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M&Aの種類とは?分け方や各種類の特徴を徹底解説!

2020.05.09 M&A知識

一口にM&Aといっても、その種類は多岐にわたり、それぞれ必要な手続きやメリット、デメリットは異なります。

M&Aにより買収や売却を成功させるには、各種類の違いを踏まえた上で、状況に最適な手法を選択する必要があります。

そこで今回は、M&Aの種類ごとに、メリットやデメリット、使用する目的などをくわしく解説します。

M&Aは「権利の移転有無」により2種類に大別できる

M&Aは事業や経営に関する権利の移転有無により、「狭義のM&A」と「広義のM&A」の2種類に大別できます。

権利の移転を伴うM&A(狭義のM&A)

権利の移転を伴うM&Aとは、経営や事業に関する権利が、複数の企業間で移転する種類のM&Aです。

具体的には、下記のM&A手法が該当します。

  • 買収(株式譲渡、事業譲渡など)
  • 合併(吸収合併、新設合併)
  • 会社分割(吸収分割、新設分割)

権利の移転を伴わないM&A(広義のM&A)

権利の移転を伴わないM&Aとは、複数の企業間で事業や経営に関する権利が移転しない種類のM&Aです。

具体的には、下記のM&A手法が該当します。

  • 資本提携
  • 業務提携
  • 株式の持ち合い
  • 合弁会社の設立

一番大きな視点で見ると、上記の2種類に分類できます。

ですが実務でM&Aと言った場合は、「狭義のM&A」指す場合が大半なので注意しましょう。

狭義のM&Aは、「買収」、「合併」、「会社分割」の3種類に大別できる

前述した通り、狭義のM&Aは「買収」、「合併」、「会社分割」の3種類に分けられます。

それぞれ使用する場面やメリットは異なるため、実際に使用するにあたっては状況に応じて最適な種類のM&Aを選ぶことが重要です。

買収とは

買収とは、企業の経営権や事業の運営権を買い取る種類のM&Aです。

買収が行われると、買収された側から買収した側に会社や事業の経営権が移転することになります。

そのため買い手側は、下記のメリット得られます。

  • 最初から軌道に乗った状態で多角化を図れる
  • 自社の弱みを時間をかけずに補強できる
  • 既存事業をさらに強化し、競合他社に優位性を確立できる

ただし、買収した企業(事業)の収益性が低いことで多額の買収資金が無駄になったり、後から簿外債務などが発覚して多額の損失をこうむるリスクがあるので注意しましょう。

一方で売り手側は、事業や会社ごと売却することで下記のメリットを得られます。

  • 多額の売却利益を得られる
  • 後継者不足の場合に事業承継を果たせる
  • 大手の傘下に入ることで、事業の継続やさらなる発展を目指せる

ただし経営権を失うため、引き続きオーナー経営者として事業に取り組むことはできない点がデメリットとなります。

合併とは

合併とは、複数の会社を一つの法人に統合する種類のM&Aです。

具体的には、吸収される側の企業が持つすべての権利や義務を、もう片方の企業に承継させる形でM&Aを行います。

買収とは異なり、吸収される側(売り手側)の法人格が完全に消滅する特徴を持ちます。

主に合併は、子会社同士の合併などに見られるグループ内の再編を目的に行われます。

グループ内で合併を行うと、下記のメリットを得られます。

  • 重複する部門の統一により、生産性の向上やコストカットを実現できる
  • 一つの法人格にまとめることで、一体感やシナジー効果を醸成できる

また競合他社同士が、業界のさらなる発展やシェアの獲得を目的に合併を行うケースもあります。

大手同士の合併により、その他の競合他社に事業規模やシェアの面で圧倒的な優位性を確立できます。

ただし合併には下記のデメリットがあるため、実施にあたっては注意を要します。

  • 買収と比べて実施の手続きが面倒
  • 組織の肥大により、意思決定や指揮命令系統が複雑化するリスクがある

会社分割とは

会社分割とは、会社の中から一部の事業を切り分けた上で、それを他の会社に承継させる種類のM&Aです。

合併と同じく、主に経営統合やグループ内再編を目的に活用されます。

あくまで事業の一部のみを切り分けるだけなので、切り分けた側(売り手側)の経営権は引き続き継続します。

会社分割を用いて経営統合やグループ内再編を実施すると、下記のメリットを得られます。

  • 権利や義務を包括的に承継できるため、従業員や取引先と再契約を結ぶ必要がない
  • 一部の事業のみを移転できるため、合併よりも柔軟に組織再編を行える

ただし、許認可が必要となる事業を分割する際は、そのまま承継できないケースもあるため注意が必要です。

また、義務を包括的に承継する以上、簿外債務や偶発債務などのリスクも同時に引き継ぐことになり、これが大きなデメリットとなります。

買収に含まれるM&Aの種類

買収に該当するM&A手法では、主に「株式譲渡」と「事業譲渡」の2種類がポピュラーです。

株式譲渡

株式譲渡とは、売り手企業の株式を買い手が買収する形で行う種類のM&Aです。

株式譲渡は、会社を丸ごと買収(売却)するケースで用いる手法です。

「契約の締結」、「対価の支払い」、「株主名簿の書き換え」のみで実施できる簡便さが、株式譲渡の大きなメリットです。

ただし買い手側は簿外債務の引き継ぎ、売り手側は経営権を失う点に注意が必要です。

関連記事:M&Aにおける株式譲渡とは?手続きや税金についても解説

事業譲渡

事業譲渡とは、会社の事業を売買する形で行う種類のM&Aです。

あくまで事業を売買するため、売り手側の経営権は存続します。

事業単位で売買できるため、買い手側は買収したい事業のみを買収しつつ、簿外債務などの不要な要素を引き継がずに済みます。

一方で売り手側は、不要な事業のみを売却し、その資金で新しい事業を始めたり、既存事業を強化できます。

ただし権利や義務は自動で引き継げないため、買い手側はすべての契約を締結し直す必要があります。

合併に含まれるM&Aの種類

合併は、「吸収合併」と「新設合併」の2種類に分けられます。

吸収合併

吸収合併とは、片方の企業がもう片方の企業を吸収する形で行う種類のM&Aです。

吸収合併では、官報への公告掲載や債権者保護、株主総会での決議などの手続きを原則すべて行う必要があります。

株式譲渡や事業譲渡と比べると必要な手続きが多岐にわたるため、合併は小規模なM&Aではあまり用いられません。

新設合併

新設合併とは、新しく会社を設立し、そこに複数の企業の権利や義務を引き継がせるM&Aの種類です。

言い換えると、一度合併に携わる企業の法人格をすべて消滅させ、残った権利や義務を新しい会社に移転する手法です。

すべての企業の法人格が消滅するため、どちらかの企業の社員が負い目を負うリスクは低いです。

ただし吸収合併の手続きに加えて、会社設立の手続きや上場の再申請など、必要な手続きが増えてしまいます。

そのため、実務では新設合併よりも吸収合併を活用するケースが多いです。

会社分割に含まれるM&Aの種類

会社分割は、「吸収分割」と「新設分割」の2種類に大別されます。

吸収分割

吸収分割とは、切り分けた事業の一部をすでに存在する他社に承継する形で行う種類のM&Aです。

吸収分割は、前述のようにグループ内再編はもちろん、事業売買の一環として活用されるケースも多いです。

不採算事業の一部をその事業を得意とする企業が買収することで、売り手は利益の獲得、買い手は既存事業の強化と、それぞれがメリットを享受できます。

ただし債権者保護や官報での公告、株主総会決議など、複雑な手続きを複数こなす必要があります。

新設分割

新設分割とは、切り分けた事業の一部を新しく設立した企業に移転するM&Aの種類です。

M&Aの手法としても活用される吸収分割と比べると、新設分割はグループ内再編の手法として用いられるケースがほとんどです。

具体的には、特定の事業部門を分社化することで、経営のスリム化を図るケースなどで、新設分割が活用されます。

メリットやデメリットに関しては、吸収分割と基本的に同じです。

また手続き面でも、会社を新設する手続きが増える以外では、吸収分割と大差ありません。

まとめ

M&Aの手法にはあらゆる種類があり、種類ごとにメリットやデメリットは異なります。

したがって、会社売却なら株式譲渡、事業売却なら事業譲渡といったように、目的に応じて最適な手法を活用することが重要です。