M&Aで成長を加速させていく! – アクシス株式会社末永社長に独占インタビュー!
2020.08.06 インタビュー「企業ではなく、働くすべての人を幸せにするHRテックカンパニー」をビジョンに掲げ、転職者の自己実現をサポートし続けるアクシス株式会社。そんな同社代表取締役社長の末永雄大氏に、どのようにM&Aに関わっていくのかを詳しく伺いました。
主流と真逆のスタイルで独自のポジションを確立!
─ まず初めに、現在の事業内容・特徴を教えてください。
元々リクルート社でHR領域の仕事をしていましたが、リクルートでは、法人向けの中途採用支援の営業でしたが、学生時代にSNSで起業していた事もあり、メディアやWEBサービスなど個人向けのサービスをやっていきたいと考えていました。そこで2012年に設立したのが、このアクシス株式会社です。
その中心となる事業の1つとして、企業側ではなく個人を向いたキャリアエージェントとしての活動であり、その名も「すべらないキャリアエージェント」です。これは、転職者の中長期を見据えたうえで、どうなりたいか?をゴールと考えて、ゴールから逆算したキャリアプランと、手段としての転職先を提案します。この活動を私たちは「自立型人材のキャリア支援」というコンセプトを掲げており、単なる求人紹介とは違った立ち位置で行なっています。
こうした活動のため、誰にでも転職支援するわけでもありませんし、どんな企業にも人を紹介するわけではありません。しっかりと将来のビジョンを描き、それに向かっていける人だけを対象にして、その人が自立していける最適な場所となる会社を紹介しているのです。
そのため、毎月400人程が弊社のエージェントサービスに登録されるのですが、実際に面談を行なうのはその中の100人程になっています。その分、ユーザー一人ひとりとじっくり向き合い、コンサルタント一人につきサポートする人数は5名程となっており、転職者1人に対して、きちんと絞り込んだ上で5件程の求人を紹介しています。しかも時にはスパルタと呼ばれるくらい厳しい現実も伝えることもあります。(もちろん表現や伝え方は穏やかに行なっています。)
とにかく人を集めて、人を求める企業に対して大量に紹介していくスタイルが主流となっている人材業界ですが、それとはまったく真逆のスタイルで行なうのが当社の行うエージェント事業となっています。
過去に新卒2年目の人が転職を希望して当社のサービスを受けることになりました。そして、その人は9年経った現在、上場企業の役員にまでキャリアを向上させました。
正直なところ、私たちの活動の中には、ユーザーからは多少スパルタに感じられる部分もあるかと思っています。それくらい厳しく、真剣に向き合っているからこそのことですが、このスパルタ的なことは私たちのエゴではないかと自問自答することもあったのです。
それでも過去にキャリアサポートした方が、上場企業の役員にまで上り詰めて、(もちろんご本人の能力や転職後の努力の賜物であると思っておりますが)ご本人から「当社のあの時のサポートのお陰です」と言っていただける事例が最近とても増えてきており、仮説やご提案が間違ってなかったのだとホッとした部分も正直ありますね。
こうして少しずつ、転職者の短期ではなく中長期での自己実現を支援して、働くすべての人を幸せにすることができたらと考えています。
この主力事業の他に、転職・キャリア領域メディアの運営を行なう「メディア事業」があります。こちらは「Callingood(コーリングッド)」「すべらない転職」の2つのメディアとなりますが、基本的にはエージェント事業やその他の自社サービスに繋がる連携力を見据えたサービスとなります。
「Callingood」は、「転職・キャリアのプロにスマホで気軽に相談できるメディア」をコンセプトに掲げるWebサービスとなります。
そして「すべらない転職」は、転職活動成功のためのノウハウや、気になる業界・企業についての研究や選考対策ノウハウ、中長期的なキャリア成功のための考え方など、キャリアに真剣な方々に役立つ情報を毎週配信するサービスです。
さらに新たなサービスである「マジキャリ」という転職を前提としない、キャリアサポート事業を始めました。このサービスを始めた理由は明確で、弊社のエージェント事業ではサポートが難しい方々に対するセカンドオピニオン的なサービスという位置づけとなっています。
前述した通り、弊社のエージェントサービスは「自立型人材のキャリア」を提唱しているため、そもそも自立に関心のない方や、既に他社エージェントや求人サイト経由で転職活動をしている方、現職でモヤモヤしている方に対して、サービス提供する事が難しいのです。
これらのメディア事業は、そのサービス単体で利益も生んではいますが、「すべらない転職」をご覧になった方が、弊社エージェントサービスの登録を行なうことあります。このようにメディア事業と、エージェント事業やマジキャリ事業など複数のキャリア支援サービスが相互連携をとっていくことで、結果として転職者個人の顧客満足度を上げていき、事業としてもCPAの最小化と、LTV最大化を同時に推進する事で強くなっていきます。
ノウハウと事業会社としての強みをM&Aで活かす!
─ M&Aを意識するようになった理由を教えてください。
ユーザーさんとのリーチを広げるメディアも、顧客の問題解決やマネタイズとしての事業チャネルも、これから積極的に増やしていき、一つひとつの事業の利益が少なくても、トータルで売上・利益が立てられる姿を目指しています。そのため、最近はM&Aもかなり意識するようになりました。なぜなら、ゼロから事業を立ち上げるよりは、M&Aのほうが早く実現できると思うためです。
さらに、メディアに関してはその事業・サービスを伸ばしていくノウハウがありますし、人材領域の事業会社としての強みもあります。
人材領域の事業会社の強みは色々ありますが、一番は「メディアにおける発信に説得力が出る」ということでしょうか。
同じ言葉や情報を発したとしても、誰が発言したかでその信頼度は変わります。
例えば、私は最近、転職・キャリアについての書籍を2冊出版させていただきましたが、顔や名前のわからない誰かが発した場合よりは、転職者さんから信頼いただけるのではないでしょうか。
こうした転職・キャリアにおけるプロのノウハウ・強みを各メディアやサービスに活用・浸透させることで、買収した事業を軌道に乗せていけると考えているため、M&Aの話があれば、積極的に耳を傾けるようにしています。
M&Aを駆使してビジョンの実現へ!
─ M&Aではどんな事業を手掛けようとしていますか?
実は5年前に、社内向けですが、15年後、売上300億円、利益60億円という数字を掲げました。これはあくまで事業、サービスの数や人、ユーザー数をシミュレーション・計算すると、この数字になったというだけであり、実際に私が重要視しているのは「ヒトとITのチカラで働くすべての人を幸せにする」というミッションの追求と、「誰もが自分なりの軸を持ち、それにまっすぐに生きる事のできる社会にする」「働くすべての人のキャリアリテラシーを高め、転職・キャリアに関する情報格差をなくす」「かかりつけ医のように、誰もがキャリアについて相談できるキャリアメンターインフラの構築をする」の3つのビジョンの実現だけです。
そして、ミッション、ビジョンの実現のためには、まだまだサービスを増やしたいと考えているため、先程話したようにM&Aを考えているのですが、それはあくまで一つのチャネルを増やす手段の一つという認識ですね。現在は特にメディアやビジネススクールに関する事業を増やしていきたいと考えています。
その理由は、メディアに関しては、WEBマーケティング力やメディアを伸ばして収益化していくノウハウ、自信があること。そして、ビジネススクールに関しては、自立型人材のキャリア育成をもっと広げていき、20代の若手層の専門性や市場価値を高めていく転職以外の機会にしたいからです。
それこそ、いまは一人ひとりとじっくり向き合うスタイルのため、どうしてもサポートできるお客様の人数的な制限が出てきてしまいます。
それは、現状の人材業界における若手人材のキャリア教育にも課題があります。就職・転職先を自分にとって都合の良いイメージだけで決めてしまいがちです。そうしたキャリアにおける現実、私たちはキャリアリテラシーと呼んでいるのですが、もっと啓蒙していくことができれば、普通のビジネスパーソンであっても、時間をかけて「自立型人材」として成長していけるだろうと思っているのです。
だからこそ、メディアや書籍で啓蒙活動を行なったり、スクールで育成や理解を深めていきたいのです。とはいえ、ゼロからスタートするのは時間も労力も大変なものになります。そこでM&Aを有効活用していくことができればと考えています。
M&Aも原点と同じ想いの下で行なう!
─ M&Aで不安に思うことはありますか?
積極的にM&Aを意識しているものの、やはり不安なことはあります。一番気になっている点は、私たちの思想がマッチしているかどうかですね。特に私の場合は、経営者として売上・利益を成長させ続ける事はもちろん大切と認識していますが、「売上成長そのものが目的になる事はない」と強く思っています。どこまでもビジョンの実現を意識しており、売上や利益の成長はそのための手段と捉えています。
だから、売上が伸びるM&Aというよりは、あくまでもアクシスのビジョンを実現していくための手段の一つ。ということは忘れずにM&Aを行ないたいですね。小手先に頼らずにしっかりと思想がマッチして、ビジョンの実現に向かっていける。そんなM&Aが出来れば良いと思っています。でも、正直なところ、現状はM&Aに関してはいろんなお話が来ますが、なかなか思想がマッチするような案件はありませんね。
企業の成長とは、人の成長であると考えています。そして、成長・進化をしないかぎり、衰退だと考えています。だからこそ、人を成長させるための手段としてのM&Aを行ないます。売上向上が目的ではなく、ビジョン実現のため。ここは絶対にブレずに行なっていきたいと考えています。
※インタビュアー土屋:「今はこの会社のビジョンの実現すること以外に興味がないですね」と話す末永氏。とても穏やかに話す様子からは想像できないほど、強い芯を持った方なのだと、感じさせられました。「10年でやれなかったら死ぬまでやりますよ(笑)」と話していましたが、きっとこれほど心の強さを持った末永氏であれば、すぐに実現していけるのではないかと思いましたね。