廃業の手続とは?具体的な方法を徹底解説!

2021.11.14 会社・事業を売る

廃業とは、個人事業主、法人問わず、経営者の自らの意思で会社を畳むことを意味します。廃業の理由としては何でもよく、後継者が見つからない、一度廃業させ新たな事業を起こしたい、売上が上がらず経営が苦しい、など事業者によって様々なものが挙げられます。

廃業と似たような言葉として、倒産や破産が挙げられますが、自らのタイミングで事業を止められるるかどうかという点で大きく異なっています。倒産や破産は、債務超過などの状況で、債権者から給料なども含めて差し押さえを受けるような状態を意味しています。なお、廃業することで、倒産や破産と同様に、事務所は閉鎖され、従業員の雇用が継続できなくなくなる点は注意が必要です。

今回は廃業の流れ、方法を具体的な事例を交えながら、廃業の手続、各種必要な書面・資料・申請書等の概要を分かりやすく解説していきます。

廃業の9つのステップ

廃業の手続は9つのステップに分かれます。今回のケースでは、特別清算ではなく、通常の清算手続を前提としています。

  1. 株主総会の特別決議による承認を受ける
  2. 清算人の選任を行う
  3. 解散、清算人の登記を行う
  4. 清算手続として会社財産の調査を行う
  5. 残余財産の分配
  6. 官報公告など債権者保護手続の実施
  7. 決算報告承認のための株主総会決議
  8. 清算結了の登記を行う
  9. 確定申告の実施

それぞれ順を追って解説していきます。

1. 株主総会の特別決議による承認を受ける

廃業を行う場合には、最初に株式会社を解散させることを、株主総会総会において承認を受けなければなりません。解散は会社にとって重要な意思決定事項の一つであるため、特別決議が必要になります。議決権を行使できる株主の過半数が出席し、出席した株主の3分の2以上の賛成票により決議することができます。

オーナー経営者のように株主が1名しかいない状況では、単なる事務手続となりますが、株主が分散している状態においては、株主に対する説明も準備しなければなりません。なぜ解散するのか、解散した場合少数株主はいくらの分配が受け取れるのかといったところは、少数株主の立場として気になるポイントですので、先に質問されそうな事項を一覧にし、回答を準備しておくと良いでしょう。

2. 清算人の選任を行う

株式会社は営利目的で運営されますが、解散決議がなされた後は、清算することだけが目的となります。そのため、会社を経営している取締役ではなく、清算人を選任する必要があります。清算人の選任方法は以下のとおり4つの方法があります。

  1. 定款で定められている場合には、その者が清算人となる
  2. 株主総会の決議により選任する
  3. 取締役が清算人となる
  4. 裁判所が清算人を選定する

上記の中で、最も手続が簡単なのは取締役が清算人となることです。オーナー会社であれば代表取締役がそのまま清算人となれば済みます。一方、裁判所が清算人を選定する場合には、清算人次第で財産処分の手法が変わってくるため、自らの意思に沿った清算・分配手続を実施できるかが不透明になります。

3. 解散、清算人の登記を行う

上記のとおり、解散の決議、清算人を選任した後は、法務局にて解散・清算人の登記を行います。登記費用は解散にかかるものが30,000円、清算人の登記にかかるものが9,000円の合計39,000が必要です。登記手続を司法書士に依頼する場合には別途報酬が必要になります。司法書士や弁護士などの専門家のサポートを得られる場合、費用がかかるというデメリットはありますが、登記手続全般を対応してもらえるため、スムーズな手続が可能になる点が大きなメリットとなります。企業の解散日から2週間以内に登記手続を行う義務があります。専門家に依頼することのメリット・デメリットを確認、判断のうえ、顧問税理士などに適切な司法書士を紹介してもらえるかどうか、確認してみることがおすすめです。

4. 清算手続として会社財産の調査を行う

清算手続は、会社に残っている資産・負債を全て現金化処分し残った財産を株主にプロラタで配分する手続です。どれだけ会社が財産を保有しているか調査しなければ分配手続は開始できません。清算人は清算会社の財産を網羅的に洗い出し、以下の書類を作成しなければなりません。

  • 財産目録
  • 清算貸借対照表

通常、会社の作成する貸借対照表は継続企業を前提としていますが、清算会社はそうではありません。一般的な会計基準ではない点には留意しておきましょう

5. 残余財産の分配

会社財産の調査を行なった後は、残余財産を株主に分配していきます。資産は換価処分していき、借入金などの債務は換価処分した財産を原資に返済を進めていきます。資本金を超える部分の分配金はみなし配当として税務上取り扱われるため、清算会社は源泉徴収を行なう必要があります。法人株主は受取配当金として法人税の対象となり、個人株主は配当所得となり総合課税されてしまう点に注意が必要です。

総合課税とは、給与所得など別の所得と合わせて、所得が高ければ高いほど税率が高くなる累進課税となっています。累進課税の分、現在の所得水準が高い個人株主の場合には、残余財産の分配にかかる税率が高くなってしまう点には注意が必要です。事前に顧問税理士に相談し、どれだけの税金がかかってくるか、節税する方法はあるかなど問い合わせておくと良いでしょう。

6. 官報公告など債権者保護手続の実施

清算会社は解散が決定された後に遅滞なく官報公告を実施する必要があります。また、既知の債権者に対しては個別に公告を行うことが求められています。会社清算のためには、債務を確定させることが必要なため、官報公告によって債務者を確定していきます。官報公告で事業廃止の通知を行うことで、知らない間に廃業されることのないように債権者保護手続が定められています。なお、官報へ公告を行うためには、官報公告サービスの利用が求められ、費用は数万円程度かかることが一般的です。

7. 決算報告承認のための株主総会決議

全ての清算手続が完了後、決算報告を行い、株主総会による承認決議を受けなければなりません。清算時の決算報告は以下のとおり簡潔なものとなります。

  • 債務の弁済や清算等にかかった費用
  • 期間内に取り立てた債権額
  • 残余財産の額
  • 株主への分配詳細

8. 清算結了の登記を行う

決算報告承認完了後、法務局にて清算結了の登記を行います。清算結了の登記費用は2,000円となり、解散・清算人登記・清算結了登記で合計41,000円の登記費用がかかることになります。

清算結了の登記時には、7の株主総会議事録、決算報告書の添付が必要書類となります。清算結了の登記後、会社が法的に消滅することになります。

9. 確定申告の実施

残余財産確定日から1ヶ月以内に清算確定申告を行わなければなりません。また、清算結了後、清算結了届を税務署に提出、申請することで、税務処理も完了することができます。個人の場合は、税務署へ廃業届の届出が必要となります。

まとめ

事業を廃止する場合、廃業は有力な選択肢の一つです。一方、上記のとおり廃業を行う際は数多くの手続が必要であり、廃業完了まで短くとも数ヶ月の期間が必要です。また、司法書士や税理士への報酬を含めれば、廃業するためのコストも数十万円は必要です。廃業以外の選択肢としてM&Aが挙げられますが、M&Aであれば廃業時よりも多くの売却益を得られる可能性があり、金銭的なメリットがあります。

廃業を実施する前に、まずはM&Aによる会社売却ができないか事前によく検討してみることがおすすめです。M&A専門家に自社の売却可能性があるかどうかは無料で相談できる場合が多いため、気軽に問い合わせてみましょう。M&A仲介会社やFAなどの専門家に依頼した場合には、成功報酬などの手数料は必要ですが、M&Aの成功確率を大きく高めることができます。自社の業種・業態・規模にマッチし、中小企業のM&A向けの専門家を探すようにしましょう。M&Aと廃業した場合の内容をよく吟味し、より良い選択ができるよう自身の頭の中を整理しておくことがおすすめです。