• TOP
  • M&A知識
  • M&A価格の決まり方とは?算定方法も解説

M&A価格の決まり方とは?算定方法も解説

2020.10.26 M&A知識

M&Aの成功を左右する要素の一つが「価格」です。

価格算定を誤ると、売り手は価値のある会社を安い価格で売却することになります。一方で買い手は、適正でない価格で買収してしまい、後から多額の損失を被る恐れがあります。

したがって、M&Aの価格を決める方法については正しい理解が必要です。

今回の記事では、そんなM&A価格の決まり方について分かりやすく解説します。

売り手と買い手でM&Aの価格に対する考え方は異なる

M&Aの価格には明確な相場がありません。

実際のM&Aでは、売り手と買い手の交渉次第で価格が決まります。

ただし、売り手と買い手では以下の通りM&Aの価格に対する考え方は大きく異なります。

会社への愛着や技術やノウハウへの自信から、売り手は売却価格を高く見積もる傾向があります。

一方で買い手は、万が一M&Aが失敗した際の損失を考えて、買収価格を低く見積もる傾向があります。

つまり、売り手と買い手はM&Aの価格をめぐって、利害が真正面から対立するわけです。

売り手と買い手が単純に希望価格を言い合っていては、交渉は平行線となりM&Aは成立しにくくなります。

そこでM&Aの実務では、客観的な視点から算出した「適正価格(≒企業価値)」を基準に、交渉を進めるのが一般的です。

企業価値は、貸借対照表の状況や収益性、過去のM&A事例などを基に算出した会社の金銭的な価値です。

企業価値を基に価格を決めれば、売り手と買い手の両者が納得しやすい形でM&Aを実施できます。

M&Aの適正価格を算定する方法

M&Aの適正価格を算定する方法は、「コストアプローチ」、「インカムアプローチ」、「マーケットアプローチ」の3種類に大別されます。

それぞれ何を基準に価格を算定するかに違いがあるため、用いる方法によって算定額は大きく変わります。

したがって、会社の特徴に最適な価格算定方法を用いるのが重要です。場合によっては複数の算定方法を活用するのも、納得できる価格でM&Aを行う上で重要です。

コストアプローチ

コストアプローチとは、企業の貸借対照表をベースに、M&Aの適正価格を求める方法です。

特に中小企業のM&Aでは、純資産の価額を企業価値とする「純資産価額法」が広く普及しています。

M&Aの実務では、時価純資産に営業利益の3〜5年分を足した金額を、M&Aの適正価格とするのが一般的です。

  • 企業価値 = 時価純資産 + 営業利益 × 3〜5

会計規則にしたがって作成された貸借対照表を用いるため、客観性の高いM&Aの価格を求められます。

一方で将来性は加味できないため、今後業績が大きく伸びるようなベンチャー企業の価格算定には不向きです。

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、今後期待できる収益性をベースにM&Aの適正価格を求める方法です。

インカムアプローチの具体的な手法としては「DCF法」が有名です。

DCF法では、将来得られるキャッシュフローの現在価値を基準に、企業価値を求める方法です。

DCF法でM&Aの価格を求める際には、下記の流れで計算を行います。

  1. 今後3〜5年分のフリーキャッシュフローを計算
  2. 割引率(基本的にはwacc)を計算
  3. 継続価値を計算
  4. フリーキャッシュフローと継続価値を現在価値に割り引く
  5. 事業価値を計算(フリーキャッシュフロー+継続価値)
  6. 非事業用資産の時価を計算
  7. 企業価値を計算(事業価値+非事業用資産)

見てもらう通り、計算にファイナンスの知識を要するため、簡単に計算できないのが難点です。

また、企業が作成した事業計画書を基にキャッシュフローを求めるため、客観性に欠けやすいデメリットもあります。

ただし、将来的な収益性を最大限加味できるため、成長率の高いベンチャー企業や大企業など、幅広い対象のM&Aで活用可能です。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、「市場」との比較によりM&Aの適正価格を求める方法です。

メジャーな手法としては「類似会社比準法」というものがあります。

類似会社比準法とは、事業内容が自社と類似する上場企業を選び、その企業の株価指標をベースにM&Aの価格を計算する手法です。

株価指標としては、「EV/EBITDA倍率(事業価値÷EBITDA)」や「PER(株価÷1株当たり利益)」が用いられます。

たとえばEV/EBITDA倍率(事業価値÷EBITDA)を用いる場合、自社のM&A価格(≒企業価値)は以下の式で求めます。

  • 企業価値 = (自社のEBITDA × 類似会社のEV/EBITDA倍率) + 自社の非事業用資産

適正価格を上回る金額でM&Aを実現するには?

基本的にM&Aは、上記の方法で求めた適正価格(≒企業価値)を基準に、最終的な売買価格が決められます。

ただし、買い手が適正以上の金額を支払っても良いと考えれば、適正価格以上の金額でM&Aを実現できます。

買い手に高い価格でも買収したいと思ってもらうには、買い手が欲しがるような希少な技術やノウハウを持っている必要があります。

ただし、買い手候補の会社によって、自社の持つ技術やノウハウに対する評価は大きく異なる可能性があります。

片方の会社からすると不要であっても、もう片方の会社からすると喉から手が出るほど欲しい経営資源かもしれません。

したがって、複数の買い手を比較し、最も自社の経営資源を欲しがっている相手に売却することも重要です。

そうすれば、適正よりも高い価格でM&Aを実行できる可能性が高まるでしょう。

M&A価格のまとめ

M&Aの価格について、要点をまとめると下記の通りです。

  • 売り手と買い手で価格に対する考え方が相違するため、適正価格の算出が必須
  • M&Aの適正価格を求める方法は「コストアプローチ」、「インカムアプローチ」、「マーケットアプローチ」の3種類
  • 適正な価格以上でM&Aを実現するには、複数の買い手を比較したり、目に見えない希少な強みを持つことが効果的

弊社では、M&Aの価格算定に関するご相談を無料で承っております。

M&Aの実施を検討している会社様は、ぜひお気軽にご相談いただければ幸いです。

関連記事:M&Aの意味をわかりやすく解説!