廃業を決断するまでに必要な事とは?おすすめの検討ステップを解説!

2021.11.07 会社・事業を売る

事業を止めたい、一度廃業して新規事業を起こしたい、赤字が続いているため、など経営者が廃業を検討する際の理由は多種多様です。一方、実際に廃業を決断する前に、本当に廃業するべきなのか、検討しておくべき事項があります。今回は、廃業を決断するまでのおすすめの検討ステップを解説していきます。

廃業の決断までの4つのステップ

廃業を実際の行動に移す前に、以下の4つのステップで検討していきます。

  1. 廃業を検討する根本的な理由の整理
  2. 自社の経営状況の把握
  3. 廃業する場合の金銭シミュレーション
  4. M&Aの可能性検討

それぞれのステップごとの詳細を見ていきましょう。

ステップ1. 廃業を検討する根本的な理由の整理

廃業したい理由は何が原因なのか自分の中で整理しておくことが最初のステップです。会社経営の状況が良くなく、赤字が継続している場合であれば、経営改善の見込があれば、廃業すべきでないケースも考えられます。また、事業を後継者に引き継がせたいが、適切な家族がおらず親族内承継ができないといったケースでは、従業員に譲渡するという選択の他に、M&Aにより第三者へ後継者を探すこともできます。

廃業したい根本的な理由を整理することで、廃業を回避する方法がないかを検討することが可能になるのです。もし、単に今すぐに事業をやめたいといった場合でも廃業が完了するまでは最短でも2ヶ月はかかります。同じ2ヶ月間をM&Aに費やせば、より高い売却益を得られる可能性もあります。廃業だけでなく、様々な選択肢があることを知っておくことも重要です。

ステップ2. 自社の経営状況の把握

次に自社の経営状況を把握するため、直近の月次試算表などを元に改めてBS、PL、キャッシュフローなどを確認してみましょう。情報が整理されていない場合には、先に顧問税理士などに問い合わせの上、最新の財務数字をもらうようにするべきです。

自社の経営状況を分析した結果、経営改善の余地が残されているのであれば経営改善後の方が廃業後の残余財産や、M&A実現の可能性を高めることができます。

例えば、無駄な固定費がかかっているのであればすぐに削減するなど、コストカットはすぐに実現可能なものも数多く挙げられます。固定費を削減することで、月次のキャッシュフロー負担は軽くなり、大きなポジティブな影響があります。また、売上を伸ばすために、効率的なマーケティングを実施する、取引先と単価アップの相談をするなど、売上面のテコ入れも対応するべきです。

ステップ3. 廃業する場合の金銭シミュレーション

廃業する場合に、手元に現金がいくら残るのかを計算してみましょう。最新の貸借対照表を清算価値に引き直すことで簡便的に最後に残る財産を計算することができます。清算価値は、資産を売却可能価格など時価に引き直し、未払の退職金などを加味した負債を返済することで、計算される値です。単純な計算式で表現すると、「時価ベースの資産ー時価ベースの負債=清算価値」となります。

清算価値が正の値であれば、問題なく廃業することができますが、負の値(債務超過)であれば通常の清算ができなくなります。金融機関からの借入が多すぎるなど、債務超過の状態では、特別清算といって、裁判所を通した手続が必要になります。

清算価値を算出した後は、その金額を株主に分配します。株主が1人しかいなければ、清算価値=残余財産分配金額となります。ただし、税金の存在には留意しなければなりません。残余財産の分配は、資本金を超える部分の金額については、みなし配当となります。みなし配当部分は未上場株式の場合には20.42%分、源泉徴収されるため、約8割が手取額となります。

例えば、株主が1名、残余財産を1億円、資本金が1,000万円のケースを考えてみましょう。資本金の1,000万円部分については、税金がかかることはありません。出資の払い戻しのため利益に関係がないためです。残りの9,000万円について、源泉徴収20.42%を差し引いた約7,200万円が手取となります。結果として、1,000万円+7,200万円=8,200万円が廃業する場合に手元に残る金額となります。

ステップ4. M&Aの可能性検討

以上のステップを経て廃業後に残るお金を把握した後は、最後のステップとしてM&Aによる会社売却を検討してみましょう。M&Aの場合、企業価値評価は清算価値ではなく、将来の成長も加味した将来キャッシュフローによって評価されます。そのため、成長性が高い、ブランド価値が高い、将来も安定して利益を獲得することが見込まれているといった場合には、買い手から高い評価が付くこともあります。M&Aの際の企業価値評価は、DCF法、マルチプル法といった手法で計算されますが、清算価値より高くなることが通常です。

M&Aの可能性があるかどうかは、M&Aの専門家に相談してみることがおすすめです。最初の相談は無料で行ってくれる場合が多いため、気軽にM&Aの可能性があるかどうかを質問してみることがお勧めです。

M&Aに挑戦し、売却できなかった場合に、最後に廃業の決断をすれば、後になって後悔することは少なくなります。例えば、半年間は会社売却のプロセスを進めてみるが、買い手がいなければ潔く廃業するといった形で期限を決めると、廃業の決断もしやすくなります。ダラダラとM&Aを進めてしまい、赤字の累積により債務超過になってしまい、廃業すらできなくなることは避けるようにしましょう。

まとめ

破産や倒産、廃業を考えている企業であっても、決断の前に他の選択肢が取れないかを検討してみることがお勧めです。M&Aや親族内承継が挙げられますが、特にM&Aであれば廃業よりも現金を多く得られるチャンスがあります。

M&Aの実施には通常3ヶ月程度の時間がかかりますが、買い手が見つかればより短期間で事業売却することができ、廃業の時よりも早く経営を他者に譲れる場合もあります。M&A専門家のサポートを受けながら、M&Aの挑戦をしてみてはいかがでしょうか。