場にも遠い場合であっても有名観光地のすぐ近くなどであれば、一定の需要を確保することができます。
一方、外国人の利用比率が高いホテルや旅館などは、今回の新型コロナウィルスの影響のように、インバウンド需要が小さくなれば、大きなダメージを受ける可能性がある点は留意が必要です。
具体的なホテルの売却事例
2021年に発表されたホテルの売却事例は、近鉄グループホールディングスが米国投資ファンドであるブラックストーングループへ8つのホテルを売却したことが挙げられます。
売主である近鉄グループホールディングスは、24のホテルを運営していましたが、その内8つのホテルを約600億円で売っています。
簿価は423億円であるため、177億円程度の売却益計上が見込まれています。
参考:
近鉄グループホールディングスのホテル売却理由
売却理由は、資産を持たずにホテル運営に特化するビジネスモデルへ転換することです。
ホテル事業は設備、人件費などの固定費が高く、ボラティリティの高いビジネスモデルです。
運営のみに特化することでボラティリティを抑えてホテル運営を継続することが可能になります。
従業員の所属は近鉄グループホールディングスのままとなりますが、人件費の出し手はブラックストーンとなります。
近鉄グループホールディングスは、ブラックストーンと運営受託契約を締結することにより、売上の一部を手数料として得ることができます。
そのため、仮にホテルが満室運営できた場合、今までよりも受け取れる収益総額は減りますが、赤字のリスクは低くすることができます。
西武ホールディングスも同様の方針
西武ホールディングスにおいても近鉄グループホールディングスと同様に、ホテルの売却を検討中です。
「ザ・プリンス パークタワー東京」や都心のホテルを中心に建物を売却し、ホテル運営自体は継続する方針です。
2021年中に売却する物件の選定を行う旨の発表をしています。
売却理由については、近鉄グループホールディングスと同様で、ホテルの所有と経営を分離することです。
含み益のあるホテル資産を売却し、資産規模を軽くし、業績改善につなげたい考えを持っています。
参考:
ホテル売却案件の探し方
ホテルの買収を考えている場合、以下の方法により、案件を探すことができます。
- M&Aマッチングサイトに登録する
- 不動産投資サイトに登録する
- M&A仲介会社やFAに相談する
M&Aマッチングサイトに登録する
M&Aマッチングサイトにおいて、自分のM&A戦略にあった買い手需要を登録することができます。
需要にあったホテル売却案件が登録された場合、会員登録した自分のメールアドレスに知らせてくれる機能があります。
例えば、以下のような買い手需要を登録することができます。
- ホテルの立地(北海道、東北、関東、東海、関西、中国、四国、九州、沖縄など)
- 案件金額(1億円、3億円、5億円など)
また、需要を登録しなくとも、現在のホテル売却案件を一覧から探すこともできます。
サービス登録、ログインを済ますことで案件ごとの詳細な情報を確認できるようになります。
一点、注意しなければならないのは、100万円・300万円・500万円など安い値段で公開されている案件がありますが、賃貸で民泊を行っている事業構造であることが多いです。
譲渡資産に何が含まれているのかは、問い合わせの前に必ず確認するようにしましょう。
不動産投資サイトに登録する
ホテルの売り案件は、不動産ポータルサイトで探すことも可能です。
不動産ポータルサイトでは、戸建、区分マンション、一棟アパート・マンション、別荘、事務所、倉庫、工場、民泊可能物件、旅館、ペンション、ビジネスホテル、ゲストハウスなど、様々な物件が掲載されています。
以下のような詳細な条件を入力することで、経営者のニーズに合わせた物件を検索し、複数の検索結果を表示させることができます。
- 表面利回り
- 現況の賃料、戸数
- 広さ(坪、㎡)
- 築年数(新築、3以内、5年以内、10年以内、20年以内、30年超など)
- エリア、地域、住所
- 木造、鉄骨造、RC造、SRC造
- 部屋数
- 駐車場の有無
- 中古、新築
- 駅やバス停から徒歩3分、5分、10分、15分など
- 建設会社
- その他、家具付き、リフォーム済み、デザイン性に優れている、JR利用可などの特徴
東京、埼玉県、神奈川県、千葉県の一都三県から、北海道、沖縄県、大阪、京都、北陸、東海、四国、中国地方など、全国にあるホテルを不動産投資と同じように検討することができます。
検索結果の表示が「なし」だった場合には、自分の考えている不動産物件があまりにも高望みすぎているケースが多いため、相場観と照らして検索条件を見直してみましょう。
もしくは検索条件を保存することができるため、時期をずらして再度検索してみることも重要です。
例えば、3月、6月、9月、12月など、四半期ごとに同じ条件で検索し、条件に合ったホテル物件を検索することもできます。
不動産投資サイトは、M&Aマッチングサイトよりも、不動産に関する情報が豊富にありますので、ホテルへの投資を不動産投資と同じように考えている方向けのサービスです。
気に入った物件があれば、ポータルサイトを通して不動産会社へ問い合わせることができます。
問い合わせ後、不動産会社から検討に必要な資料を送ってもらえるので、それを見て、初期的な投資判断を行うことができます。
不動産投資家と同じように、ホテルなどの不動産は、一棟買収して終わりではなく、次の棟、その次の棟と複数購入する戦略も可能です。
M&A仲介会社やFAに相談する
以上のように、M&Aマッチングサイトや不動産サイトを利用する場合、経営者自らが主体的に動かなければならず、ある程度M&Aに関する知識を持っていなければすぐに交渉を始めることは困難でしょう。
M&A仲介会社やFA、コンサルティング会社等に相談することで、より効果的・効率的にM&Aプロセスを進めることができます。
最初の相談は無料であることが多く、ホテルの買収や売却に興味があれば、メールや電話にて気軽に相談することがお勧めです。
経営者の希望に合った投資を実行できるよう、専門家をうまく活用するようにしましょう。