• TOP
  • 事業承継
  • 事業承継税制の要件をわかりやすく解説!

事業承継税制の要件をわかりやすく解説!

2020.11.06 事業承継

事業承継では、自社株の引き継ぎに際して多額の相続税や贈与税が課税されます。

ところが、事業承継税制を活用すれば、相続税や贈与税の納税を猶予または免除してもらえるため、事業承継の税負担を大きく軽減できます。

そんな事業承継税制を利用するには、主に「会社」、「先代経営者」、「後継者」という3つの分野について、それぞれ要件をクリアしなくてはいけません。

また、税金を免除してもらうには、上記とは別の要件を満たす必要があります。

今回の記事では、事業承継税制を利用する要件、免除を受ける要件についてわかりやすく解説します。

会社が満たすべき要件

事業承継税制を活用する会社は、主に下記の要件をすべて満たす必要があります。

  • 上場企業でない
  • 中小企業者に該当する
  • 風俗営業会社でない
  • 資産管理会社でない(一部例外あり)

「中小企業者」とは

事業承継税制の要件にある「中小企業者」とは、下記の要件に合致する会社のことです。

※資本金・出資金の額、または常時使用する従業員の数のいずれかの条件を満たせば中小企業者となります。

業種 資本金または出資金の額 常時使用する従業員の数
製造業その他 3億円以下 300人以下
製造業のうちゴム製品製造業(一部除く) 3億円以下 900人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下 
サービス業のうちソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
サービス業のうち旅館業 5,000万円以下 200人以下 


たとえば小売業で資本金が1億円、常時使用する従業員数が10人であれば、片方の要件を満たしているため中小企業者に該当します。

先代経営者が満たすべき要件

事業承継税制を利用するために、先代経営者が満たすべき要件は以下の4つです。

  • 過去に会社の代表権を有していた
  • 贈与または相続の直前において、自身および自身の親族などで総議決権数のうち過半数の議決権を保有していた
  • 自身およびその親族などの中で、もっとも多くの議決権数を持っていた(筆頭株主であった)
  • 贈与の時点で会社の代表権を有していない(贈与の場合のみ)

ただし、相続または贈与の直前時点で、すでに法人版事業承継税制の適用を受けている方がいる場合は、最後の要件以外は満たす必要がなくなります。

以上を踏まえると、先代経営者が100%の議決権株式を持っているような、一般的な中小企業であればすべての要件を満たしていることになります。

後継者が満たすべき要件

後継者が満たすべき要件は、相続か贈与か、特例措置を使うかどうかで大きく異なります。

相続による事業承継の場合

相続による事業承継の場合、後継者がクリアすべき要件は次の4つです。

  • 相続開始日の翌日から5か月が経過する日の時点で、会社の代表権を有している
  • 相続が始まる時点において、後継者および後継者の親族などで総議決権数のうち過半数の議決権を保有する
  • 相続が始まる直前において会社の役員である(被相続人が60歳未満で死亡したケースを除く)
  • 相続が始まる時点において、後継者が有する議決権数が下記①または②のいずれかに該当する(特例措置を使う場合のみ)

要するに、「相続開始の時点で役員であり、かつ筆頭株主であり、その後5ヶ月経った時点で会社の代表者であること」が要件というわけです。

※特例措置の要件

①後継者およびその親族などのうち、もっとも多くの議決権を保有する(後継者が1人のみのケース)

②総議決権数のうち10%以上の議決権数を持ち、かつ後継者とその親族などの中で、もっとも多くの議決権数を保有する(後継者が2または3人のケース)

贈与による事業承継の場合

一方で贈与による事業承継の場合、後継者がクリアすべき要件は次の4つです。

  • 贈与の時点で会社の代表権を有している
  • 贈与の時点で20歳以上である(令和4年4月1日以降の贈与では18歳以上となる)
  • 贈与の時点で役員の就任から3年以上が経過している
  • 贈与の時点で、後継者および後継者の親族などで総議決権数のうち過半数の議決権を保有する
  • 贈与の時点で、後継者が有する議決権数が前述した①または②のいずれかに該当する(特例措置を使う場合のみ)

まとめると、「成人しており、役員になってから3年以上経過しており、代表権を有しており、筆頭株主であること」が要件です。

猶予していた相続税・贈与税の免除を受ける要件

事業承継税制が持つ最大の魅力は、最終的に猶予されていた相続税や贈与税が免除となる点です。

しかし相続税や贈与税の免除を受けるには、上記とは別の要件を満たす必要があります。

相続税の免除を受ける要件

事業承継を行った後に、後継者が死亡した場合に相続税の免除を受けられます。

また、特例経営承継期間(原則申告期限から5年間)において、精神上の障害などの理由で会社の代表権を有しなくなり、その後「免除対象贈与」を行った場合にも、相続税の免除を受けられます。

加えて経営承継期間の経過後に、下記のケースに該当した場合にも相続税の免除を受けられます。

  • 免除対象贈与を行う
  • 会社について破産手続開始の決定が下される
  • 事業の継続が困難な理由が生じ、会社の譲渡や解散を行う

贈与税の免除を受ける要件

一方で贈与税は、先代経営者または後継者が死亡した場合に免除を受けられます。

また相続税と同様に、経営承継期間中およびその後において、前述した要件に合致した場合にも免除を受けられます。

事業承継税制の要件まとめ

ご説明したとおり、事業承継税制の活用にあたっては、適用を受ける会社はもちろん、先代経営者や後継者も要件を満たす必要があります。

要件の中には、注意深く対策しないと満たせないものもあるので注意が必要です。

場合によっては、事業承継税制の要件を満たせずに、多大な税負担が課税されるケースもあります。

その際には、M&Aによる事業承継も検討してみるのも一つの手です。

関連記事:事業承継とは?継承との違いや成功のポイントを解説!

参考記事

「事業承継の際の相続税・贈与税の納税猶予及び免除制度」 中小企業庁

非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし 国税庁