個人事業主が事業を廃止するには?廃業に必要な手続きや届出を解説!
2021.03.01 会社・事業を売る事業承継や第三者へのM&A等、個人の事業主が事業を廃止するケースはさまざまです。
事業を廃止する際には、一定の期間のあいだに書類を提出したり、税金の申告などの手続きを行う必要があります。
そこで今回は、個人で事務所を構えていて、M&Aなどを理由に事業を廃止する方に向けて、具体的な手続きや方法をご紹介します。
個人事業主の事業廃止に伴う手続きは、法人の手続とは大きく異なるので注意しましょう。
事業の廃止にあたって必要な手続きと書類
事業廃止に際して行うべき手続きの一覧(種類)は以下のとおりです。
個人事業の開業・廃業等届出書の提出
事業を廃止したら、かならず「個人事業の開業・廃業等届出書」という届を所轄の税務署に提出しなくてはいけません。
こちらの資料は、事業の廃止のみならず、新たに事業を開始したときや、事務所を新しく設立・変更した時など、さまざまな場面で使用します。
提出の時期は、廃業から1ヶ月以内となっています。
なお国税庁のホームページに書類の様式や記載の例が示されているので、そちらをダウンロードし、概要を参考にすれば簡単に作成できます。
実際の様式には、マイナンバー(個人番号)を記載する欄があるため、あらかじめ番号を把握しておくことも大切です。
青色申告の取りやめ届出書の提出
こちらの書は、申請書を提出した上で青色申告を行っていた個人事業主に、提出の義務があります。
この書類についても、納税地(所在地ではない)を管轄している税務署が提出する先となっています。
提出の期限は、青色申告を止める年の翌年の3月15日までです。
廃業届と同じタイミングで提出できるので、先に廃業届と合わせて作成し終えてから提出すると手間が省けます。
なおこちらの書類には、青色申告を停止する理由を記載する欄があります。
経営の悪化や事業譲渡などあらゆる理由が考えられますが、「廃業のため」などと情報を記載すると良いでしょう。
事業廃止届出書の提出
消費税が課税されていた者は、事業廃止届出書も税務署に提出しなくてはいけません。
こちらは、事業を廃止したら速やかに作成・提出する必要があります。
ただし具体的な期限はHP内で案内されていないので、大体1ヶ月以内に提出すれば良いでしょう。
給与支払事務所等の廃止届出書の提出
従業員を雇って給与を支払っていた事業主は、給与支払事務所等の廃止届出書も忘れずに提出しましょう。
こちらの書類は、事業を廃止した事実があった日から1ヶ月以内が提出の期限です。
参考:[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出 国税庁
所得税及び復興特別税の予定納税額の減額申請書の提出
予定納税の制度が適用されていた事業主は、「所得税及び復興特別税の予定納税額の減額申請書」も忘れずに提出することが重要です。
こちらを提出すれば、予定納税の額が減らされる、または免除される可能性があります。
なお手続きにあたっては、「申告納税見積額の計算について基礎となる事実が記載された書類」を添付する点に注意しましょう。
提出の期限に関しては、以下のとおり定められています。
- 第1期分および第2期分の減額申請:その年の7月1日から7月15日
- 第2期分のみの減額申請:その年の11月1日から11月15日
参考:[手続名]所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続 国税庁
都道府県税事務所への届出
一定以上の所得がある個人事業主の場合、基本的には事業税などが自治体から課税されます。
自治体から税を課されていた事業者は、事業の廃止に伴い都道府県税事務所にも届出の手続きを行う必要があります。
ただし具体的な手続きの内容は、自治体によって異なります。
詳しく知りたい方は、各自治体が運営するサイトのページを確認したり、実際に電話などでお問い合せしましょう。
事業の廃止に関連して注意すべき事項
事業の廃止を申請するに際しては、税務の処理に関して注意すべき項目が2種類あります。
初めて事業を廃止する方は見落としがちな部分ですので、よほど税務に精通した方以外は目を通してください。
事業を廃止した場合も納税(確定申告)が必要
「事業を止めるのだから、確定申告は不要」と解釈する方がいますが、通常どおり確定申告をしなくてはいけません。
これまでの売上と費用を計算し、しっかりとミスなく申告するようにしましょう。
今は電子(e-Tax)による申請もあり、パソコン上で必要な項目を入力すれば、簡単に書類を作成できます。
なお事業を廃止した後に発生した費用については、特例を適用することで必要経費として計上することが可能です。
なるべく多くの経費を計上するためにも、税理士と相談しながらこちらの制度を積極的に活用しましょう。
みなし譲渡により消費税が課税される可能性がある
もう一つ注意すべきは、みなし譲渡という制度によって思わぬ消費税が発生するリスクがある点です。
具体的には、事業用で用いていた資産について、廃業後にプライベート用として使用した場合に課税されます。
消費税が課税される理由としては、事業用の資産を一般の個人に向けて譲渡したとみなされるからです。
実際に会計検査院が調査した結果、事業を廃止した個人事業主のうち、最低でも4割ほどは消費税の課税漏れが発生していたとのことです。
多くの事業者が見落とす部分なので十分に注意しましょう。
以上が事業の廃止に関係して注意すべきポイントです。
見てもらうとわかるとおり、事業の廃止に関する税務には専門知識を要します。
ご自身でお手続きするのが心配ならば、あらかじめ税理士に相談しておくのがおすすめです。
費用はかかるものの、税理士にサポートしてもらえれば事業の廃止にかかる時間を短縮できるでしょう。
まとめ
個人事業主がご自身の事業を売却した際には、喜ぶ間もなく事業廃止の手続きを行わなくてはいけません。
期限も数ヶ月程度と短いので、あらかじめ手続きの流れを把握しておくのがベストです。
今回お伝えした内容を参考に、ぜひ事業の廃止手続きをスムーズに行っていただければ幸いです。