• TOP
  • 会社・事業を売る
  • ビジネスのノウハウだけを売却できる?ビジネスノウハウを切り出して売却する際の注意点を解説!

ビジネスのノウハウだけを売却できる?ビジネスノウハウを切り出して売却する際の注意点を解説!

2021.08.01 会社・事業を売る

自分のビジネスが軌道に乗っている場合、そのビジネスノウハウを売却できる可能性があります。今回はビジネスノウハウを売却することの基本的な概要と、売却時の注意点を解説していきます。

ビジネスノウハウの売却とは?

通常の事業売却は、人や物が有機的一体となった事業全てを売却する行為です。ビジネスノウハウの売却は、人材(取締役や従業員、アルバイト)の引き継ぎ等なく、ビジネスのやり方、ノウハウのみを売却する方法です。建物や土地などの不動産のように目に見えないものを取り扱う点が大きく異なります。

具体的なビジネスノウハウの売却手法は以下の通り3種類あります。

  1. フランチャイズ
  2. 情報商材の販売
  3. 事業譲渡

1.典型的なビジネスノウハウの売却はフランチャイズ

ビジネスノウハウの売却で、最も典型的なものはフランチャイズです。フランチャイズとは、加盟店から商標利用料や商品販売を行い利益を上げるビジネスモデルです。コンビニエンスストア、ラーメン店、居酒屋、コーヒーショップ、家事代行、不動産業、コンサルティング業など様々な業種・業態でフランチャイズ展開されています。

参考:

フランチャイズチェーンとは 多店舗化、少ない資金で

フランチャイズ展開できると利益率が高まる

フランチャイズの加盟店は、初期登録料を本部に支払う他、毎月一定の固定額と売上や利益の数%を本部に支払う契約を実務上多く見かけます。フランチャイズの本部にとっては、毎月、特段時間を使うことなく、加盟店が稼いでくれた分のいくらからを受け取ることができます。

そのため、自分が複数店舗を展開するよりも、利益率を高めることができます。自身はさらにフランチャイズの加盟店が増えるような戦略を考えれば良いことになります。

また、加盟店のビジネスが失敗したとしても、本部側の損失はなく、ブランド価値の毀損というリスクはあるものの、ダウンサイドは限定的というメリットもあります。

2.情報商材の販売について

情報商材の販売は、数に制限なく売却できる点で通常の事業売却と大きく異なります。価値のある情報商材を作成し、インターネットを介して不特定多数をターゲットに売買することができます。

自分で作成したビジネスノウハウの売却であれば、原価率はゼロであり、高い利益率が見込めます。価値のある情報を整理し、SNS、YouTube、note、独自ドメインによる自社サイトなどを通じて販売が可能です。

また、単にテキストの情報だけに留まらず、動画やエクセルやパワーポイントなどの雛形資料など、情報の形に制限はありません。

3.ビジネスノウハウの事業譲渡について

事業譲渡契約書に、ビジネスノウハウを譲渡対象資産とすることで、簡単にビジネスノウハウを売却することが可能です。例えば、単にオペレーションマニュアルを譲渡することもできますし、一定期間売主が買主に対して、引き継ぎのコンサルティングを提供するという契約を付けることもできます。

M&Aマッチングサイトなどでよく売却案件として出ているのは、「民泊事業」です。民泊事業と言っても、土地や建物を販売しているのではなく、賃貸物件でAirbnbなどを通じて集客し収益を得るビジネスモデルです。

売り手から民泊事業に関するオペレーションとノウハウを買い手が得ることで、民泊事業の将来収益を獲得することができます。

ビジネスノウハウ売却の注意点

ビジネスノウハウ売却の際に、売り手が注意しなければならない点は下記の通り3つあります。

  1. 競業避止義務
  2. 売却後の評判
  3. 免責事項をはっきりさせること
  4. 事業価値の算定根拠

(1)競業避止義務

ビジネスノウハウの売却後、買い手としては同じようなビジネスを売り手が再開してしまえば、せっかく買収したノウハウが役に立たない可能性があります。

例えば、民泊事業を買収後、売り手が同じ地域で再度民泊事業を始めた場合、両者の事業が需要を食い合ってしまい、結果として買い手の不利益となります。

そのため、買い手としては、事業譲渡契約書において、売り手の競業避止義務を設定しておくことが一般的です。競業避止義務の期間は様々ですが、「売却後5年間は同様のノウハウを利用したビジネスを行うことはできない」などと定めることになります。

競業避止義務を破ってしまった場合、事業譲渡契約書の内容に従い、買い手に対して損害賠償金を支払うなどの対応が必要になります。ビジネスの売却後に買い手に不利益を与えないよう事業譲渡契約書の内容は、弁護士などの法律の専門家にきちんとレビューしてもらう様にしましょう。

(2)売却後の評判

ビジネスノウハウを売却後、買い手がそのノウハウを使って事業等を進めることになります。しかし、ノウハウを使えば誰もが成功できるわけではありません。

ノウハウの質が低ければ、評判を落とし、2度とビジネスノウハウの売却ができなくなるリスクもあります。自身のノウハウや情報が売却するものに相応しいかどうかは、もう一度確認しておく必要があります。

(3)免責事項をはっきりさせること

ビジネスノウハウの売却時に共通して言えることは、売却後の免責事項をはっきりさせておくことです。事業売却の形式を取る際にも、事業譲渡契約書上の「誓約事項」や「表明補償」の条文には注意しなければなりません。

約束できないことを明確にし、買い手にきちんと伝える工夫が必要になります。

(4)事業価値の算定根拠

ビジネスノウハウ売却を進める前に、希望する売却金額を決めなければなりませんが、なぜその金額になるのか、事業価値の算定根拠を持っておくことがポイントです。

買い手側がノウハウを使って獲得できる営業利益から逆算して、何年で投資回収できるのかが目線になります。例えば、年間利益×2年分などと簡易的に事業価値を計算することができます。「2年分」の部分については、その事業の成長性、ブランド、競合や市場の状況、法規制、顧客数など総合的に鑑みた上で相場は決定されます。

競合も多くリスクが高いものであれば、買い手は短期間しか利益を得られない可能性が高く、事業の評価としては低くなります。事業の良い面だけでなくネガティブな面もデューデリジェンスなどを通してしっかりと伝えると、売却後の事故を防ぐことができます。

実際の売却手続の流れ

ビジネスのノウハウを売却する場合、主に以下のような流れで実務を進めていきます。なお、個人・法人、業種・業態や大企業・中小企業などの規模を問わず、同じ手法で売却手続を行うことが可能です。

  1. M&Aマッチングサイトへの登録、M&A仲介会社への相談
  2. ノンネームシートの作成、web上で開示される情報の作成
  3. 買い手へのアプローチ
  4. 初期的な交渉
  5. 基本合意書の締結
  6. 買い手のデューデリジェンス
  7. 契約交渉
  8. 最終契約書の締結
  9. 譲渡実行

最初に行うべきことはM&Aマッチングサイトへの売却案件の登録、またはM&A仲介会社、FAへの相談です。M&Aは相手がいなければ成約することは絶対にありません。相手探しがM&Aプロセスの中でも難しくとても重要なポイントです。

M&Aに関する知識やノウハウ、経験があれば自分1人でもM&Aを進められることもありますが、最初はM&Aプロフェッショナルに相談するのがおすすめです。

また、人気のあるwebサービスを活用して売却する際は、初期の段階で掲載する情報は登録前によく確認することが重要です。あまりに詳しい情報を載せてしまえば、案件から自身の事業を特定されてしまいます。特定されてしまえば、今後の事業継続に影響を及ぼすため、不特定多数の者に一覧で見れる情報の内容には十分な注意を払わなくてはなりません。

ビジネスノウハウの売却は、譲渡対象資産が何になるのか分かりづらく、買い手にどのような価値を提供することができるのか、何を承継させるのかが曖昧になってしまう可能性も高い行為です。

そのため、M&Aの専門家に相談することで論点を明確にしながら、安全に売却プロセスを進めることもできます。また、M&Aの成功のためには、スピードも重要です。

買い手との交渉の中で、なかなか先に進めてもらえず明確な回答をもらえない場合もあるでしょう。期限を明確にする仲介がいなければ、スケジュールが伸び伸びになってしまい、気づいたら相当の期間が経過してしまった上、結局交渉がブレイクしてしまうケースもあります。

M&Aを成功させるためには、事前に大まかなスケジューリングを行い、交渉相手からも期限をもらうことでテンポよく進めていかなければなりません。

一方、手数料の面では、M&A仲介会社やFAよりもM&Aマッチングサイトの方が安くなります。マッチングサイトによっては売却手数料が完全無料の場合もあります。

仲介会社の手数料は手付金+成功手数料の場合が多く、売却金額が大きければ大きいほど手数料の絶対直も大きくなります。

メリット、デメリットをしっかりと比較検討の上、適切な売却手法を選択するようにしましょう。

まとめ

ビジネスノウハウの売却は、成功すれば利益率も高く、買い手によっては相場よりも高い金額を支払ってくれる可能性もあります。

一方、売却時の契約内容や売却後の対応によっては、自分の評判を落としたり、場合によっては損害賠償請求をされたりする恐れがあります。

専門家に適切なアドバイスをもらいつつ、ビジネスノウハウの売却を進めることが安全です。一度炎上などを起こしてしまえば、今後の自信のビジネスにも大きな影響を及ぼしてしまいます。慎重にプロジェクトを進めるようにしましょう。