会社売却でかかる税金とは?ケース別に解説!
2020.09.01 会社・事業を売る事業承継やエグジットを目的に、会社売却を検討する経営者の方は多いのではないでしょうか?
多額の利益を得られる会社売却ですが、税金が課税される点も忘れてはいけません。
会社売却では「株式譲渡」または「事業譲渡」の手法が用いられており、それぞれ課税される税金は異なります。
今回の記事では、ケース別に会社売却でかかる税金について分かりやすく解説します。
個人の株式譲渡による会社売却でかかる税金
個人の株主が株式譲渡により会社売却する場合、譲渡所得に対して所得税と住民税が課税されます。
大半の中小企業では経営者個人で会社の株式を保有しるため、このケースに該当するでしょう。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得は、会社売却で得られた収益から、取得費や譲渡費用を差し引くことで計算します。
- 譲渡所得 = 売却収益 − (取得費 + 譲渡費用)
取得費とは、株式の取得(≒会社設立)時点でかかった費用です。基本的には、会社への出資金(資本金)とイコールになります。
取得費が分からない場合には、売却金額の5%を概算取得費として代用できます。
一方で譲渡費用とは、会社売却の手続きでかかった費用です。M&A仲介会社への手数料が譲渡費用に該当します。
例)売却収益:1億円、取得費:500万円、譲渡費用:500万円
- 譲渡所得 = 1億円 − (500万円 + 500万円) = 9,000万円
所得税・住民税の計算方法
譲渡所得に対して、所得税(復興特別所得税を含む)が15.315%、住民税が5%それぞれ課税されます。
- 所得税 = 譲渡所得 × 15.315%
- 住民税 = 譲渡所得 × 5%
例)譲渡所得9,000万円
- 所得税 = 9,000万円 × 15.315% = 1,378万3,500円
- 住民税 = 9,000万円 × 5% = 450万円
最終的に経営者個人の手元に残る利益は、売却収益から譲渡費用と税金を差し引いた金額となります。
より詳しく、会社売却で得られる利益について知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
法人の株式譲渡による会社売却でかかる税金
あまりないケースですが、法人株主が株式譲渡により会社売却を図ることもあります。
法人の株式譲渡では、譲渡益に対して法人税等が課税されます。
※例外的に消費税が課税されるケースもあるものの、今回の記事では割愛します。
譲渡益の計算方法
譲渡益の計算方法は、会社売却で得られた収益から、取得費や譲渡費用を差し引くことで算出します。
したがって、名称が違うだけで譲渡所得と計算プロセスは同じです。
- 譲渡益 = 売却収益 − (取得費 + 譲渡費用)
例)売却収益:2億円、取得費:1,000万円、譲渡費用:1,000万円
- 譲渡所得 = 2億円 − (1,000万円 + 1,000万円) = 1億8,000万円
法人税等の計算方法
法人による株式譲渡では、譲渡益に対して法人税、法人住民税、事業税が課税されます。
それぞれの税率は法人の規模や利益額などによって異なるものの、合計して約30%の税率となります。
なお法人税は総合課税方式で税金を計算するため、本業で得られた利益などと合算した上で税金が計算されます。
本業で得た利益を0円とした場合、法人税等の計算式は下記の通りです。
- 法人税等 = 譲渡益 × 約30%
例)譲渡益:1.8億円
- 法人税等 = 1.8億円 × 30% = 5,400万円
事業譲渡による会社売却でかかる税金
事業譲渡により会社売却を図る場合、法人に対して法人税等と消費税が課税されます。
それぞれ課税される金額の基準が異なるため、それぞれ詳しく解説します。
法人税等の計算方法
事業譲渡では、「譲渡益」に法人税等が課税されます。
譲渡益は、事業の売却価格のうち譲渡する資産−負債の差額(純資産)を上回った金額になります。
名称は同じでも、株式譲渡における譲渡益とは計算方法が異なるため注意が必要です。
譲渡益と法人税等は、それぞれ下記の計算式で表せます。
- 譲渡益 = 売却収益 − (譲渡資産 − 譲渡負債)
- 法人税等 = 譲渡益 × 約30%
例)売却収益:1億円、譲渡資産:3,000万円、譲渡負債:1,000万円
- 譲渡益 = 1億円 − (3,000万円 − 1,000万円) = 8,000万円
- 法人税等 = 8,000万円 × 30% = 2,400万円
消費税の計算方法
事業譲渡により会社売却を行う場合、株式譲渡とは異なり消費税も課税されます。
消費税は売却代金のうち課税資産にのみ課税されます。言い換えると、売却代金から非課税資産を差し引いた金額に課税されます。
- 消費税 = (売却収益 − 非課税資産) × 10%(2020年9月時点の税率)
見てもらうと分かるように、消費税の額を計算するには会社売却で譲渡した資産を「課税資産」と「非課税資産」分けなくてはいけません。
課税資産は文字通り消費税が課税される資産であり、主に下記の資産が該当します。
- 有形固定資産(土地を除く)
- 棚卸資産
- 無形固定資産(ソフトウェアなど)
- のれん(営業権)
一方で非課税資産とは、会社売却時に消費税が課税されない資産の総称であり、主に下記が該当します。
- 土地
- 有価証券(株式など)
- 債権
例)売却収益:1億円、課税資産:7,000万円、非課税資産:3,000万円
- 消費税 = (1億円 − 3,000万円) × 10% = 700万円
まとめ
会社売却で必要となる税金は、ケースバイケースであるため判断が難しいです。
具体的に言うと、株式譲渡(個人株主)では所得税と住民税、株式譲渡(法人株主)では法人税等、事業譲渡では法人税等と消費税が課税されます。
それぞれ税金の計算方法は異なるため、用いるM&Aスキームに合わせて税金を計算するようにしましょう。
ただし、今回お伝えしたのは基本的なケースであり、課税の方法が異なる例外的なケースも存在します。
例外的なケースに該当する可能性もあるため、専門家のアドバイスやサポートを得た上で会社売却の税金を計算・納税するようにしましょう。
弊社でも会社売却に関するご相談を無料で承っておりますので、ぜひお気軽にご相談いただければと思います。