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M&AにおけるNDAとは?締結すべき理由や記載内容を解説!

2020.11.02 M&A知識

M&Aのプロセスにおいて、当事者は自社の機密に関わる重要な情報を相手方に開示しなくてはいけません。

そこでM&Aの実務では、情報開示に伴うリスクを軽減するために「NDA(秘密保持契約書)」の締結が行われることが多いです。

今回の記事では、そんなNDAの重要性や記載内容などを分かりやすく解説します。

NDA(秘密保持契約書)とは

NDA(秘密保持契約書)とは、M&Aのプロセスにおいて相手方から知った情報を第三者に漏洩しない旨を約束する契約書です。

英語では「Non Disclosure Agreement」というため、略してNDAと呼ばれています。

NDAを締結するタイミング

M&Aにおいて、NDAを締結するタイミングは主に2回あります。

まず1つ目は、M&Aの仲介会社と正式に契約するタイミングです。

買い手候補に打診する資料を作成するために、売り手側は仲介会社に財務諸表などの機密資料を渡す必要があります。

このときに、情報漏洩を避ける目的で、売り手とM&A仲介会社のあいだでNDAを締結します。

2つ目は、買い手候補がデューデリジェンスを締結する前のタイミングです。

デューデリジェンスにあたっては、詳細に調査を行うために、売り手側の資料提出が求められます。

そこで売り手側では、情報の漏洩を防ぐために買い手候補とのNDA締結が必要となります。

M&AにおいてNDAを締結すべき理由

M&AにおいてNDAが重要な理由は2つあります。

まず1つ目は、会社の機密情報が漏洩する事態を防ぐためです。

M&Aの売り手企業は、決算書はもちろん、取引先との契約書や給与額のリストなど、会社の機密に関わる情報を提供する必要があります。

万が一こうした情報が漏洩すると、業績の悪化が他社に知られて契約を打ち切られたり、漏洩した事実に不信感を持たれてしまう恐れがあります。

会社の存続にも関わってくる恐れがあるため、あらかじめNDAを締結しておく必要があるのです。

NDAには情報漏洩時のペナルティが記載されているのが一般的であるため、漏洩に対する抑止力として機能します。

また、万が一漏洩した際の対応方法も記載しておくため、スムーズな事後処理が可能となります。

NDAに記載する内容

M&Aで秘密保持契約書を締結する際には、主に下記6つの内容を盛り込みます。

「秘密情報」の定義

NDAに絶対に必要なのが、漏洩を禁止する情報(秘密情報)です。

どの情報を秘密にし、反対にどの情報を秘密にしないかを明確に記載します。

秘密にしない情報は、たとえ漏洩されても一切の責任を相手に負わせることができません。

したがって、漏洩した場合のリスクや損害を考慮した上で、秘密情報の定義を明確にするのが重要です。

秘密情報の利用目的に関する制限

たとえ第三者に漏洩されなくても、相手方が自由に自社の秘密情報を利用するのは好ましくありません。

極端な話ですが、自社が開示した情報を使って類似する製品を作られると、顧客(売り上げ)を奪われかねません。

したがって、デューデリジェンスなどのM&Aに関するプロセスでのみ、秘密情報を利用できるように定めることが一般的です。

また、秘密情報のコピーに関しても、M&Aに関する目的の範囲内でのみ認めるようにしましょう。

秘密情報を開示できる範囲

M&Aのプロセスでは、円滑に手続きを進めるためにアドバイザー(仲介会社や士業などの専門家)からの協力が必要です。

そのため、仮に一切の情報開示を禁止すると、買い手側のアドバイザーが満足に実務を行えず、M&Aの進行に支障をきたす恐れがあります。

したがってNDAには、買い手候補をサポートするアドバイザーに対しても、秘密情報を開示できるように定めるのがベストです。

秘密保持の期間

たとえば自社の重要な技術など、M&Aが完了した後も秘密情報としての価値をもつ情報は残ります。

したがって、秘密保持契約の期間や秘密保持の義務を担う期間はあらかじめ明確化しておくのが望ましいです。

最適な期間はケースバイケースですが、一般的なM&Aでは1〜5年の期間を設定します。

利用が完了した後の秘密情報の取り扱い

M&Aが成立もしくは破談となった場合、その後に相手方が自由に提供した情報を活用するのは避けるべきです。

そのため、M&Aで締結するNDAには、利用完了後に秘密情報を破棄または返還する旨を定めるのが一般的です。

秘密情報を漏洩した場合の対応

上記すべての項目をNDAに記載しても、実は相手が漏洩した場合に責任を取ってもらうのは原則困難です。

万が一漏洩された時に備えて、NDAには情報を漏洩された場合に、損害賠償を請求できる旨を必ず規定しておきましょう。

規定しておけば、万が一の際に損害賠償を請求し、被害を最小限に抑えられます。

また、損害賠償の規定があれば、相手方に情報漏洩をさせないように抑止力が働きます。

M&AでNDAを締結する際の注意点

最後に、M&AでNDAを締結する際の注意点をお伝えします。

具体的に注意すべき点は以下の2つです。

アドバイザーや従業員などにも秘密保持の義務を負わせる

前述したように、M&Aでは相手企業のアドバイザーや従業員などにも、自社の機密情報が知れ渡る可能性があります。

そのため買い手の経営陣のみならず、従業員やアドバイザーなど情報を知ることになる関係者全てに対して、秘密保持の義務を負わせるようにしましょう。

テンプレートをそのまま使用しない

インターネット上には、NDAを簡単に作成できるテンプレートがたくさんあります。

しかしM&Aは特殊で専門性の高い取引であるため、汎用的なテンプレートでは不十分である可能性が高いです。

M&Aに特有のリスクに対応できない恐れがあるため、専門家に作成してもらうか、テンプレートをM&A仕様にアレンジするのがオススメです。

まとめ

情報漏洩によるトラブルを回避する上で、M&Aの過程でNDAを締結することは非常に重要です。

ただし、確実にリスクに対処するには、インターネット上にあるテンプレートではなく、M&Aに精通した弁護士が作成したNDAを活用するのがベストです。

NDAを作成する際には、かならずM&Aに詳しい弁護士への相談を欠かさず行いましょう。

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