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M&A後、会社の借入金に対して経営者が負う連帯保証はどうなる?

2021.01.08 M&A知識

大半の中小企業では、経営者個人が会社の債務(借入金)に対して連帯保証を負っています。

M&Aを行うと経営権を失うため、売り手にとっては連帯保証を解除したいと考えるのが普通です。

では一体、M&Aを行った後に経営者の連帯保証は無事解除されるのでしょうか?

今回のコラムでは、M&Aにおける連帯保証の取扱いについて紹介します。

M&Aで問題となる連帯保証(個人保証)とは

はじめに、M&Aの際に問題となる連帯保証がどのようなものかを確認しておきましょう。

連帯保証の概要

連帯保証とは、債務者と連帯して借入金を返済する義務を負うことです。

日本の中小企業においては、企業が金融機関から借入を行う際に、経営者が連帯保証人となるケースが多いです。

近年は企業オーナーが連帯保証人とならずに済むケースも増えつつあるものの、依然として大半の業界では連帯保証を負う事例が多くみられます。

連帯保証が必要となる理由

ではなぜ、企業が借入を行う際に経営者個人が連帯保証を負わなくてはならないのでしょうか?

金融機関が融資の際に連帯保証を求める最大の理由は、経営者を含めた役員が借入金を私的な理由で乱用することや、返済を先延ばしにすることを防止する意味合いが強いと言われています。

また、担保としての位置付けで連帯保証を要求する金融機関も少なくありません。

M&Aの際に連帯保証を解除するメリット

連帯保証が設定してある場合、仮に会社が倒産すると債務の全額を経営者個人が返済する必要があります。

そのため、経営者は常に会社の業績悪化や倒産リスクに怯えながら会社経営を続けざるを得なくなります。

中小企業の経営者にとって、連帯保証を設定すること自体に大きなデメリットがあるのです。

一方でM&Aの際に連帯保証を解除すれば、その後会社が倒産したとしても、ご自身が返済する必要はなくなります。

つまり、業績の悪化や倒産に対して心配することが無くなるため、精神的な負担が軽くなるわけです。

M&Aにおける借入金および連帯保証の取扱い

M&Aを行う売り手経営者にとって、会社や事業の売却後に、借入金や連帯保証がどのような扱いとなるかは非常に不安な部分です。

連帯保証が解除されないと、他の会社の債務に対して引き続き責任を持ってしまう事になるためです。

そこでこの章では、M&Aにおける借入金および連帯保証の取扱いをご説明します。

株式譲渡では借入金(債務)が自動的に買い手側に引き継がれる

事業承継などを目的に会社ごと売却する際には、基本的に株式譲渡の手法が用いられます。

そんな株式譲渡では、企業の経営権ごと買い手に移るため、借入金などの債務は自動的に買収する側の企業に引き継がれます。

連帯保証は自動的には引き継がれないので注意

「借入金が引き継がれるならば、連帯保証も自動で引き継がれるのでは?」と思うかもしれません。

しかし連帯保証は経営者が個人で負っているため、自動的に引き継がれることはありません。

ですので、引き継ぎの手続きを行わないと、ご自身とは無関係の企業の債務に対して連帯保証を負うこととなってしまいます。

大半のM&Aでは経営者の連帯保証が解除される

「経営権を失うにも関わらず、連帯保証だけは引き続き負う」というのは、誰から見ても合理的ではありませんし、売り手の経営者にとって非常に不利な状況です。

そのため、大半のM&Aでは経営者の連帯保証が解除される流れとなります。

もう少し具体的に言うと、売り手経営者の連帯保証が解除され、新たに譲受側が連帯保証を負うことになります。

ただし以下に挙げたケースでは、連帯保証の解除を金融機関に認めてもらえないリスクが高いので注意が必要です。

  • 一部の株式のみを売却するケース
  • M&A後も企業経営に対して全面的に関与するケース

事業承継などを目的に、すべての株式を売却するようなM&Aでは、連帯保証を外せると考えて問題ないでしょう。

連帯保証を解除する方法

前述したとおり、連帯保証は自動的に解除されません。

かといって、連帯保証を解除するように要望するだけでは、金融機関にとってメリットがないため認めてもらいにくいです。

よって一般的には、M&Aの交渉段階で「買い手に連帯保証人となってもらう旨を合意してもらう」ことと「金融機関に売り手経営者の連帯保証を解除する旨を合意してもらう」ことの双方を済ませる形で、連帯保証からの解放を目指すのが一般的です。

この章では、各手続きの概要やポイントをご説明します。

買い手に連帯保証人となってもらう旨を合意してもらう

M&Aでは買い手に新たに連帯保証人となってもらう形で、売り手経営者の連帯保証を解除する流れとなります。

しかし、代表者の変更登記が終わるまでは、連帯保証人の変更(書き換え)を行うことができません。

したがって、基本合意契約や最終契約の段階で、あらかじめ買い手に連帯保証人となってもらう旨を合意してもらう必要があります。

あらかじめ契約にて買い手が連帯保証人になることを明記することで、後から連帯保証を引き継ぐ旨を拒否されるリスクを排除できるわけです。

金融機関に売り手経営者の連帯保証を解除する旨を合意してもらう

買い手への連帯保証人の書き換えと同時に必要となるのが、金融機関からご自身の連帯保証を解除する旨を合意してもらうことです。

買い手が連帯保証を引き継ぐとなれば、わざわざ売り手経営者にまで連帯保証を設定する必要はなくなります。

そのため、前述したようなケース(一部株式のみの譲渡など)に該当しなければ、金融機関から問題なく連帯保証を解除してもらえるでしょう。

M&Aにおける連帯保証のまとめ

M&Aによって連帯保証が外れると、会社の代表者だった方は会社の業績を心配せずに過ごせるようになります。

自動的に引き継がれるものではないため、かならず所定の手続きを経て連帯保証を行うようにしましょう。

ただし自動的に引き継がれないとはいえ、しっかり買い手や金融機関と交渉すれば、ほぼ確実に連帯保証を外した上でM&Aを行えます。

確実に連帯保証を外した上でM&Aを行うためにも、M&Aの専門家である仲介会社(M&Aアドバイザー)のサポートを得るのがおすすめです。

弊社では、完全成功報酬制で中小企業のM&Aを支援しております。

相談は無料ですので、連帯保証に関してお悩みの方や、M&Aに関するサポートの提供を求めている方はぜひお気軽にご連絡ください。