M&Aの手数料はなぜ高い?相場についても解説!
2020.05.26 M&A知識- 後継者を社員や子供ではなく、外部の第三者から確保する場合には、通常はM&Aを行います。
M&Aには専門的な知識を要するため、経営者が自社のリソースのみで進めるのは困難です。
そのためM&Aを行うときには、マッチングやその後の実務の支援を仲介会社に依頼するケースが大半です。
しかしM&Aの仲介会社に依頼すると、数百万円〜数千万円もの手数料がかかります。
なぜM&Aの手数料はここまで高いのでしょうか?
今回の記事では、M&Aでかかる手数料が高い理由や、具体的にかかる手数料の種類、手数料の相場について納得してもらえるように詳しく解説します。
目次
M&Aの手数料が高い理由
M&Aの手数料が高いことは、多くの皆さんが知ることでしょう。
M&Aの手数料が高い最大の理由は人件費です。
M&Aでは、デューデリジェンスや企業価値の算定、契約書作成など、会計や法律、経営などに関する専門的な業務を行います。
専門知識を要するため、基本的には公認会計士や税理士、弁護士などのM&Aに精通したアドバイザーが業務を担います。
こうした専門家は人件費が高くつくため、必然的にM&Aの手数料が高くなるのです。
ただし中小企業の小規模なM&Aを取り扱う会社だと、業務量が少なくなるため手数料は安い傾向があります。
反対に、大規模なM&Aを行っていたり、ブランド力のある大手仲介会社だと、手数料が高い傾向があります。
上記のとおり、案件の規模などによってM&Aの手数料は変動するので知っておきましょう。
M&A手数料の種類【一覧】
M&Aの仲介会社に相談する際にかかる手数料は、大きく下記の7種類に分けられます。
この章では、各手数料の概要や特徴をお伝えします。
仲介会社によって手数料の体系は異なるので注意しましょう。
相談料
相談料とは、M&Aの実施可否などについて、仲介会社に相談するときに発生する手数料です。
正式契約を行う前にかかる手数料であることから、「事前相談料」とも呼ばれます。
着手金
着手金とは、仲介会社にM&Aのマッチングなどを正式に依頼し、契約を締結した時点で生じる手数料です。
候補企業の選定や書類作成などに使われる手数料であり、仮にM&Aが失敗しても返金してもらえません。
手数料を無駄にしないためにも、着手金の支払いを要する仲介会社に依頼する際には、実績や専門性などを確認し、M&Aが確実に成功するかどうかを見極めることが重要です。
なお着手金を支払う場合、必要な資金を金融機関から借りることを目指す必要があるので注意しましょう。
最低手数料
最低手数料とは、仲介会社がM&Aの実務で利益を残すために設定する手数料です。
たとえば最低手数料が10万円の場合、M&Aの規模に関係なく、成約時に最低でも10万円の手数料が発生することを意味します。
最低手数料の金額次第では、多額の手数料を支払うことで売却利益の大半を失う事態にもなり得るので注意しましょう。
リテイナーフィー
リテイナーフィーとは、M&Aの仲介会社に毎月支払う手数料です。
顧客として様々なサポートを継続的に受けたり、要望やニーズを叶えてもらうために、毎月生じる「月額の顧問料」というイメージが近いです。
この手数料は、M&Aが完了するまでは毎月発生します。
つまりM&Aの相手探しや交渉が長引くほど、合計の手数料は雪だるま式に増えてしまうのです。
予算に余裕がないならば、リテイナーフィーが設定されていないM&A仲介会社に依頼するのがベストです。
ただし中小企業に向けたM&A仲介会社の場合、リテイナーフィーを手数料として設定しているところは少ない傾向にあります。
一般的な企業のM&Aでは、リテイナーフィーによって手数料が大きな金額となる事態は少ないので安心しましょう。
中間報酬
中間報酬とは、M&Aの基本合意書が締結された時点で生じる手数料です。
着手金と同様に、M&Aが白紙になると返金されません。
ただし基本合意が締結されたということは、売り手と買い手双方が、M&Aの基本的な条件に合意しているわけです。
そのため、デューデリジェンスで多額の簿外債務が見つかるなどの事態をのぞいて、基本合意書が締結されて以降にM&Aが白紙になるケースは少ないです。
したがって、着手金や最低手数料と比べると、支払うリスクは低いと言えます。
デューデリジェンス費用
デューデリジェンス費用とは、買い手が売り手側のリスクを調査する際にかかる費用です。買い手が行う調査なので、売り手側がこの手数料を負担するケースはほぼありません。
調査の範囲は財務や税務、IT、法務、ビジネスなど多岐にわたり、複数の範囲を調査するほど費用が高くなるのが一般的です。
買い手側はM&Aを実施するにあたって、簿外債務などを売り手から引き継ぐリスクがあります。
万が一リスクを引き継ぐと、M&Aが終わってから多額の損失を被るリスクがあります。
よって、たとえ手数料が高くてもデューデリジェンスは実施すべきでしょう。
緻密な調査によってリスクを軽減できる点で、デューデリジェンスはメリットが大きいプロセスです。
成功報酬
成功報酬とは、M&Aの最終契約が成立した時点で生じる手数料です。
M&Aが成約した時点で生じるため、費用が無駄になるなどのリスクはありません。
大半の仲介会社は、取引金額に一定の料率をかける「レーマン方式」という手法で、成功報酬を算出しています。
ただし取引金額には、「譲渡金額(買収の価格)」、「移動総資産」、「企業価値」の3種類があり、仲介会社によって用いる基準は異なります。
成功報酬を安く抑えたいならば、「譲渡金額」を取引金額として用いている業者に、M&Aのサポートを依頼しましょう。
成功報酬を計算するレーマン方式をくわしく紹介
M&Aで支払う手数料の中でも、特に金額が大きいのが成功報酬です。
したがって、支出を極力抑えるためにも成功報酬の計算手法は先に理解しておくのがベストです。
そこでこの章では、成功報酬の料金を算出する時に用いる「レーマン方式」についてくわしく解説します。
レーマン方式で用いる手数料の率
前述したように、レーマン方式では取引金額に一定の手数料率をかけることで成功報酬を求めます。
レーマン方式の料率は、以下のとおり取引金額によって変わるのが特徴です。
取引金額 | 手数料率 |
5億円以下の部分 | 5% |
5億円を超える部分〜10億円以下の部分 | 4% |
10億円を超える部分〜50億円以下の部分 | 3% |
50億円を超える部分〜100億円以下の部分 | 2% |
100億円を超える部分 | 1% |
以上の資料に目を通していただければ分かるとおり、取引金額が増える段階で徐々に手数料率が下がっていくのが特徴です。
レーマン方式を活用した簡単な問題の例
レーマン方式を理解するために、取引金額を譲渡金額であると仮定し、いくつかの計算問題を考えてみましょう。
⑴譲渡金額が2億円のケース
- 成功時に支払う手数料 = 2億円 × 5% = 1,000万円
M&Aでやりとりやれるお金が100万円〜1億円といった小規模な案件では、上記のとおり簡単に計算に対応できます。
⑵譲渡金額が20億円のケース
この場合は、「5億円以下の部分」、「5億円を超える部分〜10億円以下の部分」、「10億円を超える部分〜50億円以下の部分」に分けて手数料の額を計算し、それを合計する形で成功報酬を算出します。
それぞれを計算すると、支払う手数料は以下のとおりになります。
- 成功時に支払う手数料 = (5億円 × 5%) + (5億円 × 4%) + (10億円 × 3%) = 7,500万円
M&Aの手数料相場はどのくらい?
この章では、上記で説明した7種類の手数料について、大まかな相場をお伝えします。
M&Aにかかる手数料の目安(費用がいくらになるか)を知りたい方は参考にしてください。
M&Aの各種手数料の相場
具体的な手数料の相場は下記になります。
- 相談料:3,000円〜1万円(無料のところも多い)
- 着手金:50万円〜400万円
- 最低手数料:200万円〜2,000万円
- リテイナーフィー:30万円〜200万円/月
- 中間金:成功報酬の1割〜2割または30万円〜200万円
- デューデリジェンス費用:10万円〜200万円
- 成功報酬:取引金額の1%〜5%
M&A仲介会社の手数料を見る上で重要なポイント
基本的には、上記の手数料相場を基準にした上で、手数料が妥当かどうかを判断します。
しかし相場よりも手数料が安いからと言って、必ずしも安心とは言い切れないので注意を要します。
手数料が相場より安くてもサポート体制が充実していないと、後々ご自身で専門家に別途で依頼したり、後からトラブルになったりして、かえって損する可能性があるためです。
手数料の安さのみならず、必ずサポート体制やサービスの専門性も考慮した上で、M&Aの仲介会社を選ぶことが重要です。
また、各手数料単体ではなく、手数料の総額で判断することも重要です。
たとえば成果報酬が相場よりも高くても、その他の手数料がほとんどかからなければ、トータルで見るとデメリットが小さく非常にお得です。
反対に各種手数料が相場より安くても、上記で挙げた手数料がすべて発生すると、トータルで生じる金額は多くなります。
各種手数料の相場に加えて、最終的な支出の合計額も見積もった上で、M&Aのサポートをどの業者に任せるか考えましょう。
手数料が安く質が高いサービスを提供するM&Aアドバイザリーの選び方
先ほどご説明したとおり、M&Aのアドバイザリー(仲介会社など)を利用する際には、手数料だけでなく支出の合計額やサービスの質なども考慮して相手を選ぶことが重要です。
とはいえ、はじめて実際にM&Aを行う方にとっては、どのように安くて質の高いM&A仲介を選ぶのか分からないと思います。
そこでこの章では、安くて質が良いM&Aの専門家を選択する仕組みを、3つのプロセスに沿ってご説明します。
手順1:特化している業界や事業の規模などの要素で数社に絞り込む
まずは、特化している業界や得意とする事業の規模といった要素によって、自社の状況や希望に適した仲介会社を数社選びましょう。
ここで大事なのは、先に手数料で仲介会社を絞り込まないことです。
どれほど手数料が安くても、良いアドバイスをくれなかったり、経験やノウハウに乏しい相手に依頼すると、M&Aが失敗する可能性が高いです。
M&Aが失敗すれば支払った手数料はすべて無駄となるため、安ければ良いというわけではないのです。
手順2:絞り込んだ数社について手数料の体系や見積もりをまとめる
次に、絞り込んだ数社のアドバイザリーについて、仲介手数料の体系や見積もりを表などにまとめましょう。
手数料の体系をサイトなどを参考にまとめつつ、直接メールや電話などで合計でどのくらいの費用がかかるかを詳細に聞いておくのも大切です。
また、必要に応じて所属するコンサルタントの専門性や個人情報保護の徹底度合いなども把握・評価しておくのがおすすめです。
そうすれば、より自社のM&Aを任せるにふさわしい仲介会社が明確にわかるでしょう。
手順3:比較によりサービスの質と手数料の安さを両立するアドバイザリーを特定する
最後に、複数の仲介会社を比較して、サービスの質と手数料の安さの両方を実現しているところを特定します。
サービスの質が良く、かつ手数料がそれなりに安い仲介会社があれば、その会社にM&Aのサポートを依頼するのが最適でしょう。
いずれにしても、「サービスの質や得意分野」→「手数料の安さ」という順番でM&A仲介会社を絞り込むのがコツです。
まとめ
今回のコラムでは、M&Aの方針を決める上で役立つ手数料の知識についてお伝えしました。
M&Aでは多額の現金が移動する分、仲介会社に依頼したときの手数料も高くなります。
買い手は余分な支出を少しでも減らすこと、売り手は少しでも多くの利益を残すことを考えて、サポートが豊富かつ手数料が安く済むM&Aの仲介会社に依頼するのがオススメです。
また、実際にM&A仲介会社に依頼する際には、M&Aを行う目的や戦略、M&Aによって解決したい課題をしっかり伝えましょう。
そうすれば、より自社にとって最適なM&Aの相手が見つかりやすくなります。
なおM&Aポートでは、数々のM&Aをこなしてきた専門家がチームを組んで、M&Aのマッチングやバリュエーション、交渉のサポートといったあらゆる業務をサポートしています。
完全成功報酬制を採用しているため、万が一成立しなかったときは一切手数料がかかりません。
M&Aを前向きに検討している方は、ぜひお気軽にご相談いただけますと幸いです。