中小企業の廃業が増加中?廃業の前に考えるべきことを徹底解説!

2021.10.24 会社・事業を売る

2020年から2021年時点では新型コロナウィルス等を理由として、旅行業、飲食業など様々な事業に甚大な影響が出ています。また、日本の社会問題として高齢化問題が挙げられますが、その高齢化問題を背景に中小企業や小規模な事業主の廃業が増加傾向にあります。今回は、中小企業が廃業を考える前にすべきことを、具体的な事例を交えながら分かりやすく解説していきます。

廃業が増加している背景

現在、日本の中小企業における社長の平均年齢は徐々に上がっています。東京商工リサーチの調査の結果では、2020年において社長の平均年齢は62.49歳であり、右肩上がりになっています。また、社長の年齢分布でも70歳以上が全体の約32%を占めており、社長の高齢化が進んでいます。

一方で、後継者不足の問題も深刻化しており、帝国データバンクの調査によると、2020年における後継者が不在の割合は65.1%となっています。中小企業の社長の高齢化が進んでいるにも関わらず、後継者がなかなか見つからないため、結果として、廃業数の増加に繋がっています。

参考:

東京商工リサーチ 全国社長の年齢調査

帝国データバンク 「後継者不在率」動向調査

事業承継のために経営者が取れる選択肢

事業承継を考えている経営者が取れる選択肢は、以下のとおり主に3つあります。

  • 親族内承継
  • M&A
  • 廃業

親族内承継とは、子供や兄弟など親族に自分の会社や事業を承継させることです。親族内承継のメリットは、事業がよく分かっている者に引き継がせることができる、一代でブランドを守ることができるなどが挙げられます。他方で、親族内承継の場合には、M&Aと異なり、オーナー経営者自身には売却益等が大きく入っていることはない点がデメリットとなります。

次にM&Aの場合、オーナー経営者に事業売却による多額の現金が得られる可能性があります。ただし、誰しもがM&Aによって事業売却できるわけではありません。プロジェクトの途中で交渉が決裂してしまうケースも数多くあります。

親族内承継、M&Aの検討後、最後に考えるべきことが廃業です。廃業の場合、資産超過であればいつでも好きなタイミングで事業を止められる点はメリットですが、金銭的なリターンはありません。借金が多く債務超過の場合には、廃業事態も難しくなるケースもあります。

廃業する前に考えるべきこととは

廃業する前に考えるべきことは、以下のとおり主に3つあります。

  • 従業員や取引先への影響
  • 経営改善の可能性が残されていないか
  • 廃業したらどの程度の財産が残るのかの試算

従業員や取引先への影響

廃業した場合、事業を行わなくなるため、当然ながら従業員に給料を支払うことができなくなります。従業員の状況によっては、廃業によって将来の生活が成り立たなくなる恐れがあります。また、突然の廃業により、取引先も売上の大部分がなくなってしまう、重要な部品が仕入れられなくなったなど、取引先の経営に重要な影響を与えてしまうケースが考えられます。

そのため、廃業する場合には、事前に従業員や取引先への影響を考慮し、早めに対策を打っておく必要があります。また、従業員に対しては、割増退職金や早く転職活動できるよう調整していくと良いでしょう。

経営改善の可能性が残されていないか

経営改善により、売上、営業利益やキャッシュフローの改善、借入金の圧縮、純資産の増加などができれば、M&Aにより会社や事業を売却できる可能性が高まります。可能性が高まるだけでなく、企業価値が増大するため、売却金額も増え、多額の売却益を得られるかもしれません。

もちろん、一朝一夕で経営改善できるわけではありません。全てのコストを確認したうえで、日々の細かなコスト削減、営業活動の効率化、固定費の見直しなど、一歩一歩進めていく必要があります。業績の面でも、単価の見直し、シェア拡大のためのマーケティング施策の変更、など、それぞれの事業者の業種や特徴、規模や課題などに基づき、様々な対応が考えられます。一度、M&Aに挑戦したができなかった場合でも、赤字から黒字へ転換するなど経営改善により財務内容が改善すれば、売却できる可能性が出てきます。

廃業したらどの程度の財産が残るのかの試算

廃業を考えている場合、先に廃業後にどの程度の財産が残るのかを試算しておくことが重要です。計算方法は、簡単に表現すると、資産・負債を時価評価し、清算価値を求めることです。例えば、土地を保有していれば、売却できそうな金額で評価します。廃業の際に退職金を支払う人事規程になっている場合には、退職金を新たに負債に計上します。

上記の過程で計算された清算価値が正の値であれば、資産超過を意味しており、廃業後にその金額を得ることができます。反対に、清算価値が負の値であれば、債務超過を意味しており、廃業後に借金を背負ってしまうことを意味します。

そのため、債務超過の場合には、通常の清算を行うことができないため、裁判所を通した特別清算の手続が必要になってしまいます。廃業後の財産を試算することで、廃業自体ができるのか、廃業後にどの程度のお金を得ることができるのかを理解することができます。シミュレーションの結果を見て、実際に廃業するのか、他の選択肢を模索するのか、判断するようにしましょう。

M&Aの可能性を検討することの重要性

上記を考えてみた結果、M&Aの可能性があるのであれば、一度は事業売却を考えてみることがおすすめです。従業員も退職させずに済み、買い手企業に雇用を引き継いでもらうことができます。また、債務超過など一般的には廃業が難しい状況であっても、シナジーのある買い手は全国に少なからずいるはずです。廃業した場合には企業価値は清算価値でしか評価されませんが、M&Aであれば、より高い企業価値で評価してくれる買い手に巡り合えるかもしれません。未来に向けて経営改善ができれば、より売却可能性も高くなります。

一度、M&A専門家などに事業売却の可能性について相談してみてはいかがでしょうか。初回相談や問い合わせは無料でできる場合が多いため、まずは気軽に問い合わせてみることから始めてみましょう。

まとめ

コロナや高齢化問題を背景に、中小企業の廃業数は増加傾向にあります。廃業を考えている場合、まずは廃業したらどのようなことが起こるのか、経営者自身と周りへの影響を考えてみることが重要です。会社の経営状況によっては、廃業が困難な場合も想定できます。

廃業する際の影響が大きい場合、廃業したいができないといったケースでは、一度M&Aの可能性を検討してみることがおすすめです。M&Aであれば、買い手が事業を引き継いでくれるため、廃業のデメリットを解決することができます。M&Aは最低3か月程度の時間は必要であるため、時間切れになってしまう前に早めに行動することが大切です。