実店舗よりも売却しやすい?ネットショップ売却について解説!
2021.04.29 会社・事業を売る2020年以降、新型コロナウィルスにより、ネットショップ(ECサイト)で買い物をする人が大きく増加しました。複数ネットショップを経営しており一部を売却したい場合など、売却のメリット・デメリット、主な手続の流れ、相場観、実務上の注意点を解説していきます。
ネットショップ売却のメリット
ネットショップ売却のメリットは以下のとおりです。
- 売却資金を新しいネットショップ開設など新規事業に投資することができる
- 実店舗よりも売却手続が簡単であることが多い
1. 売却資金を新しいネットショップ開設など新規事業に投資することができる
ネットショップ運営を継続することが難しくなった場合、閉鎖するか売却するかの選択肢があります。
売却の選択をした場合、売却により得られた資金をネットショップ以外の新規事業や生活費等に充てることができます。
2. 実店舗よりも売却手続が簡単であることが多い
実店舗を売却する場合、買い手は現地実査を行う必要があります。
一方、ネットショップ売却の場合、サイトを見るだけでどのような構成になっているか一目で分かります。
そのため、買い手のデューデリジェンス等も実店舗の時よりも簡単な手続で済む場合が多く、M&Aの成約率も高まります。
ネットショップ売却のデメリット
ネットショップ売却のデメリットは以下のとおりです。
- 将来獲得できるストック収益が減少する
- 最終契約で競業避止義務を付され、同じ種類のネットショップ運営が一定期間できなくなる
1. 将来獲得できるストック収益が減少する
定期的な顧客がいるネットショップを運営している場合、毎月のストック収益を得ることができビジネスが安定します。
ネットショップを売却することで一時的に売却金額を得ることができますが、将来獲得できる安定収益を手放すことになります。
2. 最終契約で競業避止義務を付され、同じ種類のネットショップ運営が一定期間できなくなる
ネットショップを売却する時の最終契約書において、競業避止義務条項を付されることが一般的です。
競業避止義務とは、ネットショップ売却後、数年間は同じようなネットショップを運営することはできないという義務です。
売り手がネットショップ売却後に、今まで培ってきたノウハウをもとに同じようなサイトを立ち上げた場合、買い手の顧客を奪ってしまいます。
そのため、買い手としては売り手が今後同じようなサイト運営をしないよう契約書において競業避止義務を付すことが必要となるのです。
ネットショップ売却の主な手続
サイト売買サービスを利用する際の主な売却手続は以下のとおりです。
- クイック査定によりECサイトの価値を把握
- サイト売買会社による案件化作業
- 仲介契約の締結
- サイト売買会社が買い手に紹介
- 条件交渉
- 買い手によるデューデリジェンス
- 譲渡契約の締結
- 引き継ぎ
上記の手続の中で特徴的なのは「クイック査定」です。
クイック査定とは、サイトURLと簡単な財務データを入力するだけで、自らのサイトがいくら程度の価値なのかを簡易査定してくれるサービスです。
クイック査定の結果を受けて、納得のいく金額であった場合、本登録に進めることもできます。
反対に、査定結果が安いと感じた場合には、無理に自分の運営する大切なECを売却する必要はありません。
ネットショップ売却にかかる期間
ネットショップ売却にかかる期間は、規模やビジネスモデルによって様々ですが早ければ1カ月程度で譲渡契約締結まで完了する場合もあります。
特別な仕入先があり買い手が引き継ぐのに時間がかかる場合など、ビジネスモデルが特殊なケース、大型ネットショップの場合では3カ月~半年程度かかることもあります。
主なサイト売買サービス一覧
主なサイト売買サービスは以下のとおりです。
- サイトストック
- サイトキャッチャー
- サイトレード
- サイト売買Z
サイト売買サービスのホームページを確認すると、どのようなネットショップが売りに出されているか一覧で確認することができるので、登録前に一度見てみることがお勧めです。
サイト売買に必要なコスト
サイト売買サービスを利用する場合、「直接交渉プラン」か「仲介プラン」かで料金が異なります。
直接交渉プランとは、仲介を間に介せず、売り手と買い手が直接する交渉プランであり、手数料率は売却金額の3%と設定されているサービスが多いです。
仲介プランとは、買い手と売り手の間に仲介が入り、両者にアドバイスのもとM&Aプロジェクトを進める方法です。
仲介プランの手数料率は、10%と直接交渉プランよりも7%高い水準に設定されています。
自分のサイト売買経験やM&Aに関する知識、案件規模、ネットショップの種類などによって、どちらのプランが適切かよく検討する必要があります。
ネットショップ売却の相場観
ネットショップ売却の相場目安は、「営業利益×年数」で計算することができます。
年数の部分は、ビジネスモデル、成長性・安定性、商材の種類、売上規模、顧客数、PV数など様々な要因により変動します。
具体的な年数は1年~3年程度の間で取引されるケースが多くなっています。
もちろん、3年以上で売却できないわけではなく、人気のネットショップで今後の成長性が高ければ、より高額で取引されるケースもあります。
サイト売買のサイトでも実際の売却金額を確認する事ができ、100万円、300万円、500万円といった案件から、1億円を超えるようなネットショップまで売りに出されていることがあります。
在庫の取り扱い
ECサイトが扱っている商品は、食品、日用品、アパレル、美容、旅行関連用品、スポーツ用品、ペット用品、海外からの輸入商材など様々です。
また、ECが広告モデルの情報サイトと大きく異なっている点は、在庫があるという点です。
在庫の取り扱いについて、ネットショップ売却の際に、在庫も同時に買い手に引き渡すことが一般的ですが仕入価格でそのまま譲渡できるとは限りません。
例えば、アパレルであれば流行していないファッションで今後も販売できる見込みが薄いのであれば、仕入価格から割り引いて取引されることもあります。
また、旅行用品の中でもスーツケースなど物理的に大きい商材を扱う場合は、買い手に在庫を置けるスペースを確保できるかどうかも、実務上重要な論点となります。
ショッピングカートの取り扱い
ネットショップの主な種類は以下のとおりです。
- Amazon
- 楽天
- Yahoo!ショッピング
- 独自ドメイン(カラーミーショップ、BASE、STORES、Shopifyなど)
Amazon、楽天、Yahoo!ショッピングはモールサイトと呼ばれており、競合サイトも多くなります。
そのため、モールサイトで運営されているECサイトは独自ドメインで運営されているサイトよりも評価としては低くなることが通常です。
また、実際の売買、引き継ぎの際は、ショッピングカートの利用規約を確認のうえ、手続を進める必要があります。
独自ドメインを利用している場合は、ドメインやサーバーの利用規約を確認し、適切な譲渡手続を進めるようにしましょう。
ネットショップ売却の実務上のポイント
ネットショップ売却の実務上のポイントは2点あります。
- 売却後の引き継ぎはしっかり行う
- 信頼できる仲介会社、サイト売買会社、FAに依頼する
1. 売却後の引き継ぎはしっかり行う
ネットショップ売却の際の事業譲渡契約書には、引き継ぎ期間を定めてその間、売り手は引き継ぎサポートを行うことを定めるケースが多くあります。
ネットショップ売却時の重要な引き継ぎ内容は、以下のとおりです。
- 仕入先の紹介
- 商品の発送方法
- カスタマーサポート手法
- ネット広告などマーケティング手法
- サイト更新手続
- トラブルが起こった際の対処方法
引き継ぎ期間に問題が発生した場合、損害賠償の対象となるなど、責任を問われる可能性があるため、誠意をもって対応しなければなりません。
売却して終わりではないことに留意が必要です。
2. 信頼できる仲介会社、サイト売買会社、FAに依頼する
ネットショップを売却するには、M&Aプラットフォームの利用、仲介会社、サイト売買専門会社、FAに依頼するなど数多くの選択肢があります。
いずれを選択する際にも重要となるのが、信頼できる会社、実績のある専門家に依頼することです。インターネットを利用したM&A仲介サービスやプラットフォームが数多く出てきていますが、中には適切なアドバイスをもらえない専門家も存在している状況が現実です。
比較検討の上、自分が本当に信頼できる人、サービスに相談することが大切です。