ゴルフ場も売却できる?事例をもとに売却理由や買い手の狙いを解説!

2021.04.29 会社・事業を売る

ゴルフ場は広大な敷地を使ったコースはもちろんのこと、レストラン、ショップ、ホテル、温泉を併設している場所もあるなど、大規模なレジャー施設です。

日本国内に数多くあるゴルフ場も売却されるケースがあり、事例をもとにゴルフ場売却について詳細を解説していきます。

ゴルフ業界の市場概要

日本のゴルフ市場は、2018年時点で1兆3,210億円、内訳はゴルフ場8,540億円、ゴルフ用品3,430億円、練習場1,240億円となっています。

高齢化社会や趣味の多様化に伴い、ゴルフ市場は年々減少傾向にあります。

ゴルフ参加人口

ゴルフ参加人口に関しても、1991年には1,784万人でしたが、15年後の2016年には約半分の890万人まで減少しています。

ゴルフ参加人口の年齢構成比は50代以上18.6%、60代以上19.8%、70代以上13.6%と50代以上が半分を占めており、今後もさらにゴルフ参加人口が減少することが予想されます。

また、ゴルフクラブやプレー料金が高額となるため、若いゴルフプレイヤーが増えづらいといった構造的な問題もあります。

ゴルフ場事業者の概要

主なゴルフ場事業者は以下のとおりです。

  • PGMグループ
  • アコーディア(MBKパートナーズ)グループ
  • ユニマットプレシャス
  • 太平洋クラブ
  • 富士観光開発

中でもPGMグループとアコーディアグループの2社が売上高の上位を占めています。

PGMグループは売上1,000億円超、143か所のゴルフ場を運営しています。

アコーディアグループは、大手ファンドであるMBKファンドに2017年に約1,490億円で買収されており、国内で173か所のゴルフ場を運営しています。

ゴルフ場の1事業者当たりの売上高は2018年時点で4億5,800万円となっています。

参考:

令和元年度 商取引・サービス環境の適正化に係る事業(個別スポーツの需要喚起策可能性調査)報告書

アコーディアゴルフ、MBKが1210円でTOB 非公開化へ

ゴルフ場の倒産件数推移

ゴルフ場の倒産件数は、2005年バブル崩壊後には65件でしたが直近の2018年には13件でした。

2017年のゴルフ総コース数は2,257コースであり、毎年、全体の0.6%程度のゴルフ場が倒産している計算となります。

倒産したゴルフ場が抱える負債は1か所あたり約30億円~40億円で、大規模なビジネス展開をしている分、倒産時の負債が大きくなる傾向にあります。

参考:

令和元年度 商取引・サービス環境の適正化に係る事業(個別スポーツの需要喚起策可能性調査)報告書

ゴルフ場売却の最新事例

2020年11月12日、プリンスホテルが所有する杉田ゴルフ場と併設するテニスコートを売却する方針を固めた旨を発表しました。

プリンスホテルは、西武ホールディングスの傘下で、プリンスホテルを中心とした事業展開を行っています。

プリンスホテルの2020年3月期では、総資産約6,300億円、純資産約2,000億円、売上高約1,900億円、営業利益約120億円でした。

2021年3月11日、プリンスホテルの親会社である西武ホールディングスは、ゴルフ場の売却により約128億円の売却益を計上したことがニュースとなっています。

なお、杉田ゴルフ場の買い手と譲渡金額は非公表です。

参考:

プリンスホテル、横浜のゴルフ場営業終了へ

西武HD、特別利益128億円 今期 ゴルフ場売却

プリンスホテル 第65期貸借対照表・損益計算書

売却された杉田ゴルフ場とは

神奈川県横浜市金沢区にある60年の歴史を誇るゴルフ練習場です。

建物規模は延べ3,700㎡を超え、200打席、最大280ヤードと県内の中でも上位の規模を誇っていました。

最寄り駅はシーサイドラインの「八景島駅」です。

なぜ杉田ゴルフ場を売却したのか

プリンスホテルの西武ホールディングスは、鉄道、バス、タクシー、ホテル、遊園地、水族館など、様々な事業展開を行っています。

西武ホールディングスの提供しているサービスは、人が外出することが前提で収益を得られるビジネスモデルです。

しかし、2020年から猛威を振るっている新型コロナウィルスの影響で西武ホールディングスの業績・財務状況は悪化する一方でした。

そこで、ノンコアビジネスの一つである杉田ゴルフ場を売却し、財務状況を改善しようとしたことが、今回の売却理由です。

どのような買い手がゴルフ場やゴルフ練習場を買収するのか

ゴルフ場やゴルフ練習場のビジネスは規模が大きいため、売却金額も大きくなり、自然と買い手が限られます。

大手レジャー施設運営企業、同じようにゴルフ場やゴルフ練習場を運営している企業は、買収によるシナジーが見込まれるため検討の価値が大きいと言えるでしょう。

また、ゴルフ場やゴルフ練習場を取得後、新たなレジャー施設やその他の商業施設を建設するなど、不動産としての価値を見込んで買収するケースもあります。

ゴルフ場買収のメリット

ゴルフ場買収のメリットは以下のとおりです。

  1. 有名ゴルフ場である場合、ブランド価値を引き継ぐことができる
  2. 相互送客などシナジーが見込める

1. 有名ゴルフ場である場合、ブランド価値を引き継ぐことができる

有名ゴルフ場を買収することができれば、買い手としては、そのままブランド価値を維持することができます。

ブランドを活かすことで、広告宣伝効果にもなり、自社グループのビジネスに大きく貢献させることも可能です。

2. 相互送客などシナジーが見込める

自社グループで、レジャー施設や商業施設を運営している場合、ゴルフ場と自社グループの施設の両者で相互送客を行うことで、売上向上のシナジーを見込むことができます。

例えば、レジャー施設の利用者はゴルフ場利用料を割り引くなど、様々なマーケティング施策が考えられます。

また、従業員のアサインを自社グループとゴルフ場で相互に割り当てる形にすることで、より自由な働き方が可能となり、経営の効率化が見込めます。

ゴルフ場売却のメリット

売り手にとって、ゴルフ場を売却することで一時的に資金を得ることができ、西武ホールディングスの事例のように財務基盤を強化することができます。

また、自社では再建が難しくなったゴルフ場でも、買い手としては買収のメリットがあれば売却することもできます。

納得できる金額でゴルフ場売却を実現できるよう、頼れる専門家に相談のうえ、各種手続を進めるようにしましょう。