事業承継の時に経営者保証を解除するには?経営者向けに用意された支援を解説!
2021.02.11 事業承継中小企業の事業承継では、経営者保証の引き継ぎを理由に後継者への承継を果たせないケースが多いです。
また、引退した経営者が個人で引き続き保証を背負うケースも少なくありません。
円滑な事業承継を実現するには、経営者の個人保証を解除すると同時に、後継者が経営者保証を設定しないことが大切です。
そこで今回は、事業承継に際して経営者保証を解除する方法をご紹介します。
経営者保証とは?
はじめに、経営者保証の意味や事業の承継に際して問題となっている現状を解説します。
経営者保証の概要
経営者保証とは、会社が銀行などの金融機関から融資してもらう際に、経営者が個人的に連帯保証を背負うことです。
特に財務面での信用が低い事業者の場合、借入時に経営者保証を求められるケースが多い現状があります。
経営者保証を設定すると、万が一企業が倒産した場合に、社長自身が持っている土地や自動車等の財産を現金化した上で返済する必要があります。
倒産後の生活が非常に苦しくなるため、経営者にとっては非常に大きなリスクであるといえます。
経営者保証は円滑な事業承継の妨げとなっている
中小企業庁が公表しているデータによると、後継者の候補が事業承継を拒否している企業のうち、59.8%は経営者保証の引き継ぎが理由であるとのことです。
つまり、業務を継ぐ者が会社が倒産したあとに借金を返済する事態を恐れていることで、事業承継をしたくてもできない中小企業が多いわけです。
親族などへの事業承継を成功させるには、経営者保証の問題を解決しなくてはいけません。
事業承継の時に経営者保証を解除したいならば、「経営者保証ガイドライン」の特則を理解しよう
事業承継の時に経営者保証を解除したい場合、経営者保証ガイドラインの特則がもっとも参考となります。
こちらの特則を参考に対応を進めれば、経営者保証を解除できる可能性は高まります。
この章では、経営者保証ガイドラインの特則がどのようなものか、およびそれを使って保証を解除する条件をご紹介します。
経営者保証ガイドラインの特則とは
そもそも経営者保証ガイドラインとは、早期の事業再生や思い切った事業展開を支援する目的で作成されたガイドラインです。
ガイドラインに示された一定の条件を満たせば、既存債務の経営者保証を解除できたり、個人保証なしで新たに融資を受けられる可能性があります。
ただし既存のガイドラインには、事業承継に関する規定が十分に盛り込まれておらず、後継者への事業引き継ぎ時にはあまり役立っていないのが現状でした。
そこで2020年の4月から、事業承継に焦点を当てている特則が運用され始めました。
特則では、事業承継において債務者や保証人、および債権者である金融機関に対して、具体的に行うべき対応が定められています。
「経営者保証ガイドラインの特則」の特徴
経営者保証ガイドラインの特則では、債権者である金融機関に対して、以下の対応が要請されています。
- 原則として前経営者および後継者の双方から二重に保証を求めない(例外的に求める場合は、条件を十分に説明した上で理解を得る)
- 後継者との経営者保証の契約が本当に必要かどうかについて、事業承継に与える影響も十分に考慮した上で判断する
- 前の経営者との保証契約については適切な見直しを検討する
強制力はないものの、特則が運用され始めたことにより、後継者が経営者保証を引き継ぐことはもちろん、前経営者と後継者が二重に保証を設定する事態は減少すると考えられます。
特則によって事業承継の時に経営者保証を解除する条件
特則の適用により、「後継者への経営者保証の引き継ぎ」 や「現経営者の経営者保証の解除」を実現するには、最低でも下記3つの条件をクリアする必要があります。
- 企業と経営者個人の資産および経理を明確に分離させる
- 財務基盤の強化により返済能力を高める
- 財務状況を正確に把握し、情報の開示の実施などにより経営の透明性を確保する
ただし、上記の条件は抽象的でありどうすればクリアできるか理解しにくいでしょう。
そこで国では、経営者保証コーディネーターという専門家による支援制度を設けています。
この制度を使って専門家に相談すれば、ガイドラインをどのくらい満たせているかをアドバイスしてもらえます。
また、書面の共有といったサポートも総合して行っています。
より詳細な条件や制度の概要については、下記の公式サイトをご参照ください。
参考:事業承継時の経営者保証解除に 向けた、新しい支援施策が 2020年4月1日よりスタートします。 中小企業庁
ガイドラインによって経営者の個人保証を解除できた事例は沢山存在する
ガイドラインを使って経営者の個人保証を解除できた事例は、金融庁の公式サイトにて紹介されています。
ご自身が実際に活用する場面に備えて、実際の事例を参考にしてみてください。
参考:「経営者保証に関するガイドライン」の活用に係る参考事例集 金融庁
事業承継特別保証の活用でも経営者保証を解除できる
特則には強制力がないため、金融機関の意向で経営者保証を解除できない可能性もあります。
ただしその場合でも、2020年4月から始まった「事業承継特別保証制度」という制度を使えば、経営者保証を解除できます。
この章では、事業承継特別保証を活用する条件や限度額、対象資金などをご説明します。
利用条件
こちらの制度を活用するには、下記5つの条件をすべて満たす必要があります。
- 「3年以内の事業承継を予定している法人」または「2025年3月31日までに事業承継を実施する法人であり、承継日から3年を経過していない」
- 資産超過である
- 返済緩和中ではない
- EBITDA有利子負債倍率が10倍以内である
- 法人と経営者が分離している
保証限度額
保証限度額は、2.8億円(無担保は8,000万円)となっています。
保証期間
保証の期間は、一括返済と分割返済で以下のとおり異なります。
- 一括返済:1年以内
- 分割返済:10年以内(据置期間は1年以内)
保証料率
保証料率は、0.45%~1.90%の間で設定されます。
ただし、経営者保証コーディネーターによる確認を受けることで、0.20%~1.15%まで大幅な軽減を受けることが可能です。
対象となる資金
この制度では、事業承継の時までに必要な事業資金が保証の対象となります。
保証人を設定している既存のプロパー借入金に関して、この制度を使って借り換えを行うことも認められています。
この仕組みを使うことで、実質的に経営者保証を外すことが可能です。
事業承継における経営者保証のまとめ
経営者の皆様にとって、経営者保証の存在は事業承継を妨げるものです。
後継者へとスムーズに事業を継承するためにも、今回ご紹介した対応によって経営者保証の解除に努めましょう。