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事業承継の時は経営者の個人保証に注意!解除方法や二重取りを回避する方法も解説

2021.02.12 事業承継

多くの中小企業では、経営者の高齢化にともない事業承継のタイミングを迎えています。

しかし一方で、経営者が個人保証を設定していることを理由に、後継者への円滑な承継が滞っているケースも少なくありません。

事業を引き継げずに廃業する事態を避けるには、個人保証の問題を迅速に解決する必要があります。

そこで今回の記事では、個人保証をめぐって注意すべきポイントや、個人保証の解除に役立つガイドラインについて解説します。

事業承継を予定している方は必見です。

個人保証とは?

個人保証とは、企業が銀行等の金融機関から融資を受ける際に、経営者が個人で返済に対して保証をする行為です。

金融機関としては、財務の基盤が弱い会社に融資すると返済してもらえなくなるリスクがあります。

リスクが高いことを理由に、社長に支払いを担保してもらう形で、確実に資金を回収しようとするわけです。

原則として個人保証は、会社の債務に対して連帯的に責任を負うケースがほとんどです。

そのため、仮に法人が倒産の状況に陥った後は、経営者が自身の持つ資産などから弁済していく必要があります。

倒産後に生活が苦しくなる直接的な要因となるため、なるべくは個人保証を解除する、もしくは設定しないことが重要です。

事業承継の時に個人保証をめぐって注意すべきポイントの一覧

事業承継の際には、個人保証をめぐって下記の3点に注意することが求められます。

個人保証があると後継者への打診を断られやすい

もっとも注意すべき点は、個人保証の存在が理由で後継者への打診が断られやすくなることです。

中小企業庁のデータによると、業務を引き継ぐ者が不在である中小企業のうち、「後継者の候補はいるものの、承継を拒否されている」と回答した企業は22.7%とのことです。

また、承継を拒否されている企業のうち59.8%は、個人保証が理由となっています。

つまり事業承継を実現するには、後継者が個人保証を引き継がないようにすることが課題というわけです。

対策しないと相続により個人保証も包括的に引き継がれてしまう

もう一つ注意すべきは、個人保証の問題を放置していると、相続によって個人保証が親族に引き継がれてしまう点です。

いざそうなると、他の資産も含めて相続放棄しない限り、子供たちが会社の個人保証を継承する事態となります。

つまり問題を先延ばしにすると、かえって深刻な事態となってしまうのです。

引退しても現経営者の個人保証は解除できない可能性がある

経営者が生きている間に事業承継を果たせば、相続で後継者に個人保証が承継される事態は回避できます。

ただし後継者に十分な返済能力がない場合、引退しても現経営者の個人保証は免除してもらえないリスクがあります。

場合によっては、現経営者と後継者の両方が個人保証を設定する「二重取り」を求められる可能性も少なくありません。

参考:事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策について 中小企業庁

「経営者保証ガイドライン」の利用は個人保証の解除・二重取りの回避に役立つ

経営者の個人保証を解除したり二重取りを回避するには、経営者保証ガイドラインの利用がおすすめです。

この章では、ガイドラインに示されている支援の内容や活用する条件などを紹介します。

経営者保証ガイドラインの支援策とは

経営者保証ガイドラインとは、2013年12月に全国銀行協会と日本商工会議所が共同で策定した制度です。

この制度では全国の金融機関に向けて、条件を満たした中小企業の個人保証を解除することや、保証なしで融資を行うことを要請しています。

つまり経営者保証ガイドラインの条件を満たせば、既存の個人保証を解除できる可能性があるのです。

また2020年4月からは、既存のガイドラインを補完する「特則」が運用され始めたことで、事業承継の時点における保証契約の見直しなどが規定されました。

新しく策定された特則では、金融機関に対して以下の対応を求めています。

  • 原則として二重取りを行わない(例外として、条件を十分に説明した上で理解を得れば可能)
  • 前の経営者の個人保証に関しては見直しを検討する(解除を積極的に検討する)
  • 後継者との個人保証については、事業承継への影響を考慮して慎重に行う

以上より、ガイドラインにしたがって条件を満たせば、後継者への個人保証の引き継ぎを行わずに事業承継を果たせる可能性が高いと言えます。

また、現経営者の個人保証もかなり高い確率で解除できるでしょう。

経営者保証ガイドラインを活用する要件

経営者保証ガイドラインを活用するには、ガイドラインで明示されている3つの条件を最低限クリアする必要があります。

具体的な条件は以下のとおりです。

  • 企業と経営者個人の資産および経理を明確に分離させる(関係を明確に区分する)
  • 財務基盤を強化することで返済能力を高める
  • 財務状況の正確な把握と情報の開示により、経営の透明性を確保する

より詳しく情報を集めたい・知りたい方は、公式のサイトをご確認ください。

参考:経営者保証に関するガイドライン 経営者保証に関するガイドライン研究会

専門家である経営者保証コーディネーターに相談すれば、ガイドラインの条件を満たしやすくなる

経済産業省では、事業承継に際して多くの企業がガイドラインの条件をクリアできるように、専門家への相談制度を準備しています。

専門家に相談すれば、達成していない条件の可視化や計画の進捗管理など、ガイドラインの活用を総合してサポートしてもらえます。

よりスムーズにガイドラインを活用したいならば、こちらの制度も積極的に活用すると良いでしょう。

事業承継における個人保証のまとめ

現在多くの中小企業では、個人保証の承継を理由に後継者への事業の引き継ぎを果たせていません。

円滑に事業の継承を果たすためにも、経営者保証ガイドラインの活用によって個人保証を解除したり、後継者が保証を設定せずに済む状況を作り出す必要があります。

ただし経営者保証ガイドラインには条件があるため、早い時期から条件をクリアできるように対応を進めましょう。

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