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M&Aのメリット【売り手・買い手双方の視点から解説】

2020.05.16 M&A知識

M&Aのメリットと言えば、売り手側は売却利益の獲得、買い手側は多角化のリスク軽減が有名です。

しかし実は、M&Aには上記以外にも様々なメリットがあります。

今回の記事では、売り手と買い手双方の視点から、M&Aにより得られるメリットをご紹介します。

売り手が得られるM&Aのメリット

売り手はM&Aを実施することで、下記5つのメリットを得られます。

売却利益を得られる

M&Aで売り手が得られる最大のメリットといえば「売却利益の獲得」です。

M&Aでは、買い手に自社株式(会社)や事業を譲渡する対価として、多額の現金を受け取れます。

M&Aの手法や買い手からの評価により異なるものの、一般的な中小企業だと「時価純資産に3〜5年分の税引き後利益を加えた金額」分だけ売却利益を得られます。

将来性のあるビジネスや高度なノウハウ・技術を持っている場合は、さらに高く評価される可能性もあります。

一度に数百万円〜数億円もの利益を受け取れる点は、売り手経営者にとって魅力的なメリットと言えます。

後継者不足でも事業承継を果たせる

売り手がM&Aで得られるメリットで、もう一つ大きなものが「事業承継の実現」です。

現在国内では、経営者の高齢化により多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えています。

しかし少子化や経営環境の悪化などの理由から、多くの中小企業では後継者が見つからずに事業承継を行えない事態に陥っています。

そんな後継者不足の問題は、M&Aにより解決できます。

M&Aにより信頼できる買い手に事業や会社を承継すれば、これまで培ってきた技術やノウハウ、従業員の雇用をすべて維持できます。

廃業コストをかけずにリタイアできる

会社を廃業する場合、従業員の解雇や建物の原状回復、在庫の処分など、あらゆる手続きに費用がかかります。

会社の規模にもよりますが、数十万円〜数百万円もの費用がかかります。

一方でM&Aにより会社を売却すれば、廃業コストをかけずに経営からリタイアできます。

事業の継続とさらなる発展を目指せる

M&Aで売り手が得られる4つ目のメリットは、事業の継続・発展を実現できることです。

国際化や業界再編が進む昨今、資本力に乏しい中小企業が事業を継続し続けることは困難となっています。

中小企業が生き残る手段として有効なのが、M&Aによる会社売却です。

大手企業とM&Aを行えば、大手企業の傘下として事業を継続できます。

大手の持つ豊富な経営資源やブランド力を活用できるため、安定的に経営を継続できます。

また、自社のみでは成し遂げられない事業の成長も成し遂げられるケースもあります。

採算性の高い事業に経営資源を集中できる

採算性の低い事業を売却すれば、採算性の高い主力事業に集中できるメリットも得られます。

複数の事業を営んでいると、採算性の高い事業もあれば、採算がほとんど取れない、または赤字の事業も出てきます。

M&Aにより採算が取れない事業を売却すれば、限りある経営資源を採算性の高い主力事業に集中させることができます。

その結果、採算性の低い事業に経営資源を分散させた場合と比べて、より効率的に多くの収益を得られます。

買い手が得られるM&Aのメリット

M&Aにより買い手が得られるメリットは、主に下記の5つです。

多角化のリスクを減らせる

一つの事業のみを営むと、代替品の登場や消費者ニーズの変化などにより、突然収益性が下がるリスクがあります。

そのため、経営が悪化するリスクを軽減する目的で、複数の事業を展開する「多角化戦略」が重要となります。

ただし多角化では、既存のノウハウや技術、販売網などを最大限活用できないため、既存事業の拡大よりもハイリスクです。

そんなハイリスクな多角化ですが、M&Aを活用すればリスクを軽減できます。

具体的には、多角化したい分野である程度の売り上げや知名度を得ている企業(事業)を買収するのです。

すでに事業に必要なノウハウや販売網などが揃っている状態で事業を開始できるため、一から多角化を図るよりも大幅にリスクを減らせます。

多角化が失敗すると、数百万円〜数億円もの費用を無駄にします。そんなリスクを大幅に軽減できる点で、M&Aによる多角化はメリットの大きな戦略と言えます。

事業規模を拡大できる

M&Aによる事業(企業)の買収は、既存事業の規模拡大でもメリットをもたらします。

M&Aにより同業他社を買収すれば、生産設備(工場など)や人員、販売網を大幅に増やせます。また、競合が一社少なくなるため、その分だけ市場シェアを高めることも可能です。

M&Aの相手次第では事業規模が一気に2倍以上にもなるため、競合企業に圧倒的な優位性を確立できる可能性もあります。

弱点を補強できる

M&Aで買い手が得られる3つ目のメリットは、自社の弱点を補強できる点です。

たとえば製品の企画・開発は得意な一方で、営業や販路開拓が苦手な企業があったとしましょう。

この企業が営業や販路開拓が得意な企業を買収すれば、会社全体として弱点を無くすことができます。

弱点一つないだけで大きく収益性が上がるケースもあるため、こちらも買い手にとっては大きなメリットです。

迅速にビジネスを進めることができる

ここまで紹介した「多角化」、「事業規模の拡大」、「弱点の補強」は、実はM&Aを行わなくても自社のみで実現可能です。

しかしM&Aを活用すれば、よりスピーディーに上記の目標を達成できます。

たとえば多角化一つとっても、一から顧客獲得や商品開発などを行う必要がなくなるため、圧倒的に素早く事業を軌道に乗せることが可能です。

「時間をお金で買う」とも称されるように、ビジネスを加速させる点はM&Aに特有のメリットなのです。

シナジー効果を享受できる

「シナジー効果」も、M&Aに特有のメリットの一つです。

シナジー効果とは、ある要素が他の要素と合わさることで、それぞれ単体で存在するときよりも、より大きな効果が生じる現象です。

たとえば、製造力は高いものの販売網に弱点を持つ会社と、豊富な販売網を持つものの製造力がなく魅力的な商品を販売できない会社があるとしましょう。

両社がM&Aにより一つの会社となれば、魅力的な製品を豊富な販売先に売れるようになります。その結果、各社が単体で事業を行った場合の合計よりも、より多くの収益を得られる可能性があります。

M&Aで得られるシナジー効果は上記に限らず、コスト削減や技術力の強化など多岐に及びます。

M&Aのメリットまとめ

今回お伝えした通り、M&Aが成功すれば売り手・買い手共に多大なメリットを享受できます。

M&Aでのみ実現できるメリットも多いため、時間や費用をかけてでも実施する価値はあると言えます。

特に経営上の課題を抱えている中小企業にとっては、現状を打破する手段としてM&Aは有効となるでしょう。