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コロナによる影響でホテル・旅館の廃業が増加。廃業前にM&Aを検討してみるのがおすすめ!

2021.10.17 会社・事業を売る

2020年から2021年にかけて新型コロナウィルスの影響で、外出を前提とする産業は大きなダメージを受けています。特にホテルや旅館といった旅行業は、外出を控える動きが広がったことから、売上が大きく落ち込み、ホテルや旅館の廃業が増加しています。今回は、ホテル・旅館の廃業前にM&Aの可能性を検討する際の注意点を解説していきます。

コロナがホテルや旅館に与える影響

2021年に入り、帝国データバンクのレポートによると、日本国内全体の廃業数は2020年よりも緩やかなペースとなっています。一方、コロナの影響を大きく受けている「旅館・ホテル」などの観光関連企業は過去最高ペースで、企業の廃業・解散が増えています。政府が旅行や外出を控えるよう呼びかけるなど、宿泊する人自体が減少してしまったことが原因です。GOTOトラベルなどの施策は打ったものの、実行期間が短く、旅行業界をサポートするには十分に機能しませんでした。

2021年6月時点において、「旅館・ホテル」の廃業・解散数は、104件あり前年同期比から+55%の水準です。今後も変異株などコロナの影響が長引けば、さらに「旅館・ホテル」の廃業が増加することが予想されます。

参考:

特別企画:2021年1月-6月 全国企業「休廃業・解散」動向調査

ホテルや旅館を廃業する際の注意点

ホテルや旅館業の場合、金融機関からなどの借入金が多くなる傾向にあります。土地や建物が高額であることから、一般的に、土地や建物を担保に入れて借入を行います。ホテルや旅館を建設し、宿泊客から得た売上を元に借金を返済していくというビジネスモデルです。

借入金が多い場合には、廃業を考えていたとしても簡単に廃業できない場合があります。清算価値が債務超過のケースでは、通常の廃業・清算という方法が利用できず、特別清算という方法になります。特別清算は、裁判所が選任した破産管財人または特別清算人が債務者の会社財産を売却し、得た財産を債権者に配分していくといった手続を経る必要があります。裁判所が間に立つことで、自由に廃業することはできず、特別清算の手続は時間とお金がかかる点に留意が必要です。

2021年5月にリゾートホテルを運営している東京商事が負債1,004億円を残して特別清算の開始が決定されました。旅館やホテルの運営会社は、負債総額が大きくなるため、特別清算を選択しなければならないケースが増えてきています。

資産超過の場合、廃業後の清算手続は、裁判所を通す必要はなく、通常の清算手続を行うことになります。廃業の意思決定をするためには、株主総会の特別決議による承認が必要です。そのため、ホテルや旅館を経営する会社の株主が分散している場合には、株主の意見が割れてしまえば、廃業できないこともある点に留意が必要です。

参考:

東京商事が特別清算 ホテル運営、負債1004億円

M&Aの可能性を検討するのがおすすめ

資産超過であれば、廃業後、通常の清算手続を行うことで、会社の財産は全て株主に持株比率に応じて配分されます。債務超過の場合、上記のとおり、裁判所に特別清算の手続を申し立てる必要があり、一人では手続を完了させることはできません。

このような状況であったとしても、M&Aによってホテルや旅館を売却できる可能性はあります。会社全体を売却する株式譲渡、または事業ごとに売却する事業譲渡を選択することで、買い手に借入金を含めて経営権を委譲することができます。

もちろん、債務超過のホテルや旅館を売却することは簡単ではありません。事前の綿密な準備も含めて最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の時間も必要です。また、M&Aはマッチングのサービスなど様々なサイトがあり、自分の力だけで実行することは可能です。本やインターネットのコラム、セミナーなど、WEBで検索するだけでM&Aに関する情報は多く出てきます。

しかし、売却が難しいことが予想される場合には、M&A仲介会社やアドバイザリーに相談するなど、M&Aの実績や経験の豊富な専門家に相談することがおすすめです。債務超過など、難しい案件であったとしても、シナジーのある買い手にうまくアプローチできる可能性が高まるためです。

どんな買い手が考えられるか

ホテルや旅館の場合、大手ホテルチェーンやレジャー施設運営会社のように、ホテルや旅館を経営している会社が買い手として考えられます。例えば、2018年10月に大江戸温泉物語グループが、TSCホリスティック社の運営するタラサ志摩ホテルを事業譲受しています。

また、大手ホテルチェーンなどではなく、外資系や国内系のファンドがホテルや旅館を買収することもあります。例えば、2021年3月、近鉄グループホールディングスが運営する8つのホテルを外資系ファンドであるブラックストーングループが約600億円で買収する旨を発表しました。近鉄グループホールディングス以外にも西武ホールディングスも運営するホテルを1,000億円超で売却するニュースが流れています。

上記以外にも、旅行業界に進出したい不動産会社やその他IT会社なども買い手として考えられます。ホテルや旅館は、運営会社を引き継ぐことができれば、買収後も、継続して運営することができ、オーナー経営者として経営改善のアイディアや施策を実行することに集中することができます。

参考:

当社子会社における事業譲受に係る契約締結のお知らせ

ホテル再編の兆し 米ブラックストーン、近鉄から買収

西武HD、ホテルなど40施設売却へ 全国で1000億円超

まとめ

2020年から2021年は、コロナ禍の影響もあり、ホテルや旅館の廃業・倒産が相次ぎました。廃業はしないまでも、外資系ファンドが日本のホテルを買収するといった案件も増加傾向にあります。

旅館やホテル業の場合、借入が多くなるビジネスモデルです。そのため、経営が一度悪化してしまえば、債務超過に陥ってしまい、債務超過のケースでは簡単に廃業ができなくなります。解決策の一つがM&Aです。M&Aであれば、たとえ債務超過であっても会社や事業を売却できる可能性があります。M&Aすることにより、既存の借入金を買い手に引き継いでもらうことができ、事業をやめ、経営者を降りることができます。

債務超過など、難しいM&Aに挑戦する場合、経験豊富なM&Aアドバイザーの支援のもと、プロジェクトを慎重に進めることが重要です。M&Aは一度誤った施策を講じてしまうと、なかなか元に戻すことができないという特徴があります。できれば、M&Aの最初のプロセスから、専門家に支援してもらうようにしましょう。