廃業にかかるコストとは?網羅的に必要なコストを解説!

2021.11.06 会社・事業を売る

後継者がいないなどを理由に、自ら事業をやめることを廃業と言います。破産や倒産と異なり自らの意思で事業を止めるタイミングを決定できますが、廃業する際に必要なコストを忘れてはいけません。必要な費用が払えない状況になってしまえば、最悪の場合、廃業すらできなくなってしまうこともあります。今回は廃業のコストがいくらかかるのか、具体例を交えながら徹底解説していきます。

必ず必要な廃業のコストとは?

廃業を行う場合、下記のコストは必ず必要になります。

  1. 解散登記にかかる費用【3万円】
  2. 清算人選任の登記にかかる費用【9千円】
  3. 清算結了の登記費用【2千円】
  4. 官報公告にかかる費用【約4万円円】

それぞれ詳細を見ていきましょう。

1. 解散登記にかかる費用

解散登記とは、会社の廃業が決まった際に登記する手続であり、廃業手続の入り口となります。会社が廃業した場合には、広く一般に知らせる必要があることから、登記すべき事項と定められています。

解散登記にかかる費用は、登録免許税として30,000円が必要になります。収入印紙または領収証書を添付する形で支払いを行います。解散登記に必要な資料は、廃業することが決議された株主総会議事録と株主の氏名・住所・議決権数などが分かる株主リストが必要な場合もあります。

2. 清算人選任の登記にかかる費用

清算人とは、法人を解散する際に清算業務を担当する人です。清算業務は会社の資産や債権・在庫などを現金化し、債務を返済し、最終的に残った金額を株主に分配する手続です。

会社の経営を行なってきたのは、取締役になりますが、廃業が決まった後は清算人が清算業務を担当することになります。清算人の選定方法は以下のとおり4つの方法があります。

  1. 会社定款にあらかじめ定めておく
  2. 株主総会決議で選任する
  3. 取締役が選任される
  4. 裁判所が選任する

オーナー会社のような一人会社・一人事務所であれば経営者(代表取締役)がそのまま清算人になることもできます。清算人選任の登記にかかる費用は、9,000円です。解散登記と同じタイミングで支払が必要になります。清算人選任を登記するためには、清算人の就任承諾書の提出が求められます。

参考:

法務局 株式会社解散及び清算人選任登記申請書

3. 清算結了の登記費用

清算結了とは、清算人が行う清算業務が全て完了したことを意味しています。清算業務では、会社に存続している資産を全て現金化し、借入金などの負債を弁済します。それでもなお残った財産は、株主の持株比率に応じて配当されることになります。清算業務が完了した場合には、会社財産が全て配分された後であるため、会社の中身は空っぽの状態です。仮にまだ銀行からの借入金が残っている場合には、生産が完了したとは言えず、清算結了の登記を行うことはできません。

清算決了の登記に必要な書類は、清算時の決算が承認された議事録と決算報告書です。清算結了後、2週間以内に登記の対応を行わなければなりません。また、残余財産の分配が確定してから1か月以内に、税務署へ確定申告を行う必要がある点は留意が必要です。

清算結了の登記にかかる費用は、2,000円です。この登記が完了することにより、法人格が消滅することになり、廃業が完了します。

4. 官報公告にかかる費用

会社を廃業・解散させる場合、当該会社の債権者にとっては非常に重要な影響があります。何も知らずに解散してしまった場合、お金を貸していたのにも関わらず返済されない恐れがあります。そのため、会社法第499条において、会社の解散時には官報における公告の実施が法的に義務付けられています。また、既知の債権者に対しては、個別に報告していくことが求められます。

官報公告にかかる費用は、会社名など文章の量によって多少の変動はありますが、約40,000円が必要になります。なお、債権者保護の観点から官報公告は最低でも2か月間は実施しなければなりません。そのため、廃業・解散したい場合には、最低2ヶ月以上の期間は必要である点は、廃業のデメリットの一つです。

専門家に依頼する場合の費用とは?

会社の廃業時に依頼することが多いのは以下の専門家です。

  1. 司法書士への報酬
  2. 税理士への報酬

それぞれ詳細を見ていきましょう。

1. 司法書士への報酬

会社を廃業する場合、法的な手続は登記に必要な資料の作成と実際の登記手続が主なものとなります。そのため、登記の専門家である司法書士へ業務を依頼すると、スムーズに廃業の手続を進められるというメリットがあります。司法書士への報酬水準は、司法書士やサポート内容によっても様々ですが、数十万円程度は見込んでおく必要があります。司法書士との繋がりがない場合には、廃業を経験したことのある経営者に紹介してもらう、複数の司法書士から相見積を取るなど、信頼できる司法書士に依頼するようにしましょう。司法書士の他にも弁護士など法律の専門家の支援を受けることで安全に廃業の手続を進められる点が大きなポイントです。

2. 税理士への報酬

清算時の財務諸表が資産超過であった場合、残余財産が株主に分配されることになりますが、出資額を超えた分配がなされるケースではみなし配当が計上されます。このみなし配当は、通常の配当金と同様に税務上処理することになるため、源泉徴収税20.42%を差し引いた金額を株主に配当することになります。会社の廃業後、多額の残余財産分配があった際には、税金の計算についても注意が必要です。顧問税理士を付けていない場合には、税理士への報酬が別途必要になる点は留意しておきましょう。

M&Aであれば売却までにコストがかからない場合がある

上記のとおり、企業の廃業時にかかるコストを見てきましたが、M&Aであれば、売却の実現までコストがかからない場合があります。M&Aにより事業売却を行う場合、M&A仲介会社、FA、M&Aマッチングサイトなどを利用することが一般的です。

これらのサービスを利用する場合のコスト体系は、多くの場合、成功報酬モデルとなります。そのため、売り手であれば、成約までコスト無しにM&Aを進めることができ、会社売却後の資金をもって成功報酬を支払うことが可能になります。

また、M&Aであれば廃業した時の残余財産分配よりも、多くの売却益を得られる可能性があります。業績が悪く債務超過などの場合でも、自社を高く評価してもらえる買い手が現れるケースもあります。廃業を考えている場合でも、M&Aの金銭的なメリットを考慮し、一度、M&Aの可能性についても検討してみることがおすすめです。

まとめ

会社を廃業させる場合には、登記費用、官報公告費用で最低でも8万円程度は必要です。司法書士などの専門家に業務を依頼する場合には、上記に加えて、数十万円程度はかかってしまいます。廃業にかかるコストや時間を鑑み、実際に廃業手続を進めるかどうかは慎重に判断するようにしましょう。