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中小企業のM&Aが失敗する理由とは?対策も解説

2020.07.10 M&A知識

M&Aの失敗確率はおよそ50%〜70%と言われており、大半のM&Aは何かしらの形で失敗に終わります。

M&Aには多大な時間やコスト、労力を要するため、失敗したときの損失は計り知れません。

特に経営資源が乏しい中小企業にとっては、M&Aの失敗は何としても避けたいものです。

そこでこの章では、M&Aが失敗する理由や、失敗しないための対策を解説します。

「M&Aの失敗」とはどんな状況?

M&Aの失敗とは、一般的に下記2つの状況を意味することが多いです。

投下した費用や労力>得られるリターン

もっとも一般的な失敗と言えば、M&Aに投下した費用や労力に比べて得られるリターンが少ないケースです。

最たる例としては、買収費用と比べてM&Aで増えた収益が少なかったり、売却代金と比較して仲介手数料の方が多いケースが該当するでしょう。

もしくは、想定していたほどのシナジー効果を得られないケースや、そもそもM&A相手が見つからずに時間やコストを無駄にするケースもM&Aの失敗と言えます。

のれんの減損や業績悪化

M&A後にのれん(ノウハウや技術力など、目に見えない資産で買収価格に上乗せされる金額)の減損を計上する事態となったり、大幅に業績が悪化した場合、前項で述べたケースよりも深刻な失敗と言えます。

たとえば東芝は、アメリカの原発大手とのM&Aを行った結果、2,600億円の減損損失を計上してしまいました。

M&Aの失敗により多額の損失を計上すると、業績悪化により倒産のリスクが大きく上昇するため注意が必要です。

M&Aが失敗する理由

一般的にM&Aは、下記3つの理由で失敗に終わります。

M&Aの準備が不十分

まず根本的な問題として、M&Aの準備が不十分だと失敗確率は大きく上昇します。

たとえば売り手の場合、不採算事業や債務超過などの問題を解決せずに相手探しを行うと、いつまで経っても買い手が見つからずに費用や時間を無駄にする可能性があります。

一方で買い手の場合、M&Aを行う理由を明確にしないことで、見当違いな事業や会社を買収し、結果的に費用を無駄にしたり、かえって業績が悪化するケースがあります。

デューデリジェンス不足

M&Aの失敗理由として圧倒的に多いのが、デューデリジェンス不足です。

デューデリジェンスとは、買い手が売り手企業について詳細な調査を行うプロセスです。

具体的な調査範囲には、財務や税務、ビジネス、法務、ITなどがあり、予算や希望に応じて調査する分野を決めます。

デューデリジェンスでは公認会計士や司法書士などの専門家に実務を依頼するため、多額の費用がかかります。

多額の費用をかけたくないという理由で、デューデリジェンスをほとんど行わないケースは少なくありません。

しかしデューデリジェンスを行わないと、売り手の持つ偶発債務や他社との訴訟などのリスクを見逃してしまったり、事業の将来性を見誤る可能性があります。

その結果、本来妥当な価格よりも高い値段で買収してしまったり、偶発債務などにより後から多額の損失をこうむるケースはたくさん見受けられます。

買収後の統合を疎かにする

買収後の統合を疎かにすることも、M&Aの失敗につながる理由の1つです。

売り手企業と買い手企業では、社風や業務の進め方、人事評価の方法、使っているITシステムなど、何から何まで異なります。

そのため、M&Aが終わったらこうした異なる部分を一つに統合するプロセス(PMI)を経るのが重要となります。

この統合過程を疎かにすると、たとえば売り手から移籍した従業員が不満を抱えたり、業務の進め方に混乱して生産性が下がるなどの事態に発展するリスクが高まります。

万が一こうした事態が生じると、従業員の大量離職やモチベーション低下、業務プロセスの停滞などを招き、業績が大幅に悪くなるので注意が必要です。

中小企業がM&Aを失敗させないためには

M&Aを失敗させないためには、上記で解説した失敗理由を一つ一つ確実に潰す必要があります。

そのためには、下記3つの対策を講じることが有効です。

M&Aの目的や戦略を明確化する

M&Aを始める前に行える対策として、目的や戦略の明確化が挙げられます。

たとえば売り手ならば「事業承継」や「不採算事業の整理」、買い手ならば「多角化」や「ノウハウや技術の獲得」などの目的があるはずです。

こうした目的を明確化することで、目的を達成する上で必要となる戦略も見えてきます。

たとえば事業承継が目的ならば、第三者に経営権を引き継いでもらうためには、「自社と関連性の高い事業を行う会社に打診する」や「不要な在庫を削減して企業価値を高める」などの戦略が考えられます。

このように目的と戦略をセットで明確化すれば、M&Aの交渉過程や契約後に失敗するリスクを下げることが可能です。

デューデリジェンスは徹底して行う

のれんの減損などの損失をこうむる失敗を避けるには、デューデリジェンスを徹底して行う必要があります。

確かにデューデリジェンスを専門家に依頼すると、一つの分野だけで30万円〜100万円ほどかかります。

ですが、仮にM&Aが失敗に終わると数百万円〜数億円もの損失を被る可能性があります。

そう考えると、デューデリジェンスはしっかりと行った方が、かえって長期的にはお得であると言えます。

特に重視して行うべきは、財務デューデリジェンス(DD)です。

財務DDを行えば、決算書から収益性や安全性を確認するのはもちろん、簿外債務や偶発債務といった潜在的なリスクの有無もしっかり把握できます。

そのため、実態に即した妥当な買収価格でM&Aを実施できるます。

M&A後の計画も立てておく

M&A後の計画をしっかり立てるのも、失敗を回避する上では有効な対策です。

最も重要となるのはPMIの計画です。

人事制度やITシステム、業務プロセスをどのように統合するかをあらかじめ決めておけば、スムーズに統合を進めていけるでしょう。

PMIの計画を立てる際には、売り手企業の従業員にかかる負担をなるべく軽減することも意識するとなお良いです。

また、売り手企業にも、M&A後の計画をしっかり立てておくことをオススメします。

たとえば不採算事業の売却がM&Aの目的ならば、売却後にどのようにして会社経営を継続・成長させるかを、しっかりと計画しておきましょう。

まとめ

M&Aの失敗確率は、およそ50%〜70%と決して低くありません。

ですが、あらかじめ対策を講じておけば、 M&Aを失敗させずに済みます。

M&Aの実施を検討中の方は、ぜひ今回の記事を参考に失敗しないための対策を考えてみてください。