M&Aの件数はどのくらい?推移や今後の動向を解説【2020年最新】
2020.06.30 M&A知識従来大企業同士で行うイメージの強かったM&Aは、今や中小企業が経営戦略の一環として行うケースも増えています。
では、M&Aの件数はどのくらい増えているのでしょうか?
今回の記事では、M&Aの件数について、過去30年ほどの推移や変動理由、2020年の件数予想なども交えつつ解説します。
M&A件数の推移
はじめに、2019年度のM&A件数と、1990年〜2019年のM&A件数推移をお伝えします。
なおM&Aの件数については、株式会社レコフデータが公表しているデータ(マールオンライン)を参考にお伝えします。
2019年のM&A件数
マールオンラインによると、2019年1月〜2019年12月のM&A件数は「4,088件」だったとのことです。
前年度(2018年)と比較すると、3,850件から4,088件までに増加し、その増加率は6.2%にのぼります。
一方でM&Aで動いた買収価格の合計は18兆295億円で、前年度と比較して38.5%減少しました(2018年は29兆3,185億円)。
件数が増加した一方で金額が減っていることを踏まえると、前年度と比較して小規模なM&Aが増加したと考えられます。
過去30年のM&A件数の推移
バブル崩壊後の1990年以降、業界再編の活発化などの影響により、M&Aの件数は右肩上がりに増加しました。
特に1998年〜2006年頃にかけては、1000件弱から2,700件を超えるまでの大幅な件数の増加がみられました。
しかし2008年にリーマンショックが発生した影響で、ピーク時には2,700件を超えていたM&Aは、2011年にはおよそ1,700件まで減少しました。
一時期は大幅な減少を見せたM&Aの件数ですが、2012年以降は急激に増加し始めました。
2012年に1,848件まで急増したかと思えば、その後も毎年200件前後の増加を続け、2017年には過去最高となる3,050件を記録しました。
驚くべきは2018年に3,850件、2019年には4,088件と、毎年最高記録を更新している点です。
2017年以降は、特にM&Aの件数増加の傾向が顕著になっていると言えるでしょう。
マーケット別M&A件数の推移
M&Aは、売り手と買い手がどの国に属しているかで、「日本企業同士のM&A(IN-IN)」、「日本企業が外国企業を買収するM&A(IN-OUT)」、「外国企業が日本企業を買収するM&A(OUT-IN)」の3種類に大別されます。
この章では、それぞれのM&A件数について、これまでの推移を交えて解説します。
日本企業同士のM&A(IN-IN)
IN-IN型M&Aの件数(2019年)は3,000件となりました。
M&A全体のおよそ73%を占めており、3種類あるM&Aの中でも圧倒的に多い件数となっています。
件数の推移を見ると、2017年以来3年連続で過去最多を更新しています。
詳しく中身を見ると、ベンチャー企業を買収するM&Aは999件でIN-IN型の3分の1を占めています。
また、事業承継目的のM&A件数も606件と比較的多く、前年度と比べて14.6%の増加となりました。
日本企業が外国企業を買収するM&A(IN-OUT)
IN-OUT型M&Aの件数(2019年)は826件となりました。
全体に占める割合は、およそ20%となっています。
件数の推移を見ると、2014年以来6年連続で過去最高を更新しています。
三菱UFJ銀行と東銀リースによる独DZバンク子会社とのM&Aや、大日本住友製薬による英バイオベンチャーの買収など、金融や医薬品業界で大型M&Aが多く見られた点が特徴です。
外国企業が日本企業を買収するM&A(OUT-IN)
OUT-IN型M&Aの件数(2019年)は262件となりました。
全体に占める割合は、およそ6.4%となっています。
件数こそ少ないものの、OUT-IN型に限ると2007年の309件に次いで多い水準とのことです。
キリンHDによる海外傘下の飲料部門売却など、日本企業のグローバル事業の見直し案件であるケースが多く見られました。
また、業績不振であったジャパンディスプレイの支援をめぐって、海外アクティビストによる出資の提案も見られたとのことです。
M&Aの件数が増加している理由
M&Aの件数が増加している背景には、下記3つの要因があると考えられます。
後継者不足の中小企業が増加
前年度比14.6%の増加から分かるとおり、事業承継目的でM&Aを行う中小企業が大幅に増加していることが、件数増加の大きな理由となっています。
昨今多くの中小企業では、経営者の高齢化を迎えています。
一方で後継者が見つからないことを理由に、事業承継を円滑に行えない中小企業は少なくありません。
M&Aによる会社売却は、そうした中小企業の受け皿としての役割も果たすようになっているわけです。
短期間での目標達成を目指す企業の増加
M&Aの件数が急増した大きな理由として、短期間で目標を達成しようと目指す企業の増加も考えられます。
一から新しいビジネスを立ち上げたり、既存の事業を拡大するには、多大な時間や労力がかかります。
一方でM&Aにより他社を買収すれば、新規事業の立ち上げや既存事業の拡大などの経営目標を、より早く達成することができます。
こうしたM&Aのメリットを享受する目的で、技術やノウハウなどを持つベンチャー企業を買収するケースが増えているのです。
経済のグローバル化
IN-OUT型M&Aの件数が増加する背景には、経済のグローバル化の影響が少なからずあると考えられます。
たとえば日本では、人口の減少などの影響で、国内市場だけをターゲットにしていては、十分な収益を維持するのが困難となっています。
そこで海外の企業を買収し、海外進出を図る日系企業が増えています。
一方で、海外の企業が日本への進出や技術獲得などを目指して、業績不振の日系企業を買収するケースも増加傾向です。
こうした経済のグローバル化も、M&Aの件数増加につながっているのです。
2020年のM&A件数はどうなる?
では、2020年のM&A件数はどうなるのでしょうか?
前述したM&A件数の増加要因は継続しているため、今年度も前年と同じかそれ以上の件数になると考えられます。
実際、マールオンラインのデータによると、2020年5月までの時点で、すでにM&Aの件数は約1,500件にのぼるとのことです。
ただし2020年は、コロナウイルスにより経済が大きく停滞しました。
そのため、最終的にどの程度の件数に落ち着くかは例年以上に予測しにくいです。
経済の停滞により若干落ち着く可能性がある一方で、経営不振の企業によるM&A需要により、かえって件数が増加する可能性も考えられるでしょう。
まとめ
事業承継や海外進出、短期間での戦略遂行など、M&Aはあらゆる目的で活用されています。
特に後継者不足に悩む中小企業によるM&Aは、この10年弱で急速に増加しています。
後継者不足や経済のグローバル化は今後も続くと予想されるため、M&Aの件数はしばらく増加すると考えられます。
今後M&Aはより身近な存在となる手法なので、この記事をお読みになっている方もぜひM&Aの活用を検討してみてはいかがでしょうか?